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第29話
「死ぬって、どんな感覚なんだろうな」
「僕に聞かれても困りますよ」
連隊長の言葉に、ネロは弱々しく笑いつつも答える。
「ああ、目の前が白くなってきた……」
ネロは、得体のしれない既視感に襲われている。
「前にも見たな、この風景……」
「どんな風景だ」
葉巻の煙は、もやになり消えていく。
「白い、世界。僕と俺と自分が一つになる世界……」
あとは、ネロはうわ言のような言葉を吐き続ける。
そして、目が薄くなり、完全に閉じられる。
「…さよなら、ネロ・ケルビム」
連隊長は、最後にそう呟いた。