第7話
ネロは1時間ほどずっと考え、結果として少女に会うこととした。
門番に身分証を見せ、牢の中に入る。
少女は、昨日と同じ様子で、座らされていた。
腰あたりに鎖で椅子と固く結ばれており、さらに椅子は床と固着されている。
両足は椅子の足と枷で繋がれているため、自由に動かすことはできない。
ただし両手は何にもつながれていない。
それでも鎖は簡単に解けないようになっているし、少女がここから自力で逃げ出すということは不可能だ。
「どうだ」
少女にネロは聞く。
少女は横に顔を向け、答えようとしない。
「何か言いたいことがあるんじゃないのか」
「……どうして殺さなかったの」
横に向いたまま、ネロに答えた。
「さあな。殺そうと思わなかっただけだ。それだけだ」
「本当に?」
それだけじゃないだろと、少女はネロに目を向けてくる。
「それだけだ」
ネロはそう答えたが、何か違うと心では分かっていた。
それがなぜなのかは分からなかったが。
ネロが少女の牢から出ると、上司が門番と談笑していた。
「お、出てきたか」
「連隊長殿」
ネロはすぐに敬礼する。
上司が答礼すると、先に上司がきいた。
「それでどうだった」
「少女に質問されました」
「なんと」
門番から遠ざかるように、上司とネロは二人で並んで歩き出す。
「なぜ殺さなかったのか、と」
「それで、どう答えた」
「殺そうと思わなかったからだ、と」
「そうか」
上司はそれだけ言うと、ネロと別れる。
ネロが十分に上司から離れ、持ち場へと向かうのを見送ると、上司は何か考え、ある場所へと向かった。