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stardust fantasy  作者: そうしょう
2 不老不死の彼と彼女
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7

どれだけ、どれだけ乞うたのだろう。終わりの時を幾年も幾年も。例えどんな終わりが来てもいい、そう願うのにこない、

こない、

こない終わり。


あと何度祈ればいい?


×××


第二章 不老不死

それはもう何年も前の話だ。少なくとも今笛が産まれる前、否、彼の祖父母の代頃の話だろう。耳にたこができそうなほど、今笛と風波は長いことその話を聞かされた。


どんなに時間がたとうとも、刃を身に受けようとも、我々一族は死ぬことはできないのだと。


それは、呪いだった。


和草(カズクサ)家と瀬海(セカイ)家は主従で結ばれた間柄である。和草の血を引くものは代々植物を操る者が多く、その血を守るために瀬海家は存在する。瀬海家は遠い昔から和草家と深い繋がりを持つ家なのだ。

そうした経緯から和草今笛(カズクサコブエ)瀬海風波(セカイカザナミ)が行動を共にするのは至極当然のことと言えるだろう。


死ぬことができない。所謂不老不死というやつは誰もが憧れるものかもしれない。永遠の命。それに惹かれるものも多くいるのではないだろうか。しかし彼らはそれを呪いと呼ぶ。

痛みに呻いても、病に冒されても、決して死を選べないのはどれほどツラいことだろう。

そしてそれを、今笛は15の人生の中で悟っていた。だからこそ、村のために、皆のために、家族のために。

死を選ぶために、原因を探ることを決意したのだ。


そもそも呪いとは、不老不死になったことなのだがなぜ受けることになったのか。風波は正直、口には出さないけれども自業自得であると思っている。彼女たちの一族は領地を求めていた。広い場所での安定した生活を送るためだ。そしてそのためには、領地を奪わねばならなかった。


だから、自業自得なのだ。

だから、彼女は憎んでいる。


もし、もしもこの呪いなんてなかったら、今笛の記憶脳が圧迫されることはなかったはずだと。


今笛は植物を操る力だ。彼の一族は植物系が多いといったが、呪われてから産まれた和草家では唯一の存在となる。植物は生を司る。不老不死の体と相性が悪いらしい。そのため、彼の脳は力に圧迫されている。

和草今笛は、昔の記憶を思い出せない。

記憶が侵食され、こぼれ落ちていくと言ってもいい。


彼を蝕むソレが、

風波にとって苦しく思う。



×××


「雪風部ゥ?」

なんだそれ。牛乳パックを片手に、今笛は聞き返した。キョトン、とした表現が似合うその様子に風波は気分を害すこともなく、説明をした。

「≪力≫について研究をしているらしいよ!どんな実績を持ってるのか…って聞かれると、特になにもないらしいんだけどね!」

「いや、それ嘘っぽい情報だなおい」

ぢゅー、と牛乳を飲みつつ、呆れ表情になる今笛。それに対して風波は尚も笑顔だった。


今笛と風波は高校生となったばかりだった。学生として勉学はもちろんのこと、≪力≫についても探っている。彼らは不老不死という呪いを解くために≪力≫について調べているのだ。呪い、といってもそれは≪力≫と何ら変わらないことは分かっている。人間が持っている≪力≫は、そういうことも可能にしてしまうのだから。

「で、どうする?」

風波がカチューシャで留められた金髪の髪を揺らしながら妖艶に微笑んだ。幼馴染のその様子に、今笛は肩を竦める。


雪風部は一応使われていない部屋で許可をもらって利用しているらしいことを聞き、訪ねるだけ訪ねてみることにした。もし情報を提供してもらえて、かつそれが自分たちのためになるのならよし、逆に何も情報が入らなかったとしてもそれは仕方ないことだ。そう簡単に呪いについて聞ければここに自分たちが居るはずがないだろう。二人はその部屋に訪れてみた。

「失礼しまー…」

「おっとぉ!ごめんねぇ?!」

脚を踏み入れようとした今笛の襟を、後ろにいた風波が思いっきり後ろに引っ張った。ぐぇ、と喉の奥から漏れてはいけないような声が飛び出る。それとほぼ同時に開いた扉から小柄な少年が姿をのぞかせた。彼は一つ謝罪を入れると今笛と風波の上を潜り抜けて、廊下を走り去っていってしまう。

密留(みつる)!!!!!!」

「あー……だめだあれ、捕まらない捕まらない」

「もう!まだ何も決めてないじゃないですか!」

そして部屋の中から二人の声が響いていた。とりあえず今笛は風波を向いて、「あのままだとぶつかっちゃうとこだったから」と笑顔で言い切る彼女に毒気を抜かれてしまい礼を言っておく。しかし死ぬかと思った。

来客の存在に気付いたらしい二人がこちらを見ていた。

「あ…ごめんなさい、うるさかったですね。こんにちは、貴方たちは……一年生?」

メガネを付けた物腰柔らかそうな少女が口を開く。少女の隣の椅子には伏目がちな瞳が特徴的な青年の姿。先ほどの声は間違いなくこの二人のものだ。

「ここは雪風部。どんな要件で?」

「≪力≫について、聞きに」

とりあえずどうぞ、と椅子をすすめられて二人は腰かけた。少女は頷いて

「とりあえず自己紹介しておきますね。私は里位奈…気軽にりなとおよびください。こちらは千火我(ちほが)。」

「ついでにさっき出て行ったのが密留。りなと密留は二年、俺は三年だ。」

「オレは今笛、こっちは風波。」

「噂で貴方達が≪力≫について調べていることを聞いて、あたしたちも≪力≫を調べていることもあり情報の共有を求めに来ました。お尋ねしたいんですがいいですか」

風波がさっそく口火を切り、続ける。

「呪い、不老不死について聞きたいんです」

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