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52話 封印の祠からの目覚め

今回は少しだけ長くなっています。


色々していると書く暇が減ってしまいますね。そのため書くペースはかなり落ちてしまいますが必ず続きを投稿します!

ミラが気配を感じ取ったのと同時刻の封印の(ほこら)では……。


地面に光り輝く魔法陣と剣が刺さっていたであろう痕からモクモクと赤い煙が噴き出していた。それは封印されていた何かが解き放たれてしまったのだ。


「クックックッ……ようやく封印が解かれたか…。いったいどれほど寝ていたのか我にはわからぬな。しかしありがたいな、さすがに寝ているのも飽きていたから助かる。どこかのマヌケな者が封印を解いたのであろう…ふむ、それでここはどこなのだ?」


暗い祠の中に中性的な声が響くと封じられていた石の祠から髪の長い女性が姿を現した。周囲を見るとどうやら知らぬ間に洞窟が出来ていた。封印された時はこんな場所ではなかったはず。しかし封印を解いた者は大魔術師とかであろうな。


「我は…ついに復活したのだ、勇者の願いで仕方なく封印されたが、勇者以外の人間は許さん!っと言いたいが……あれからかなりの年月が流れているであろうから人間も大半は死んでいてくれると嬉しいのだが……うぅ少々寒いな、あの頃の勇者は今もいるだろうか?」


妙に身体が寒い気がすると思い見ると服がボロボロになっている。それは寒いわけだ…。前は美しい黒いドレスだったのだが今は見る影すらない。お気に入りの一つであったのもありショックと大きい。


「今それを気にしても仕方ないか、代わりになるものを探しに出るとするか…ん?この気配は……人間か?まだ生き残っておったとはな」


祠の出口方面から誰かが歩いてくるのがわかる。カチャカチャと金属音を立てて歩いてくるとは、ここに自分がいますと言っているようなものでは無いか。まぁいい、そいつらから情報を引き出せばよいか。


「それでさ…ん?どうした?」

「いや…あそこ……誰かいないか?」

「だ、誰だ!ここは部外者は立ち入りを禁止している場所だぞ!」


腰に付けていた剣を抜きこちらに向けて構えて来た。

祠の奥から見えたのは赤い瞳と兵士が持っている明かりで姿が見えた。青銀髪が股下まで伸びている美しい髪だ、しかし服はボロボロで所々見えそうになっている。


「ふむ、我は敵対したい訳では無いが武器を抜くということは死んでもよいという事だな?まぁ我も弱体化はしているが負けはせんであろう」

「小汚い女が!我々もそこまで弱くない!取り押さえるぞ!」

「行くぞ!うおぉぉぉっ!!」


勢いよく走ってきている鎧を着た男二人。相手が女だからと言って油断はしていなかった…していなかったのだが…相手が悪かった。


「確かに剣という武器は強い、相手が武器を持っていないと言うのもあるかもしれんがうかつに近づけば痛い目を見るぞ?こんな風にな!ほれっ!!」


着ていたボロボロのドレスを破り捨て隠れていた肌を露出させた。いきなり目の前で下着姿になるのを目撃し戸惑う男二人……一瞬だけ戸惑ってしまった。彼女からすればその一瞬で十分だったのだ……。


「な、何をして…はっ!惑わされんぞ!」

「このくらいで止まるものか!」


突撃したのはいいが目の前にいる女に向かって振り下ろされる剣はかわされてしまった。もう一人の攻撃も余裕でかわされてしまう。かわされた後に二人は腕を掴まれそのまま地面へと倒されてしまった。


「ぐはっ…素手で男二人を、しかもこちらは鎧まで着ているんだぞ」

「力が人間じゃない…こんな変な女に負けるなんて…体が全然動かない…」


地面へと倒れた二人は立ち上がろうとしても体が重く全く動かない。まるで巨大な何かに体を押さえつけられているかのようだ。


「ふむ、残念だがお前たちにもう用はない。ここまで弱いと持っている情報も少なかろう。欲しい情報は外で得るとしよう、我に挑んできた褒美を与えよう、まさか褒美を捨てて逃げるなどせんよな?〘性となる器(エーロズ)を捕らえ(トルト)欲に(ヨウ)落ちろ(ラクマ)止める者おらず(ラルトナータ)止める事叶わず(ラルトワトメーカ)快楽へと誘え(サイカーラトド)ラビットサークル(ラゥストサーラ)〙」


