表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伽藍堂は先生  作者: あ行
生徒
2/25

2生徒

「先生、いってらっしゃいませ。」

「うん、家のこと頼んだよ。」

 そう言って私は、家の門を通り出た。この家はまだ借り物で、大家さんに無理言ってちょくちょくお金を毎月払っている。自分の(くに)で暮らすなんて、真っ平ごめんだ。

「…………。」

 汽車に揺られながら、こんなことを考えた。

 最近、困った生徒がいる。それも、ここの学校じゃない女生徒だ。どうしたことか、私の帰りを尾いてきているようだ。

「おはようございます。」

「あぁ、おはよう。」

 先生方に挨拶をし、自分の席に着いた。

 どうしたものか。

 放課後。

 私は生徒が教室に残っていないか見回りをしていた。

「おぉい、もう帰る時間ですよ。」

「先生!見てください!!すごいんですよ。」

 なになにどれどれ、と近寄る。

「今、どうしたら教科書の風で何ページめくれるか挑戦してたところです。」

 坊主頭が三つ頷いた。

「それで、何ページできたのですか。」

「三ページです!」

「良かったですね。だが、新記録を更新するには一旦帰った方がいいですよ。」

「なるほど。うどんも蕎麦も一晩寝かしますもんね。」

「なんだそれは。もう少しやりたかったけど、先生が言うにはそうに違いない。」

「帰ろう。」

 素直な子たちでよかった、いつも通り帰れそうだ。

――――――

 帰り道。

 そうだ。昨日は約束したんだっけ。お団子を買うと。早くお餅屋に行こう。

「先生、こんにちは。」 

「…………っ、」

 角を曲がるとあの女生徒がいた。待ち伏せされていたのだ。

「君はなぜ、私を待ち伏せするのですか。君は他の学校の子でしょう。」

「そうですけれども……あたくし、先生とどうしてもお話したくって……。」

「……分かりました。話をしたら、金輪際、私を待ち伏せしないでくださいね。」

「わたくしとお話して下さるのね。」

 私は帯から懐中時計を取り出し、時間を確かめた。その様子を、獲物を見る鷹のように鋭く監視された。

「しかし今日は、寄らなければならない所があるので、ここで失礼。」

「…………、」

 気味が悪い。 

――――――――――――

「美味しい。」

「そうだろう。」

 先生は本当に団子を買ってくださった。甘い物は久しぶりで幸せです。

「よもぎさん、」

「はい、何でしょう。」

「明日のご予定は?」

「明日?ですか。明日なら、あすこの商店街に行こうかなって思ってて。」

「買い物ですかい。」

「えぇ、貯蔵が効く干物とかが買いたいですねぇ。」

「僕も行く。」

 団子を落っこちそうになって、グワんと串が揺れた。

「いいえ、先生は家で休んで下さい。わたしが行ってきますから。」

「いいんだ、明日はちょうど休みだから。それに君は女中さんじゃないだろう。」

「でも……、」

 先生は奧さん持っていない。

「ほら、僕と一緒に行こう。」

――――――――――

 翌日。

「あ、先生、大根が安いですよ。」

「ほんとだ。煮物が食べたくなってきたな。」

「じゃあ、今日は煮物といきましょうか。」

 大根を三本買う。「やった。」と先生が隣で囁いたことを聞き逃さなかった。他にも、油やお砂糖などの高級品まで買った。先生は嬉しそうだ。

「…………、」

「なぁに、僕の顔に何かついてる?」

「いえ、なにも……。」

 先生は雑踏の中、輝いていた。

「あ、僕本屋に寄りたいな。」

「じゃあわたしは、糸を買いたいのでここで待ち合わせしましょう。」

「あぁ。」

――――――――

「先生はまだか……。」

 今日はちょっと歩きすぎた。足の親指と中指の間が紐で痛い。

「あ、先生。」

 先生はわたしの所に来るのかと思いきや、なにか寄り道をしているようです。

「…………?」

 あすこの店はかんざしやら、指輪やらが売っている所でした。

 きっと先生は他に思ひ人(おもいびと)がいるのでしょう。わたし以外の人。

「ううん、そりゃそうだ。」

「ごめん、待った?」

 見上げると先生がいらっしゃいました。

「いいえ、全然。」

 わたしは少し、強がってしまいました。本当はどんな装飾品をご覧になったか聞きたかったのに。聞いたところで、わたしが傷付くだけか。

「足大丈夫?まだ歩けそう?」

「はい、大丈夫です。」

 わたしはこの非日常的な買い物を、まだ終わらせたくかなった。ずっと続いて欲しいくらい、楽しかった。

「なら、あすこの骨董品を見に行こう。」

 向こうの、のれんを指差す。もう日が傾いてきている。

「…………あ、」

「どうしたんですか?先生、」

 先生はさっきと違って怖い顔をしていた。地獄の釜を除くように遠くの景色を見つめていた。

「……?」

 それは生徒さんであった。制服を着ているから一目で分かった。

「違うところを行きましょう。」

「え、なんで、」

「早くっ……、早く行きましょう。」

 すると先生はわたしの手首を握りました。

「ごめんなさい。急に走っちゃって。」

「大丈夫ですよ。」

 わたしは心臓がドキドキしていました。

「……奇麗ですね。ここの神社。」

「……そうだね。」

 二人とも夕陽を見つめた。ここはちょうど、丘に建っていて街を見下ろすことができた。

「……さっき、」

「あの子……僕を追って来てるんだ。まだ危害はないけれど、何かあったら困る。僕にも、」

 先生は澄んだ目をしていた。夕陽に照らされて、ホオズキの実のようにキラキラしていた。

「君にも。」

「……へ、」

「だから、大事になる前に何とかしたい。」

 先生から線香の香りがした。

「何かあってからだと、遅いから。」

生徒→先生を想っている


視点がこんがらがって申し訳ない。視点は先生→よもぎです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