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第10話
研究室の奥、暗証番号を打ち込んで開ける金庫のような厳重な扉を開くと、真っ暗な部屋だった。
パチンとどこかでスイッチがなり、一瞬で部屋の全ての電球に電気が通る。
部屋には、一面に直径が1メートル、高さは3メートルはあるであろう、大きな円柱形の水槽で埋め尽くされている。
中にはところどころに人間の体のようなものが入っている。
「これは……」
連隊長は絶句している。
それを悠々と見ながら、アルファは両手を広げ言い放った。
「これが、出現の理由ですよ」
「これは、人か」
すぐそばにある水槽に連隊長は近寄る。
「ええ、人ですよ。すでに死んでいますがね」
「死んでいるのか……」
「死人のうち、身寄りのない人、死刑囚、その他さまざまな条件によって、選んだ人たちです。ここではその肉体の組成を変え、遺伝子レベルで人ならざる人へと変えるのですよ」
「国がそれを認めていると言うのか」
「そうでなければ、こうやって巨大な研究室を与えられるということはないでしょうね」
アルファは笑っていた。
それは、狂気を明らかに含んだ笑いであった。