紫色の輪が一瞬二人の男に当たりすり抜けるとガクガクと震え始めその場に倒れた。苦しそうな顔をしたり気持ちよさそうな顔をしたりし最後にはその場に倒れ込んだ。久しぶりに使ったので少し制御を間違えたようだ。息はしているので死んではいないな。


「ふむ…かなり力が落ちているようだ。封印された他の者達も目覚めているのか……まだ封印されているのか、まぁ我には関係ない事か。外に出て現状確認をするか」


裸足でスタスタと祠の出口へ向かった。外は封印される前の状況とは違う事にすぐ気づいた。我の知っている大地は元々巨大な木々が生い茂(おいしげ)っていたはずなのだが。今は見る影も無かったのだ。


「ここは本当にあの森なのか、エルフの一族が管理していたはずだが何故どこにもその痕跡が見当たらぬ、アラトルシャにでも襲われたか?それとも人間によるものか?取り敢えず我が住んでいた城に行ってみるかな……まだ残っている事を願いたいが……それにあの者達も居るとしたらそこであろう」


飛んで行くことも出来るが流石にこの格好で飛ぶのは…我は痴女では無い!いくら死ななくとも精神が死んでしまう…。我は別に新たな扉など求めてはおらぬ。……この気配は人間…それもかなりの人数だ。さすがにこの格好で見つかるのは避けたいので霧化(きりか)し姿をくらませた。


霧化は身体を霧散させて物理的攻撃を無効化する時に使う。姿が見えなくなるが長く生きているエルフには見破られる事が多い。霧化は特定の種族にしか出来ず真似しようとすると身体が弾け飛び死亡する。昔人間が試した結果血と内臓をバラ撒く出来事があった。


「霧化も久しぶりに使う、初めて使った時ははしゃいで色んな場所に忍び込んだが、何となくメイドのベロニカの部屋を覗いたら一人でお楽しみ中だったのをよく覚えている……あの時は申し訳なかった…っと思い出に浸っている暇は無いな、思い出という思いでもないが」


少し離れた丘から聖職者のような恰好をした者と護衛の騎士達であろう者達が祠に近づいてきていた。我は霧化しているのでそうそう見つかる事はないが中にいる者は見つかるであろうな。それに、中にいる鎧と今来ている騎士の鎧は違うものなのだな。昔も聖職者や騎士は居たが今の人間達は少し弱体化しているのか?


「どうやら何者かが我らより先に侵入したようだな、カルロスは数人を連れ見て来い」

「わかりました、神官様はこちらでお待ちください」

「気をつけて言ってくるのですよ、どうも周りから嫌な気配がこちらを見ているようなので」

「はい、では行ってきます。ライラック隊長もし何かあったら俺達を置いて神官様を連れて逃げてくださいね」

「もちろんだ!っと言いたいが仲間を置いて行けるほど人間をやめてはいない、それに我々はあくまで調査に来ただけだ、必ず生きて帰るとみんなと約束しただろ?」

「ははは、そうでしたね!」


カルロスと他四人の騎士は祠の中へ入っていきました。外で待っている神官と残りの騎士は周囲を警戒しながら祠に入った五人を待ちます。ほんの数分待つと祠の中から出てきた騎士達だったがこの国では見覚えのない鎧を着ている二人をどうにか引っ張ってきたようだった…。しかし、とても臭う…どうやら色々漏らしているようだ、サキュバスにでも襲われたのか?とも思ったが気絶しているだけで生きている事がわかった。取り敢えず何とかして連れて帰るとするか…。かなり臭うので正直そばに置いて置きたくないが仕方ない。耐えなければ…。鼻をつまみたくないがこれは……。


