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いつ帰れるの
母が入院してからは、
毎日のように見舞いに行っていた。
母はいつもベッドに横たわり目をつぶっていた。
「母さん、来たよ」
と声をかけ肩を軽く揺する。
「今日も来てくれたの。悪いわね」
そう言って私の顔を見た。
「ちょっと手を貸して」
母は私の方に手を伸ばす。
細い手首をそっと握り、体を起こした。
「いつ帰れるの?」
母は決まってこう尋ねた。
「もう少しの辛抱だよ」
そう答えるしかなかった。
病院での一日の様子を聞く。
検査のこと、味気ない病院食、親身な看護師への感謝の言葉ーー
だが、またしばらくすると
「いつ帰れるの?」と訊く。
「もう少しの辛抱だよ」
同じやりとりを繰り返す。
「明日も来るからね」
帰り際、母にそう言う。
「わかったよ。ねえ、いつ帰れるの?」
母の小さな声にしばらく、私は答えることができなかった。
もう少し母のそばにいることにした。




