魔方陣からは逃げられない!?
はてさて、懲りずにまたやってきました。
お久しぶりです。ノワールです。
暇つぶしで始めたこの作品、完結目指していくつもりではいますのでよろしくお願いします。
―――俺には二人の幼馴染がいる。
いつも通りの日常のはずだった。
―――そいつらは、まるで物語の中に居るかのような特別な存在だった。
幼馴染が起こすトラブルのせいで退屈とは無縁ではあったけど、それでも平和な日常ではあったはずなのに。
―――隣に立ちたいと思ったこともある。いつか叩き潰したいと苛立った記憶もある。
帰宅途中の道端で、騒いでいたはずなのに。
―――でも、いつからかそんなことすら思わなくなった。いや、馬鹿らしくなってきたのだ。
なんでこんな状況になっているのだろうか。
―――どんなに努力しても追い付けなくて、なのに決して俺を置いていこうとしないあいつらに対して何かをいちいち感じることが、凄くみっともなく感じたのだ。
急に目の前が光り始めたと思ったら、魔法陣としか表現のしようのないものが現れて俺たちはナニかに引っ張られ始めた。
―――自分は主人公ではない
何とか近くの電柱に掴まることはできたけど、今にも電柱ごと引き込まれそうだ。
―――俺はそうやっていくつもの夢をあきらめてきたのだ
俺が手を滑らせたときには幼馴染たちはすぐに手を取ってくれた。
―――だというのに、神様ってやつはなかなかに嫌らしいやつだったみたいだ
だけど、そろそろ限界らしい。今にも手が滑りそうだ。
―――今更、俺に
「勇者様でもやれって言うのかよ………」
「おい! こんなときに何言ってんだ、シュウ!!」
「ヤバいよ、もう持たないみたいだ!!」
幼馴染二人が喚いているのを聞きながら、ふと思い返してみる。俺たちの置かれている現状、異世界召喚物の小説にありがちな魔法陣に引きずり込まれそうなこの状況について。その間にも電柱はミシミシと嫌な音を立てているので本来は幼馴染の反応が正しいのだろうが。
「畜生が! なんだってんだよ、いったい!!」
幼馴染の片割れ、俺様キャラである、巷で評判の美形その1。無造作に跳ねた茶色の髪と切れ長の瞳が野性的な印象を与えてくる『藤代 桜華』である。
「そんなことは僕が聞きたいよ!」
もう片方の幼馴染、王子様がこいつほど似合う男は居ない、美形その2。ハーフでありハニーブロンドの柔らかそうな髪を揺らし、甘い声を垂れ流す『御剣 レオン』だ。
そして、俺こと『綾咲 秋』の3人は今現在、摩訶不思議の真っ只中にいるわけだが、ぶっちゃけ助かる方法は無いわけで悩むだけ無駄なんじゃないかなー、と思っていたりする。何故なら、現状周りには俺たち以外に誰もいない。ということは狙いは俺たちの中の誰かってことになる。さらに、魔法陣自体は目的が完了するまで消えそうにない感じなのだ。
「お二人さんやー」
「なんだ!」
「どうしたの!?」
わぉ、とっても必死な声だこと。ま、この際だしこの方法でいいかな。
「いやー、言いにくいんだけどさぁ………」
「今忙しいから後にしろ!! それに、こんな時のてめぇの意見はくだらない事ばっかだったじゃねぇか!!」
「僕も同意見だから、シュウはおとなしくしてて!!」
あー、聞くつもりは無いだけならともかくそんな風に言われるのは不本意だなぁ。ま、それならそれで勝手にやるけどさ。
「ということで、じゃあなー」
無理やり手を振り払う。それによって俺の体は一瞬で魔法陣の方へと引き寄せられていく、次の瞬間には俺は魔法陣の中へと沈んでいく。わぉ、なにこれ新触感。
「待て、このバカ!!」
「ホントにもう! シュウってば!!」
怒っているような、呆れているような二人の声はするけれど、すでに体の大部分が飲み込まれている俺には二人の姿ははっきりと見えない。緩やかな喪失感、痛みはないけど少しずつ感覚が消えていっているような感じがする。
そんな時に残りわずかとなった感覚が残っている顔に何かが触れた気した。だけど、それを確かめる暇もなく俺の意識が途絶えた。
いかがでしたか?
評判がいいなら作者のやる気は跳ね上がります。