「こ、この二人以外何か異常はあったか?」

「い、いえ……この二人は何かと戦闘中だったのだと思われます、近場に剣が落ちていたので、ですが戦ったような跡は見られず一方的にやられたのではないかと」

「可能性はあるが、祠に封じられている謎の魔物に精を食われたとも考えられなくはないか、神官様は何かわかりますか?」

「そうですね、あの祠に封じられているのは八つの災厄が封じ込められていると伝わっています。昔の勇者様はかなり苦戦し女神の助けを受け封印に成功したと伝わっています」

「なるほど…まさか今の勇者によって封印が解かれるとは思ってもいなかったでしょうね、まぁ洗脳の痕跡がみられたのでその洗脳をした何者かを捕えなければ続くでしょうね」

「そうですね、一度帰還しましょう、この二人の事も聞き出さねばなりませんからね」


神官と騎士達は来た道を警戒しながら帰って行きました。倒れていた二人も連れて。後ろ姿が見えなくなるまでその場で待ち完全に見えなくなった後に霧化を解き姿を現した。


「なるほど、現代の勇者が我の封印を解いたか……、褒美を与えたいが場所がわからぬ、それよりもまずは帰るべきか、ずっとこの格好という訳にもいかん……それよりかなり臭いな……昔の勇者が臭いものには何とかと言っていたが何だったか…」


かなり離れてはいるが山頂にある城にさえ帰れば着られるものは残っているはず、と思いたい。

人気(ひとけ)が無くなったら空を飛びできるだけ見られぬように昔住んでいた住処へ飛んだ。


「こんな格好を見られてはさすがの我も恥ずかしいからな、誰も見るなよ、見たら殺すのみだが」


できるだけ全速で飛び住処であった城へ到着した。特に壊れていることもなく綺麗ではあったがコケがかなり生えている。後で綺麗にしなくてはっと思った。


「人の気配はさすがにないか、この城の扉も我か我の使用人達しか開けられぬようになっているからな。さて、城の中は……っと」


中は少しホコリはあるがかなり綺麗だ。かなりの年月が流れているはずだがここまで綺麗という事は、居るな。我は取り敢えず城の中を隅々まで見て回った。見て回るのは昔からやっていた事なので得に苦ではない。城の中を全て見たが何故居ないのだ?仕方ないので自室へとトコトコ足音を立てながら向かう。

足音を立てなくてもいいのだが、誰かが入れば自ずと寄ってくるだろうと。周囲の気配を探っているが気配がない。とすれば買い出しか?


「結局誰にも会わずに自室に着いてしまったでは無いか!せめておかえりなさいませくらい欲しかった…妙に我の部屋だけ綺麗にしてあるな、今思い出したが……我下着姿では無いか……久しぶりに帰って来れて浮かれていたが逆に誰にも合わなくてよかった!昔から何かに集中すると他のことを忘れてしまうのがな…」


…新しい下着を探そうと思ったがいつもベロニカにやらせていたので何処にしまってあるのかわからん、手当たり次第に探してみるか。そうと決まれば閉まってありそうな場所を手当たり次第に引っ張り出した結果……部屋が汚れた。それに、既に下着を脱ぎ捨ててしまっているのでどこに埋まっているのかわからなくなってしまい…全裸……決して痴女ではないぞ!?違うからな!……我は誰に言っているのだ…。


「あ……あれ?こんなはずでは、こんな所をベロニカにでも見つかったらかなり怒られる……か、片付けなければ」


そう思ったのと同時に扉に気配を感じた。ばっと振り返るとそこにはメイド姿の女性がたっていた。扉は開けっ放しにしていたので丸見えだったが、我はそのメイド服を着ている女性に見覚えがある。と言うか見覚えしかないのだ。


「えっ……ベロ…ニカ…?」

「はい、永き眠につかれていたと聞いていましたが起きたのですね、それと姫様の呼ぶ声が聞こえたので来ました」

「に、偽物じゃないだろうな、本当に信じてもよいのか?」

「そんなに心配でしたら姫様がどんなお人かここで暴露いたしましょう」

「暴露だと!?本物なら出来るだうが……本当に?どんなこと暴露するつもり?」


内心ドキドキするがまだ本物と決まった訳じゃない、話を聞いてからでも……。もし本物だったら……暴露が心配でしかない。


「では、あれは姫様がお父様とお母様を亡くされた後の事です、永遠の命を望んだ村人たちを一人一人さらっては殺しを繰り返して村を壊滅させましたね」


合っている、合っているがこれだけでは信じられい。知っている者がいても不思議は無い。人間は傲慢だ、永遠の命などあっても必要なのないはずだ。人間は魔力が一定しかない為魔力を増やすため魔力の高い魔物を食べたり高位の魔法使いが作れる魔力の血を飲む事で魔力の上限を上げられると言われていたが、あんなもの迷信だ。確かにまれに魔力が上がった者も居たらしいが一時的だと聞いた事がある。


