お弁当の梅干し
「ねえ、A子」
「ん?なに」
「お店に売ってるお弁当で、その中に入ってる梅干し、如何やって食べてる?」
「………えっ?」
唐突なB子の質問に、あたしはなんって返せばイイのか困り、少し間を置いて、「なんでそんな事訊くの?」と、逆に尋ねてみた。
「こらあーッ!質問に質問で返すなあ!」
「他人に自己紹介を求めるなら、自分から名乗るのが礼儀、みたいな?」
我ながら、上手い返しだなぁと思っていると、B子は暫し苦渋の決断を迫られたみたいな顔をして、かと思うと諦めたかの様に溜息を一つ。
「っ……いや、ふと気になったのよ…」
「全然、答えになってないよ」
「っっ…市販の梅干しが入ってるお弁当ってさ、ほとんどが、ご飯の中に梅干しの跡があるの!真っ赤で、食べたら上手いヤツ♡」
「あー、あれ結構美味しいよね♡」
「で、食べてる途中で、また同じ様なご飯を作ろうとして…」
「赤いのが付着し易い様に、梅干しを少しだけ食べて、その間に、お弁当の他の具材を時間を掛けて食べる」
「!……なんで、わかっ…」
「あたしもそうするから。でも、結局赤いの、中々ご飯に付着しないよね?で、待ち切れずに完食しちゃう」
他愛無い話題に花を咲かせ、少女達はこの、長く感じるも、僅かな楽しい時間に馳せる。そんな、大人になってから、くだらなくも、あの頃は楽しかったなぁ…と、いつかの良い思い出になるかもしれない?やり取りをした二人の、とある学校での、昼食時間での出来事。