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第二十二話 その一瞬を、永遠に

ラブシーンがあります。

頑張ってR15以内に収めたつもりですが……

苦手な方はご注意ください。

 花火大会は佳境に入った。

 最後の特大スターマイン。

 これでもかというくらい、

 花火が打ち上げられる。

 光っては消え、光っては消え、花火が次々と夜空と水面に映し出される。


 そして、最後の花火が……消えた。

 

 ドラムロールが何重にも合わさったかのような音が止み、それがこだまとなって、背後の山々に広がっていった。


 徐々に音が、響きが、遠くなる……


 やがてそれが静まり返ると、海は元のように、穏やかな濃紺の水面をたたえていた。


「すごい、最高に楽しかった! 忘れられない夏になりそう!」

 minaは弾んだ声を出して、オレの方を振り返った。


「オレも、久々に、ちゃんと花火を見たよ。すごかった!」


「ねえ、来年も……一緒に見ようね!」

「うん、ここでは無理かもしれないけど、花火大会、また行こうな」


「絶対だよ!」

 minaは瞳をキラキラさせて、叫んだ。


 オレとminaは元来た浜辺の道を、手を繋いで、並んで帰った。

 最愛の人と、最高の瞬間!

 本当に忘れられない思い出になるだろう。


 別荘の入り口に着くと、雨宮さんと岡安さんもちょうど帰って来た所だった。


 雨宮さんが小柄な岡安さんに寄りかかって、腕を絡めている。

 無表情に見えるが、少し照れている感じの岡安さん。

 この二人には、ほんと感謝しないとな。


「よう! おっ、その様子だと。満足したみたいだな」

 雨宮さんが、ニヤっと笑った。


「花火、すごい綺麗でした。とっても楽しかったです。本当にありがとうございます! 雨宮さん! 岡安さん!」

 minaは、まだ興奮冷め切らない様子でお礼を言った。


「本当に、ありがとうございました!」

 オレもそれに続けた。


「いいって。お前らそれより……お楽しみはこれからなんじゃないの……」

 雨宮さんはニヒヒと下品な笑いを浮かべた。

「綾音」

 無表情でたしなめる、岡安さん。


 オレとminaは顔を見合わせながら、耳まで真っ赤になっていた。


「さて、部屋に戻るか、まずは着替えてお風呂だな。あたしとダーリンも熱い夜を過ごすから、やり方わかんなくなっても覗くなよ」

 雨宮さんはそう言って、先に別荘の中へと消えていった。


「綾音……。もう……すいません。でも、あれでも二人のこと。色々と心配していたんですよ。今日も浴衣の準備とか、張り切っていて。悪気はないので許して上げてください」

 岡安さんはそう言って、オレたちにペコリと頭を下げた。


「いえいえ、雨宮さんはいつも、あんな感じでしたから」

 オレもそれに応えた。


 別荘は、一階は豪勢なリビングルームとキッチン、風呂、それとベッドルームが一つあり、二階は三部屋のベッドルームがある。

 オレとminaは一階、岡安さんと雨宮さんは二階の一室を使うことにした。


 女性陣は着替えに時間がかかるので、先にオレ、岡安さんの順番で風呂を使わせてもらった。

 風呂も大人二人くらいは余裕で入れるんじゃないかな。

 白い大理石みたいなのがあしらわれていて、立派な作りだった。


「mina、一緒に入ろうか?」

 ちょうど、オレが風呂から上がってくると、雨宮さんがminaに呼びかけていた。


「あっ、はい、じゃあ、よろしくお願いします」

 minaは少し照れながら、でも嬉しそうに応えた。


「おい、佐伯。女同士、裸の付き合いをするから、覗くなよ」

 雨宮さんはオレを指差してまたニヤっとした。

 ちらっと岡安さんの方を見ると、もはや、たしなめる気も起きないようだった。



 女性陣がお風呂から帰ってきた。


 タオルを首から下げた湯上りの雨宮さんとminaはハイタッチをして別れた。

 ニヤニヤしっぱなしの雨宮さんと、恥ずかしそうにうつむくmina。

 minaはピッタリとしたTシャツに、下はトレーニングウェアを着ていた。

 Tシャツから、minaの体のラインが浮き出ていて、オレは慌てて目を逸した。



 minaと二人、ベッドルームに入る。

 時刻は、まだ十時を回ったくらいか……。


 少し離れていても、湯上がりのminaから、なにやらいい香りがする。

 

 やっぱり、少しお話をしてからの方がいいのかな?

