7友人
私の友人はいつも私の隣に居てくれました。私が喜んでも、怒っても、泣いても、笑っても、いつも側に居てくれました。
だから、私は友人には本音で話せていたのです。
私の國は京都でした。
「あ!ほら、屋台がいっぱいや!」
「ほんまやなぁ。」
祭りが開催されていたあの日。いまでもずっと鮮明に覚えています。
すると、友人は私に話しかけてくれました。
「何食う?」
「せやなぁ……」
「あぁ……!けど、俺、あんま錢貰ってきてないわぁ……」
「じゃあ、俺の使えばいいやん。」
「うぉおおお!!いいん?言ったな?言ったな?」
「あはは、いいよ。」
友人と話す時だけ、楽しいという感情が私に蘇りました。師範学校に入った時、私は教師になろうとして学科が違うのですから、友人とは離れ離れになってしまいました。
「うめぇ……!うめぇよ!このりんご飴…ってやつ。俺、初めて食ったわ……!」
「うん、美味いなぁ……。きらきらして綺麗や。」
師範学校に入っていた四年間は地獄のような日々でした。機械のように生きていました。
「お前が祭りに行く前、泣いとったからびっくりしたわ。」
「……。」
「また親ん話やろ?いやぁ、しかし……」
友人が話しかけた後、花火が空に舞い上がりました。
「あ!もうそんな時間やったとは……しくじった!!来い!俺、穴場知っとるから!」
「うわあ!!」
私は幸せでした。心の奧が嬉しくて、楽しかったのですから。
「んおおお!!たまやーー!!かぎやーーー!!」
「たまやー!かぎやー!」
私たちは無意味に花に向かって叫びました。周りに人なんか居ません。
「俺さ、大人なったらここ離れるわ。ここは俺の居場所やない。合ってない。行くとしたら…東京かなあ。」
「東京……せやったら、もう会えへんってこと……」
「いやぁ、大人なったらお金もあるし会えるやろ。」
「そうやな……」
私が暗い話をしてしまったせいで、しんと静かになってしまいました。その申し訳なさから、私は違う話題を吹きかけました。
「お前は将来、夢とかあらへんの?」
「小説家!」
「おぉ、そうか。なれるよ、お前はいい文を書くもん。」
「お前は?」
「……まだ。まだ考えとらん。」
「そう。気長に考えとき。」
「うん。」
友人はこの時から、既に小説家という夢が決まっていました。こういう所で私は友人と何かが違っていたのです。
分かりません。
親がいないこの東京ですら自然体でいれない私は、どうすればいいのでしょう。
そして友人はいつも私の事を下に見て来ました。
「お?お前、どこの高校に行くん?へえ、公立か。俺は私立。」
「あ、そう。」
私はいつも軽く流していました。相手に言っても意味ないのですから。
けれど、私は彼にある一つの賭けをしてみようと思いました。彼ならきっと分かってくれるはず。友人だから分かってくれるはず。そう思っていました。
「そのさ、公立とか私立とか比べないで欲しい、な……。」
友人はただ、その場に立って数秒間、私を見続けました。
友人はただ、その場に立って数秒間、私を見続けました。
「じゃあ、じゃあお前は俺をからかうの止めろ。」
「ごめん。その件については僕も反省しているよ。」
「あとお前、いっつも俺を――――」
やっぱり無理でした。
人と喧嘩しても、自分の意見を言っても意味が無いと勘付きました。これきり一回ではないのです。何回も「やめてほしい。」と訴えかけたのですけれども、やはり話を聞いてくれませんでした。
なので、あの頃から私は、自分の意見を言うのが怖くなりました。
それからと言うもの、私は人と接するのを避けて来ています。
「新聞見た?やっぱあの先生の小説は秀才やなぁ……!!」
「うん、そうだね。」
その後から、友人に"そう言う奴"と張り紙を貼りながら、友人と接しています。
――――――――
酒屋で会った時、友人は幸せそうでした。良かったと安堵すると同時に、私は嫉妬心を抱いてしまって、あの時のような純粋で無垢な心はとっくのとうにどこかへ行ってしまったのだと、私自身に失望しました。
「俺さ、結婚したんだ。」
そう聞いた時、私は何とも思いませんでした。私の心は幼少期に置いて来てしまったようです。
のちに段々と、嬉しさが込み上げて来ました。第一に嬉しさがないなんて、私は彼の友人として失格です。
友人とは大人になった今でも、手紙でやり取りだけはしていました。やはり、あの癖は治っておらず、「いや、実際に会ってみなければ分からない」と会ってみても案の定、変わっていませんでした。あんな調子の友人と生活する奥さんと子供はどうするのでしょうか。
――――――――――――
「よもぎちゃんはもう寝たの?俺、もっと話したかったなぁ。」
「また来ればいいじゃないか。」
私の宅で呑んでいる時、またもや友人はこう言いました。
「しっかし、お前は不幸だなぁ。」
「何が。」
「親も駄目だ、奥さんもいない。可哀想だなぁ。」
友人は笑っていました。それを私は見ていました。ただ、ずっと見ていました。
「なんで小説家にならなかったんだ。」
「お前は恵まれているから…分からないんだ。」
脳では止まれと訴えてかけているのに、口が勝手に言葉を発してしまいます。
「環境のせいってだというのかい?お前の努力次第だったんじゃ、」
「俺は自分で小説を書いて分かったんだ。隅から隅まで好きじゃないって。あんなにきらきらして、輝いているものは書けないって。僕なんかが書いたら失敬だ。それに親にも恵まれなかった。俺は俺は、」
冬の息を吸う。
「もう……もう帰ってくれ。」
友人は驚いていました。
「酒が入っているからって、ああはあんまりだ。帰ってくれ。」
私は怒鳴りたかった。そんな勇気はなかった。
「お前の方があんまりだ。」
「…………。」
私が黙っていると、彼は羽織りを着ながらこう投げ捨てました。
「お前はいつも逃げる。」
この言葉を投げかけられて数年経った今でも深く刺さっています。それくらい、言葉は強いのです。
友人を無くして、兄弟と親すら頼れない私は今後どうすべきなのでしょうか。
この問いは誰に問う事も出来ずじまいで、消滅してしまいました。
私は貴方を起こして、頼れば良かった。
師範学校は今で言う教育学部の学校




