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第一話 出席番号ゼロ③
昼休み。
俺は屋上へ向かう階段を上った。
途中、放送室の前を通りかかる。
扉は閉まっているが、中から機械音声が漏れていた。
『――出席番号、一番。青田』
『――二番。赤星』
『――二十五番。夏目音矢』
自動点呼システムのテストらしい。
抑揚のない声が規則正しく続く。
自分の名前が呼ばれるだけで、背中がぞわりとする。
続くはずの番号を、頭の中でなぞる。
二十六番、成瀬。
二十七番――。
『――出席番号ゼロ、なか――』
ノイズが混じった。
ゼロ、という異物。
それから「なか」で途切れた何か。
音声がぷつりと切れる。
「……は?」
思わずドアノブに手をかけた。
中から慌てた大人の声。
「止め止め! いまのログ消しとけ!」
「すみません、番号のテーブルが……」
「ゼロ番なんて本来存在しないだろ! ダミー外し忘れるな!」
椅子が鳴って、紙が擦れる音がして、空気だけが漏れた。
ただのトラブル。
ダミーデータ。
理屈としては、それで終わる。
でも――朝の空白と、今の「なか」は同じ匂いがした。
偶然じゃない。整える側の匂い。
頭を振って階段を上る。
今考えるのは、負けに繋がる考え方だ。




