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大人になったね

作者: P4rn0s

大人になってから、ふとした拍子に気づいた。


自分は、親のことも、祖父や祖母のことも、ほとんど何も知らないまま生きてきたのだと。


それに気づいた瞬間、胸の奥が少しだけ沈んだ。

何かを失ったわけでも、誰かに責められたわけでもない。

ただ、今まで気にもしなかった場所に、ぽっかりと空白があることを知ってしまっただけだった。


思い返してみれば、私は家族のことを「知っている」と思い込んでいた。

名前も、年齢も、誕生日も知っている。

一緒に住んで、一緒に食事をして、同じ時間を過ごしてきた。


それだけで、十分だと思っていた。


親は親で、祖父母は祖父母で。

そこに至るまでの時間や、選ばなかった人生や、抱えてきた迷いについて、考えたことがなかった。

大人は最初から大人で、当たり前のようにそこにいる存在だと、どこかで決めつけていた。


質問をしなかった。

興味を持たなかった。

知ろうとしなかった。


理由はいくらでも後づけできる。

忙しそうだったから。

今さら聞くのが気恥ずかしかったから。

どうせ大した話じゃないと思っていたから。


けれど本当は、ただ無関心だったのだと思う。


ある日、実家の押し入れを片づけていたとき、古いアルバムを見つけた。

そこには、知らない服を着た家族が写っていた。

知らない髪型で、知らない場所で、笑っていた。


確かに知っている顔なのに、知らない人たちのように見えた。

その写真の中には、私の知らない時間が確かに存在していて、

その時間を、私は一度も必要としなかったのだと思うと、胸の奥が静かに痛んだ。


親にも、祖父母にも、私と同じように若かった時間がある。

迷って、悩んで、選び続けてきた人生がある。


その当たり前のことに、こんなにも遅くなってから気づくなんて、

自分はずいぶん鈍感だったのだと思う。


それでも、今気づけたことだけは、まだ救いなのかもしれない。

もう遅いかもしれないし、間に合わない話もあるだろう。

それでも、何も知らないまま「知っているつもり」で生き続けるよりは、きっといい。


次に会ったとき、何を聞こうか。

昔の仕事の話でもいい。

若い頃に好きだった音楽でもいい。


どうでもいいような、

でも、その人にしか語れない話を、

ひとつでもいいから、聞いてみようと思う。


大人になってから気づいた。


自分が知らなかったのは、家族の過去だけじゃない。

誰かの人生に、ちゃんと目を向けるということを、

私は今まで知らずに生きてきたのだと。


そのことに気づいて、少しだけ悲しくなった。

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