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何も見えない、何も聞こえない、全ての感覚が無効化されてしまう世界。
何も感じないはずなのに、何故かこの世界の冷たさだけが肌を通して伝わって来る。
――私は何でここにいるんだろう・・・何も思い出せない・・・。第一私は誰だっけ・・・?
こんな状態でここに何時間、何日、何か月いるのだろう。それすらも解らなくなってきた。
しかし突然、何も無い冷たいだけの世界が、一部だけ暖かくなった気がした。なんだか落ち着いた気持ちになって、いつまでもこうして居たくなる。
「・・・選」
何処からか聞こえてきた声に、選はハッとする。
――そうだ・・私の名前は選だ、なんで忘れてたんだろ・・・・。というか、あれ?そこに誰かいるの?
そう思って周りを見渡してみたが相変わらず、世界は真っ暗なままだ。
――やっぱり誰もいないの?
選が諦めようとした瞬間「帰るか・・・・」という声とともに、先程まで温かかった場所からぬくもりが離れていくのを感じた。
――待って置いて行かないで!
そう思う一心で離れていくぬくもりに追いすがった。