25最後に
「あの頃は、どうなることかと冷や冷やしましたよ。」
「わたしもよ。書生に頼るなんて、だめね。」
先生は首を傾げながら笑った。
「いいえ。嬉しかったですよ。」
「祭りの時も?」
「ええ。」
二人は顔を赤らめる。皆は知らぬ。
「もう、」と先生が話し出した。
「もう冬ですね。」
「そうですね。運動すると気持ちが好い気温ですわ。」
「銀杏がきれいだね。」
雲と雲の隙間から、光が差し込む。西洋の絵画のようだ。
「ええ。」
「銀杏の落ち葉。あすこいらの葉っぱの群、ぼくはね、あの上に立てないんだ。」
「どうして。」
落ち葉が可哀想だからかしら。そう思った。しかし、違ったようだ。
「あすこに立つ、相応しい人がいる気がするんです。」
すると、黄色い葉が黄金のように輝いた。弱い雨が、まつ毛を湿らせる。
「きれい。」
風で少し歩く葉を見つめる。
「先生。わたし、いつか先生のような価値観が持てますか。」
先生はちょっとよもぎを凝視した。
「僕も貴方のような価値観がほしい。」
「わたしは先生みたいな価値観はないですわ。」
よもぎは残念そうに、不服そうに笑った。彼女の笑顔は本当に美しいものであった。そう、君が想像通りの美しさ。
すると「私は馬鹿でした。」と男は呟く。
「本当に馬鹿でした。もっとはやく君に言うべきでした。法律なんて固いものに縛られないで、父の言うことなんて無視して、貴方を優先すべきでした。貴方とずっと隣にいるべきだった。」
先生はよもぎへ真っ直ぐ言った。
「僕は貴方を愛している。本当にずっと前から愛している。」
よもぎは一寸眼を開け、おどろいた。しかし、瞬きする間にはもう、すでに笑っていた。
「嫌あね。遅いわよ。」
山が晴れる。
「早く言って欲しかったわ。そしたら、わたしだって永遠に先生の一番近くにいたられたもの。わたし、貴方に好きな人がいるって思ってたのよ。」
「僕は貴方に一目惚れをしました。他ひとり、愛している人などはおりません。貴方だけが、好きなのです。愛しているのです。」
「わたしも貴方のことを愛しているわ。好きよ。」
「僕とずっと笑ってくれるのですか。」
「ええ、ずっと笑いましょう。ずっとじゃなきゃ嫌よ。」
「じゃあ、君を幸せにしなければ。大好きですよ。よもぎさん。」
先生はわたしの名を呼んでくれた。
「これからもずっとだ。」
そういって先生は笑った。
ここまでお読みいただきありがとうございます。これからも読んでいただけると、作者がうれしー!っと喜びます。以下は余談です。
よもぎはお淑やかな子です。上品に書くよう、意識しました。
先生は影のある子です。像をわざとぼやかせて不思議な人になるようにしました。
初期の設定では、先生は家の庭師と仲良く、それな対してよもぎの心が乱れていくという今の作品と全く異なる設定でした。
構造につきましては、他人(生徒)→友人→兄→妹→両親→よもぎ、といったように、徐々に内縁になっていくのだけれども、最終には一番身近であるよもぎに焦点を当てました。
昔の人間関係によって人は変わるという作品でした。ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。