 いきなりあんなことをしたら、ガッついてるヤツだと思われるよな。

 

 まずはビールでも飲んで……ってオレ、すぐに酔わないしな。

 酒の勢いを借りたと思われてもイヤだし。


 そんなことを思いながらminaの方を見ると

 minaもとてもぎこちない表情をしていた。


 そうだ、こういう時は男からリードしないと。

 そう思って、オレがminaに話しかけようとすると……


「あのね、カズくん……」

 minaが先に口を開いた。


「ん? どうした? mina」

 不意をつかれるオレ。


「雨宮さんから、もらったものがあって……」

「えっ、な、何かな?」

 脳の中身がピンク色の姐さんの渡すものなんて、悪い予感しかしないけど……


「着替えるから……向こう、向いててくれる?」

「う、うん、わかった」

 慌てて、ドアの方を向く、オレ。


「あと……ね。電気、消してくれる?」

「いいよ」

 オレはドアの近くにあった、スイッチを消した。


 一瞬で周りが暗くなり、何も見えなくなる。

「ちょっと、暗すぎる、かな……」

 minaはそう言って、ベッドサイドの明かりを付けたようだ。

 オレの後ろのほうで、ほのかに、優しい灯りが灯った。


「まだ、振り返っちゃ、ダメだよ」

 minaはそう言って、何やらゴソゴソやり始めた。

 少し遅れて、衣擦れの音。


 今……minaって、何も付けてないとか……それに近い格好をしているのかな??

 ゴクリと、オレのつばを飲む音が響いた気がした。


「カズくん……あの、引いたり、しないでね。私も……これ……恥ずかしいんだから」

 いったいなんだろう?

 大丈夫、どんな姿でもオレはminaを受け入れるから。


「う、うん。大丈夫だよ」

 力を込めて言ったつもりだったが、声がうわずっていた。


「じゃあ、こっち向いていいよ」


 振り返ると、

 minaは、細い肩紐に薄い生地、

 丈の短いワンピースを着ていた。

 白いデザインの中に、胸元に黒い花の刺繍がしてある。

 ベビードールって言うんだったかな? これ。


 柔らかい微光に照らされて、

 minaはこれ以上ないくらい恥ずかしがっていた。

 小さい鎖骨、下着の形がはっきりと見える胸元。

 足首はきゅっと引き締まっていて、短いスカートから覗く白雪のような太ももが、オレの脳を直接刺激した。


「カズくん、こういうの……キライ?」

 minaが伏し目がちに聞いてきた。

「いや、そんなことない……」


「ヘン……かな?」


「す、素敵だよ……とても」

 オレは、何とか声を絞り出した。


 minaがオレの手が届くくらいに、近寄ってきた。

 そして、真っ直ぐにオレの方を見つめる。


 化粧っ気のないminaは、なんだか普段より幼く見えた。

 長いまつげ、潤んだ瞳、宝石のようにキラキラと輝いている。

 可愛らしいくちびるが次の言葉を紡ぎ出した。


「私を……カズくんだけのものにして……」


 歌姫の、透き通った甘い……声。

 そのまま、minaを激しく抱きしめて

 可憐なくちびるを啜った。


 minaの体が一瞬ビクッと震えたが、minaもオレの背中に手を回して、熱いキスに応じてくれた。


 minaの絹のように柔らかい素肌の感触を

 ゆっくりと、味わうように確かめ……


 そのまま、お互いの体を、探り合う。


 オレの理性は、もう限界を迎えていた。

 荒々しく、minaを、白いベッドに押し倒した。


 そして熱情に身を任せて、minaを求める。

 minaが……欲しくて、抑えきれない。


「あっ、カズくん……お願い、優しくして」

 minaから懇願にも似た、吐息が漏れる。


「ごめん……久々なもんで……」

 オレは、手を止めて、謝った。

「私も……そうだから……六年くらい、してないの」

 minaはまじまじとオレを見つめた。


「オレ、四年くらいかな……」

「カズくん、ずるい……」

 minaはそう言って微笑んだ。

「ごめん」


「ねえ、もう大丈夫だから……来て……」

 minaは乱れた髪もそのままに、

 瞳を潤ませながら、オレを誘った。


 今度はなるべく優しく、minaのくちびるを求めた。

 オレも、着ていたものを脱いで、そして

 ゆっくりと、minaのベビードールに手をかけた。

 恥ずかしそうに目を逸らす、mina……


 そしてさらに、minaを愛する……


 オレの愛に、恥かしそうに身をよじる、mina。


「カズくん……」

「mina……ミナ……」

 


 minaの柔らかい場所を、十分に味わったあと……

 お互いに視線を絡ませて

 minaと想いを……遂げる。


「カズくん、私……とってもうれしいよ」

「オレもだよ、mina……」



「カズくんの体……たくましい」

「minaも……とても素敵だよ」



 minaがオレの背中に手を回してきた。

 オレも、minaをさらに激しく、抱きしめる。



 このまま……この一瞬を、永遠に……刻み付けたい。


「ずっと……ずっと、一緒にいようね」

「当たり前だろ、ミナ!」



「カズくん、愛してる、カズくん……あっ!」


 オレの脳の中が弾けて、一瞬頭の中が真っ白になった。


「ハァ……ハァ……」


 オレは、minaに覆いかぶさっていた体を起こし、

 ゆっくりと、minaの隣に体をずらした。


 そして、優しくminaに口づけをした。

 minaは安堵した表情で、それに応えてくれた。


 minaの小さな頭に腕を回して

 お互いの感触を確かめるように、抱き合った。


 愛する人と、想いを遂げた。

 顔をくっつけて、微笑み合う。

 オレの大好きな、minaの甘い香り……。


 そして……


 いつしかオレたちは……心地よい眠りについていた。

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