「納得なされてはいないと言うお顔ですね、それでしたらこれはどうでしょう?私と姫様しか知り得ない事です」

「は、話してみよ」

「いつもお手洗いに行く際には必ず私を連れて扉の前で待たせていましたね」

「そっ、それは……」


確かにその事はベロニカしか知らない…。別に怖くなどないぞ?ただ…ただ寂しくないためだ!


「他には私が自室にいる際に覗きに来ていらしてましたね、霧化をお使いになって」

「あ、あれは……えっと…」

「他にも私が…」

「もぅわかった!ベロニカは本物だ!お願いだからこれ以上はやめて……わ……私の心が折れるからぁ…」

「やめます、昔の可愛らしい口調に戻ってしまいましたね」


ベロニカはくすっと笑う、嬉しそうに姫様を優しく抱きしめた。姫様も暖かな温もりに抱かれ安心したのか頬を赤らめながら少し強く抱きしめてきてくれました。


「姫様が我って言い始めたのってかっこいい吸血鬼になるって言い始めてから変えましたよね?正直に言わせていただきますと……姫様には似合いません」

「がーん……で、でもかっこいいじゃないか!そ、それに強そうだし!」


人間の世界だと偉い人はよく我って使ってたもん!それなら私が使ったらカッコよく見えると思ったんだもん!でも口に出すと絶対…姫様の頭の中はお花畑なのですねって言われるのがオチだよね。


「確かにかっこいいとは思いますが姫様は可愛いの方がお似合い出ないかと思われます、口調を変えなくても姫様は姫様ですしかっこよく可愛いお方ですよ?無理に格好つけると残念なお方になるかと」

「そっ、そうか……って誰が残念かっ!!」

「姫様です」


そんなきっぱり言わなくてもと思ったがベロニカらしいなとも思った。言いたい事は普通に言うから最初の頃は少し嫌いだったけど、ベロニカは素直なだけなんだって気が付いたらそれほど嫌じゃなくなって今の関係になったんだよね。


「そう言えばあいつはいないのか?」

「ザクロですか?あ、私は姫様に呼ばれた気がして転移で来てしまいましが置いてきてしまいました、まぁザクロなら平気でしょ」

「ザクロなら死にはしないと思うが、ザクロは昔からよく分からないんだよねぇ」

「それはわかりますが、こちら姫様の下着と新しいドレスでございます、そのままじっとしていてくださいね」

「はーい、なんかこの感じも久しぶりだ」

「私も嬉しいですよ、また姫様のお着替えさせる事ができて」

「ん?もしかして私ってダメダメだったりする?」

「私の口からな言えませんが…私は嬉しいですよ?姫様のお身体がいつも見れますし…ウヘヘ」


嬉しいんだけど…なぜ鼻息が少し荒い…たまにベロニカはこうなるんだよなぁ。同性だから別にいいかな?


「着替え完了です」

「うむ、これで出歩いていても平気だな」

「姫様はもう少し言葉遣いを…」

「無理!言葉遣いの原因を作ったのはクロのせいだから」

「ザクロのせいにしてもいいですが本人が聞いたら傷つきますよ?」

「そうだぜ?俺だって傷つくんだぞ?泣いちまうぞ?」


急に男の声が扉の前でした。先程から話に出ていたザクロ、ザクロオルタ。一応この城の護りと私の護衛をしてる人だ。いつ聞いても声はかっこいいのに顔は頑なに見せてくれない。何故かいつもマスクをしている。因みに日替わりでマスクが変わる。


