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もう一つのシルバーカート
母の退院後、歩行器をレンタルした。
数回使った後、物干し台になった。
「なんで使わないの?」
「だって、大きくて使いにくいんだもの」
「これ、一番小さいやつだよ」
「⋯⋯とにかく嫌なの!」
それからしばらくして『白いシルバーカート』を
物置から出せと言うようになった。
ない、と伝えても何度も言う。
「わかった。じゃ、買いに行こう」
その日から、母は白いシルバーカートを押して
家の中を歩くようになった。
もう一つのシルバーカートは
部屋のすみで埃を被っている。




