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第2話
「ネロ、何か巡察中に問題はあったか」
歩哨詰所で、上司らしき人が質問をしている。
肉体は頑強であり、鍛え抜かれている。
不必要な脂肪は全て削ぎ落とされており、その肉体は機能美あふれるものとなっていた。
だが、その肉体を見るものは、誰もいない。
ネロと呼ばれた男も、似たような体格だ。
見た目では違いがないように見える二人ではあるが、服装では明確に違っていた。
ネロは、不動の体勢で敬礼をする。
「はっ、連隊長殿。現在に至るまで、問題はありません」
「うむ、それでよい」
彼らは第36軍団第5歩兵連隊。
研究所を守るために造られた専属の組織であり、そのメンバーは、研究所の所長が選任することになっている。
特別中の特別、エリート中のエリート。
それが、彼らだ。
だが、彼らには大いなる秘密があった。
それこそ、彼らが彼らであるという証拠であり、研究所以外で務めると言うことができないという理由であった。