「その声はザクロか!」

「その通り!姫さんも永い眠りからおはようさん、それと扉開けてもいいか?レディの部屋にノックや声かけなしに入るのは失礼だからな」

「どうぞ、ベロニカはノックしようにも部屋の扉空いてたからね」

「それじゃ失礼するぜぇ」


扉が開くと何とも言えないマスクを付けたザクロがいた。


「ザクロ…何その何とも言えないマスクは…」

「これか?かっこいいだろ?市場で売ってたから買ってつけたんだが」

「我はかっこいいと…思う…ぞ?」

「無理して言わなくていい…逆に悲しくなる」

「じゃぁ…似合ってない!変だ!かっこよくない!」

「うぐっ…これは中々ストレートだなっ」


ザクロは少しションボリしていたがすぐに立ち直った。だってあのマスクはどこからどう見ても似合ってないのだ、真っ黒で不気味なマスク…呪われているんじゃないのかって思う。


「それで我が封印されてた間どうなっていた」

「姫様が封印されていた間、何度か戦争が起こり消えた国もありますし災害級の魔物に滅ぼされた国もありますね」

「だな、俺からすればどうでもいいんだけどな」


ザクロは基本自分以外はどうなってもいいみたいだけど何故かベロニカと我だけは好かれたみたいなんだ。ザクロは謎が多いが基本いい奴だ。


「そういや買い物中に子供が俺から盗みをしたから始末しといた」

「そう、まぁしょうがないわね」

「盗みか、未だに豊かにはなっていないのか」

「残念ながらな来る事はないだろうな」

「そうか…」

「ザクロ始末した瞬間はみられていないんだろうな?」

「当たり前だっ!周りからすれば転んだように見えていたと思うが首の骨をへし折ってやった、倒れた瞬間血を吐きながら痙攣してたぜ」

「殺すなら一瞬で殺してあげてもよかったんじゃない?」

「それでもよかったんだが、その子供からかなり血の匂いがしてたんでな…ありゃ何人か殺してる感じだ」

「なるほど、相手がザクロだったのが運がなかったですね」


ザクロもそうだがベロニカも喧嘩を売られたら大半始末しちゃうんだよなぁ。そういう我も同じだが…。嫌味を言う奴がいた時は相手の口の中に突き手をして殺したりしたものだ。正直汚いからあまりしたくないがイライラするとついしてしまう。


