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第8話
ネロの上司である連隊長が向かったのは、とある研究室だった。
アルファとプリントされた紙が貼られている研究室の扉を開けると、その先はもはや迷宮となっていた。
「アルファさん、いますか」
連隊長が部屋の中に呼び掛けると、奥の方から青年が顔をのぞかせる。
「ああ、連隊長さん。今日はどういった用件で?」
両手には難しそうな数式や化学式がびっしりと書かれた書類の束を持っている。
連隊長はその半分も理解することができないが、今回はそれが目的で来たのではない。
「ネロが、出現反応を示していることについてです」
「ほう、もう反応を出しましたか」
目の奥がきらりと輝くアルファは、入ってくださいと連隊長に言う。
「申し訳ない、こんなに散らかってしまっていて」
アルファはどうにか一角を片付けて、そこに連隊長を座らせる。
「それで、出現は何に対するもので」
「殺人に対する恐怖、ですね」
「ふむふむ、なるほど。予想とあまり違わないですね」
アルファは言いながらも、連隊長に一枚の書類を見せた。