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「えーっと…」
ごそごそと日が傾いた部屋の中で、彼女は探し物をしていた。と、彼女の後ろから声がかかる。
「これ?」
「あった!そうそれ!」
青年が手に取った本を指さして、彼女は嬉しそうに声を上げた。
冷音部。≪力≫を調べ、研究し、纏わる謎を解決する部活。
どこか遠い、遠くの昔、声がする。悲痛そうに、自分を殺してと訴えた少女の声が残って消えない。もう、あんな声を聞きたくない。いつだって、どんなときだって。
「前くん、これで良さそうだよ。でもって、正直予想していたことの最悪のパターン、かな」
「………、そっか。」
前は資料に目を通す。
―――君のためなら、なんだって。
×××
風が強く吹いている。その中で遠いところに来たのだと、なんとなく少年は思った。フードがついた上着と短めの髪。そして右目を隠す黒布。何より不思議なのは、少年が星さえ見えている空の元、赤い傘を携えていることだった。少年はゆっくりと深呼吸をすると、ポソリと呟き、黒布を外す。
「≪二重人格≫」
黒布に隠されていた瞳は輝く金色だった。赤と金の瞳が何回か瞬きをすると、やがて笑みが口元をなぞる。
「――行くか、≪運命≫を探しに。」
一人、そう呟くと――地を蹴って、身を宙に踊らせた。
傘が花を咲かせるかのように夜空の元で開かれた。
彼が≪運命≫を担う者と出会うとき、物語は始まる。