「話は変わるが勇者が召喚されたみたいだな」

「勇者ですか?そう言えばアカラントで召喚されたとか聞きましたね」

「俺も聞き覚えはあるがまだ子供だって話だぞ?全く何考えてんだかね」

「昔居た勇者は青年でかっこよく誰にでも優しかったが今の勇者はもう別なのであろうな」

「そうだろうな、敵対さえしなきゃいいだけの話なんだがな」


確かに敵対さえしなければいいが勇者はこの世界の常識を知らぬ場合もある。


「そうですね、私は姫様以外今の所興味はありません」

「我は暫くはここに居るとするかな、情報集めは…我の専門では無いな…宝物庫の整理でも久しぶりにするかな」

「宝石や金貨とか姫大好きだもんな、宝物庫がいっぱいだから集めるの止めてくれって言っても何処からか拾ってくるんだからな…」

「いいではありませんか!姫様の可愛いところの一つなんですよ?」

「やはり女の考えはわからん…」

「ボソッと言っても聞こえてますからね?全くそう言う男の考え方も分かりません」

「そうだそうだっ!ザクロだってマスクいっぱい集めてるじゃん」


ザクロは昔からマスクを集めているので部屋が埋まるほどある…前に理由を聞いたら男はマスクに憧れるものだっとか意味不明な事を言っていた気がする。


「アレは…アレはいいんだっ!マスクは素顔を隠すカッコイイ道具なんだぞ?」

「ベロニカ?あれカッコイイと思う?部屋にあるのも含めて」

「姫様に同じく残念ながらこれっぽっちも思いませんね」

「バカな…なんでこの良さがわかんねぇんだ?俺がおかしいのか?いや…これはきっとマスクの試練だっ!周りを認めさせてこそっ……」

「姫様行きましょ、聞くだけ無駄です」

「そ、そうだな、趣味にとやかくは言わぬが我も素顔を見なければ忘れてしまうぞ?」


姫様の言葉でザクロはマスクを取るか取らないか考えているみたいですね、でも実際ザクロのマスクはかなり厄介な代物だから私が手を出せるものでもないですし。


「わかったよ、脱ぎゃいいんだろ?ちょっと待ってろ…このマスク呪われてるから外しにくいんだよ」

「えっ?……今呪われてるって言わなかったか?」

「言いましたね…何で呪われている物を…」

「そりゃ、呪われたマスクや仮面は謎の力がありそうで強そうだろ?っと取れた」


マスクが取れると素顔になったザクロの顔が、イケメンとも言えなくないような、普通とも言えなくもないような?正直平凡。


「姫さん?なんかちょっと傷つくこと考えてないか?ベロニカも…」

「あ……いやぁ…ザクロの目は黒目なんだなって!」

「私もてっきり赤目かと思っていました」

「充血すれば赤くはなるけどな、てかもういいか?あまり素顔を晒していたくないんだが……俺に惚れるなよ?」

「……マスクしてよし!」

「…傷つくぜ…それじゃ違うマスクをつけるかね」


ザクロはマジックバッグを取り出した…まさか……まさかね?我は気になる事をザクロに聞いてみた。


「そのバッグの中身ってまさか…」

「こりゃマスク専用のマジックバッグだ、姫さんも欲しいなら作るぞ?」

「えっ遠慮しておくよ…」


ベロニカと顔を見合せ苦笑いするしか無かった。と言うかマジックバッグ作れるのか、あれは昔なら作れる職人がいたが今はどうか知らない。


「取り敢えず食事でもしたいな、ちと空腹だ…」

「では食堂でお待ちください、すぐにご用意してきます」

「それじゃ俺は荷物置いたら見回り行ってくるわ、姫さんちゃんと食わなきゃ大きくなれねぇぞ」

「……どこを見て言った?」

「……知らぬが仏だ…さらばっ!」

「ちょっ……大目に見てやるか」


食堂に向かう途中でザクロと出会った時のことを思い出した。ザクロは昔無限の顔を持つ男(イフマ)と呼ばれていたり支配者(ブラックロード)と呼ばれたりしていた。表では無能を演じ裏では完璧を演じる、殺しと暗殺をザクロはしてきた。殺されていくのは貴族や王族の裏組織などを人知れず始末していたらしい。ある程度は表に情報は流れてこないから調べるのに苦労した。その頃からマスクや仮面をつけていたらしい。裏の人間ほどマスクをつけたザクロを恐れている。戦った事はあるが決着がつかなかった。ベロニカはザクロには勝てなかったし、そもそもザクロの強さが全然わからぬ。手を抜いているような感じもあるが本気で戦っていたらどうなっていたのだろうか?


「試せたら試してみるか」


食堂の扉を開けて中に入ると何故かもう料理が置かれている…いくらなんでも早すぎないか?!来るまでに10分言ったか行かないかだぞ?


「ベロニカ、流石に早すぎるぞ」

「いえいえ、姫様には早く召し上がっていただきたいので頑張りすぎちゃいました…てへっ☆」

「ベロニカが壊れた…昔はこんな事言わなかったはず…」

「姫様、これが流行りなのです」

「流行りなのか…ならしょうがない」

「お席でごゆっくりお食事をされて下さいね」

「うむっ」


久しぶりの食事に体も喜んでいる。食事は血液でなくても平気だが血液はその人物によって美味さが変わる、まずい血液は本当にまずかった。と言っても無闇に血を求めたりはしない、必要な時にちょうどよく罪を犯している者を仕留めて飲んでいるだけよ。誰にも迷惑はかからんであろう?


