第1話 あなた。……、わたしのこと、嫌い?
どうぶつのくに
あなた。……、わたしのこと、嫌い?
西山言葉がどうぶつのくにを訪れたのは、言葉が十六歳になった誕生日の日のことだった。
言葉は両親と一緒にどうぶつのくにを訪れた。
そこで言葉は十六歳の誕生日の贈り物として、好きなどうぶつを一匹だけもらって帰ることを両親から約束されていた。
どうぶつのくにでは、そうして年に数度、どうぶつを飼いたいという人間たちに貰われていくどうぶつたちがいた。
それから言葉はたくさんのいろんなどうぶつたちを眺めて、やがて、猫のエリアにまでくると、そのまま小さな檻の中でじっとしている『ぼく』の前までやってきた。
小さな檻の中でただ小さく丸くなって目を閉じていたぼくを見て、言葉をぼくをその小さな指で指差して、この子がいい、と口だけを動かして両親に言った。
生意気な猫。
全然人になつかない、凶暴な猫。
そんな猫を見て言葉の両親は不安そうな顔をする。
「どうする? 違う子と交換してもらう?」
両親は言葉に言う。
ううん。この子がいい。
そう口だけを動かして言って、言葉はにっこりと笑った。
「……、わかった。そうしよう」
と言葉の両親はとても優しい笑顔をして言った。
ありがとう、と言葉は口だけを動かして嬉しそうな顔をして、両親にそう言った。
そんな幸せそうな親子の風景をそっと目を開けて盗み見るようにしてぼくは見ていた。
……、はぁー、いやだな、とぼくは思った。
ぼくはまたこの人間の女の子に徹底的にいじめられるのだと思った。
ぼくはじっと攻撃的な目で、言葉のことを睨みつけた。(こいつは敵だ。今度こそ、負けてたまるかと思った)
でも、そんなぼくを見て、西山言葉はにっこりと、とても優しい表情をして笑った。
そんな言葉の顔を見て、ちょっとだけ拍子抜けしたぼくはじっと、二つの透き通るような青色の瞳で、そんな言葉の顔を不思議そうな顔をして見つめた。
それがぼくたち(わたしたちの)の初めての(……、きっと運命の)出会いだった。