小村良太と天野翼は一つになる テーマ『身長差』
働かない生徒会長に代わり、自分で作成した書類を自分で確認していく俺。
ハンコを押していくが、途中でまったく出なくなってしまった。
「翼、ハンコ無くなったんだが」
「そりゃいつかは無くなるでしょ。補充しなさいな」
「インクってどこだ?」
「あなたねぇ……」
俺はそれほど記憶力が良くないので、備品の場所すら覚えていない。というか頼んでも頼まなくても翼がなんでもやってくれるので、覚える機会が無い。
「ほら、貸しなさい」
「頼むわー」
インクの補充をしてもらって、仕事を再開する。
そんな俺を、翼は隣で眺めていた。
「仕事は終わったのか?」
「ええ。私くらいになると、会計の仕事なんか一瞬で終わっちゃうのよ」
「さすが理系最強」
「そういうわけで、仕事増えたわよ」
「なんで高校の生徒会でこんなに書類あるんだ?」
「ウチの書記は優秀だから」
そうだな。書記とか言って会長の仕事もやってるし、なんなら俺が主催(強制的にやらされた)のイベントも何個も抱えてるからな。
「生徒会ってなんなんだろうなぁ」
「仕方ないわよ。ウチの良太は、特別なんだから」
背後から抱きしめられる。彼女の体格はそれほど大きいものではないが、いかんせん俺が小さすぎるので、まるで全身が包まれるようにすっぽりとハマってしまった。
「こうして圧迫されるの、好きだったわよね。今日は頑張ったし、ご褒美あげるわ」
「いつも言ってんな、それ。というか、別に圧迫されるの好きとか言ってないんだが」
「いいえ、良太はこれが好きなの」
断言するじゃん。俺の趣味趣向が翼に決められてしまった。
っと、ふと、時計へと目が向いた。
どうやら時間のようだ。
「翼、ちょっと退いてくれ」
「ダメよ」
「なんで?」
無理矢理退かそうとするが、一向に離れてくれない。
「俺これから部活なんだけど」
「ダメよ」
「だからなんで?」
このままじゃ部活に行けない。一体どうしたものやら。
「部活って、あの女が居るところじゃない」
「そうだな」
「高身長の女」
「そうだな」
「あと、胸がデカい女」
「翼。高身長とか、胸のこととか、人の身体的特徴について、あまり言及するものではない」
「でも事実でしょ? あそこには、アンタの好みのタイプが揃ってる」
俺、好みについて言ったっけな? というか好みとかないんだが?
「私と同じタイプの女が揃ってる」
「おい、俺の好みを勝手にお前にするな」
「そんなの許せない」
「聞いて?」
「他の奴に取られるくらいなら……私の……」
私のモノにするって? またありがちな展開に――
「私の中に……!」
「どういう展開だよ!?」
「良太を圧縮して、一生私と一緒になるの!」
「そんな訳の分からんシチュエーションじゃ、俺も対応できないって! っちょ、はなっ、抱きしめるなっ! ……やめ、やめろぉぉぉぉぉ!」
そうして俺は、翼になった。(融合)