「姫様お食事はお口に合いましたか?」

「久しぶりに食べたが腕は落ちていないようで安心した、とても美味しかったぞ」

「ありがとうございます、姫様に喜んでいただけてとても嬉しいです、最後にオムレツを作りましたのでこちらもどうぞ」


オムレツ…私の好物でベロニカが作るものが一番美味しい。他の場所でも食べてみたが……パサパサだったりあまり美味しくなかったのを覚えている。


「美味しそうな匂いだ、いただくとしよう」


オムレツにナイフを入れると黄金に輝くかのように美しい。そしてこのとてもいい香り、出来ればずっと食べていたいがベロニカに怒られるので言えないな。切ったオムレツを口に運んだ、フワフワのトロトロで美味しい以外の言葉が見つからない。


「そうか…我はこれを食べるために復活したのだな…」

「流石にそれは違うかと思われます」

「……そういう事にしておいてくれないか?」

「無理かと思われます、それと口に入れながら喋ってはいけませんよ」

「す、すみません…」


残ったオムレツを黙々と食べ終えすっごい満足だ。昔の勇者が色々とレシピを残して置いてくれたのもあるが、やはし本人に作ってもらっていたあの時が忘れられんな。思い出の味だ……。


「このオムレツを食べると勇者を思い出すな」

「そうですね、あの方に教えていただいた料理はかなりありますからね」

「しかしもう会う事は出来ぬのか…寂しさもあるが……、そう言えば我が封印された後の勇者はどうなったのだ?」


ベロニカに(たず)ねるとにこやかだった顔が少し暗くなり話してくれた。


「その勇者なのですが……」

「死んでいると言うのはわかっている、天命を全うしたのか?」

「それが……その…………暗殺…されました」

「は?…暗殺だと……?あの勇者が?」

「はい、私も見た訳ではありませんがそう聞いております」

「誰が差し向けたのかはわかっているのか?」

「それはわかっていますが現在はその者もこの世におりません」


大体は想像がつく…人族のお偉い者が邪魔に思ったか又は脅威になりうると感じて始末したのだろう。


「勇者も無念であろうな」

「そうですね、この地に勝手に召喚され最後には始末されるなんて」

「……暗い話はおしまいだっ!話題を変えねばな、ベロニカよ先程から気になっていたのだが離れた場所からこちらに向かってくる気配があるのだが」

「確かにありますがザクロが対処してくださるかと」


確かにザクロなら対処できると思うが、この気配知っている気がする。でも何処で……?思い出せない。気配はどんどん近づいてくるがザクロに反応が見られない事から敵対している者ではないのか?


「少し出てくる」

「わかりました、では外出用の…」

「いらぬ、庭に出るだけだから必要ない」

「姫様…お気をつけて」

「うむ」


かっこよく決まったはずなのにベロニカの顔は少し呆れているような気がする。そんなことは今更気にしてもしょうがない!取り合えず庭に出るか。


「ザクロこの気配は無視してるけどいいの?」

「ん?姫さんか…別に無視してるわけじゃないが正直手を出したく無くてな」

「はぁ、どうして?」

「この気配からするに相手は闇鴉(ヤミカラス)だろうな」

「や…闇鴉だとっ!?まさか何か恨みを買ったのではあるまいなっ!」

「そんな事するわけないだろ」


そうだよな、いくらザクロでもあの闇鴉に手を出すほど馬鹿ではない。と言うかこの周辺は奴らの縄張りじゃないだろ!なんでいるの!?そもそもなんでこっちに向かってきてるの???


「姫さん…今すごい顔してるぞ?大丈夫か?」

「ふん、これくらい平気だっ!我を誰だと思っているのだ!」

「…ちょっと頭のおかしい姫さん…」

「ザクロよ…小声で言っても聞こえておるからな?あとで覚えておけ」

「あははは…マジ?」

「…」

「あ…これマジな奴だ……」


そんな事をしている内に闇鴉が目の前まで来た、姿形は昔と変わっていない。たった千年くらいでは変わらないのか?


「ふむ、懐かしい気配があった出来てみればやはり貴女でしたか…色欲の吸血鬼(ラルビナ・ソフィア)


な…なぜ闇鴉(こいつ)がその名を知っているのだ!?


「お前…昔何処かで会っていたか?そうでなければその名を知っているはずがない」

「姫さん…その名前俺知らないんだが…」

「今はザクロに構ってられん!答えろ!」

「はぁ…昔会っていますし貴女を何回も返り討ちにしたと言えば思い出せますかな?」

「姫さんを返り討ちに…何しでかしてんですか…」


返り討ちに…もしや…あの時の…?


「その顔どうやら思い出せたようですな」

「あぁ、嫌でも思い出したわ!それで?今の弱体化した我を叩きのめしにでも来たのか?」

「クックックッそんな事しませんよ、我はただ見に来ただけですので、それに手を出すなら我が主に許可をもらってからでなければ出来ませんからね」


んんっ???今こやつ我が主って言わなかったか?……聞き違いか?きっとそうに違いない、こやつが認めるほどの奴がいるわけ…。


「信じがたいという顔ですな、残念ながらウソではありません。それと忠告に来ました、我が主のいる森に手出ししない事をお勧めする、下手をすれば貴女の命が本当に消滅しかねませんからね」

「それは脅しか?我は不老不死だぞ?いくら殺そうと死ぬことはない存在なのだ」

「そうですね、ですが魂そのものを破壊されたらどうですか?」

「姫さんここは言う事を聞いた方がいいかと思うぜ?流石に魂を破壊されちゃ復活できるのかも怪しいしよ」


確かにザクロの言う通りだ…今まで魂を直接破壊されたことはない、ないが魂の一部でも残っていればそこから体の再生は出来る。人間達はこの力を求め我に挑んできたくらいだからな。


「わかった、ここは言う通りにしておこうではないか…それにしてもおぬしの主はかなり強いのだな」

「そうですね、ちなみに今この状況もご覧になられておりますよ」

「なっなんだと!?いったいどこから見ているのだ!」

「俺の索敵にかからないって事はかなりの距離がある…又は完全に気配を消しているって事かよ」

「わ、わかったぞ!さては嘘だな?我をからかっているのであろう?」

「そう思うのは自由ですが敵対しない事をお勧めしますよ、それと主はあまり人間を信用していませんのでちょっかい出すのはおやめくださいね?」


誰がちょっかいなどかけるか……それと人間が嫌いと言っていたが何かされたのか?人間は確かに厄介な生き物だからな。


「わかった、敵対するつもりは無いがそちらの主と協定を結びたい」

「協定ですか…少々お待ちを」


闇鴉は少し黙ったあと話を続けた。


「確認を取りましたが協定を結ぶことはいいらしいですが、主からこちらに来るようにと」

「なるほど、わかったが何処に行けばいいのだ?」

闇深き森(ダークフォレスト)と言えばわかりますか?」

「何処だそこは?」

「そこなら俺が知ってるぜ、昔魔法都市があった場所だろ?だが俺らじゃ入れねぇぞそんな場所」

「ザクロよ、なぜ入れないのだ?と言うか今は無いのか」

「無いな、あの瘴魔狼(ベグ・ウルフ)に一日で滅ぼされちまったらしいからな…生き残りは0らしい」

「そうであったか…失礼な事を聞いた、しかしそれでは中には入れんな」

「そういうと思われましたので手前で話すとしましょう」


手前というのはあの硬い森か、あの木は叩くとめちゃくちゃうるさいのは覚えている。……と言うかこの闇鴉の主は瘴魔狼(ベグ・ウルフ)の瘴気が残っている中で生活しているのか?


「場所がわかったのであれば我はこれにて失礼する、突然の訪問ここに謝罪する」

「それはよい、我も暇ではあったからな」

「行くのは決定したがいつ行くんだ?」

「あ……決めておらんかった」

「そうでしたね、主はいつでも平気と仰っていますが」


あちらはいつでも平気か…こちらは少し準備をしておきたいしな。一週間後でも平気か尋ねてみるか。


「一週間後と言うのは平気か?我も行きたいのは山々なのだが封印から目覚めたばかり故少し待って欲しい」

「なるほど……主から許可が出た、では一週間後またお会いしましょう、目印の魔法を打ち上げますのでそこに集まっていただければと」

「承知した、一応気をつけて帰るがいい」

「お心遣い感謝…では」


黒い羽をバサバサと羽ばたかせ去っていった。


ふぅ…やっと行ったか……まさかあの時の闇鴉だったとはな、昔よりかなり強くなっている気がするがあやつの言う主に謎があるということか。

投稿が約2ヶ月ちょい経ってしまいました。言い訳になりますが忙しさと疲れで時間の感覚がズレていました。多分これからも少し投稿が空いてしまうかもしれませんがお待ちいただけると幸いです。

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