六星 ダンジョン脱出
どうも、学校を卒業したものです。
さて現在俺は第四層にいます。まあ若干の駆け足気味でここまできたが流石にこんな呑気にしてたらクラスの奴らに何か言われそうだからな、主に大久保さんとかに。
あ〜クソまずい。こんな肉なんかよりトンカツとか食いたい。料理もまともにできない環境下の中いい加減に飯が食いたい。早く地上に出て街を目指したい。
地図があってよかったよマジで。おっ、あったあった。ダンジョンでは階層移動は階段なんで、見つけやすいんだよな。うん?なんか話声が聞こえる。冒険者か?
「だからさここで引き返そうよ、みんなもうこれ以上戦えないよ!」
「うるさい!あんた達は私の言うことだけ聞けばいいのよ、能無し共!」
「無茶したって、死ぬだけだろ。なぜわからないんだ」
「うるさい!」
喧嘩か?男の声と女の声が二人分聞こえる。内容的にこの階層に行くか揉めてるっぽいが、些かリーダーらしき奴が独断で突っ込もうとしているのをもう二人が止めている感じだな。でもこんなに響いてくると魔物共が来そうだが…
ここはスルー安定だな、でもなんか嫌な予感がする。こうなんとも言えない、シャワーを浴びている時に水蒸気でモヤっとするそんな感じがする。うわー、怖。
「ちょっと、魔物が出てきたじゃない。あんた達が騒いだせいでまた戦闘しなくちゃいけないのよ。あんた達が片付けなさいよ」
「はぁ?何をほざくと思ったら、そんな頭のない事ばかりしか言えないのか。元はと言えばあんたが…」
「やめてよ、今は戦闘に集中しようよ。このままじゃ私たち死んじゃうよ」
完全にリーダーらしき奴のせいじゃねぇか。このままじゃ、この手記の冒険者さんと同じ末路を辿る気がする。でも助けたいと言えばなんとも言えないがみすみす見捨てるなんて事をしたら目覚めが悪いし。う〜ん困ったもんだ。こうなったら体に任せてみるか。
「くっうううううう!」
さっきのリーダーらしき奴が何か唸り声をあげている。傷でも負ったか?まぁもうどうでもいいや。体はもうすでに助けに向かっているし。
「誰?」
颯爽と登場。これは漫画とかだったら主人公の前に颯爽と現れ、主人公を助けてくれる強キャラのようなそんな感じで勢いよく出たはいいが、後ろの人たちは人間じゃないな。だって耳が尖った人間なんて見たことないし。まあなんとなくエルフとかそこら辺のファンタジー種族でしょうね。
さて集中集中。相手はあっ、前に倒したことがある黒狼共じゃん。だったら何をしてくるかは大体わかるな。取り敢えずまぁ横の奴から倒すか。左からとびかかっるのを刀を抜いて合わせて縦に真っ二つに斬る。俺が背中を向けたので噛みついてくるだろうと振り向きざまに下へ真っ直ぐ刀を突き立てタイミングよく下へ下ろす。残るは二匹…と思ったがあいつら逃げてった。根性なしが。俺は血が付いた刀を自分のズボンで拭き、鞘へ戻す。前に血がつき過ぎて上手く斬れなかったことがあり、それ以降から服で血を拭く癖が出来たのだ、汚らしいことこの上ない。
「あ、あの助けてくれてありがとございます」
「えっと、どうお礼をすれば良いか…」
「気にしないでください。俺はこれで「待ちなさい」
なんだよ俺がクールに去ろうとしているというのに、俺を引き止めるなよ。さっさと脱出したいんだよ。つかお前に呼び止められる事はしてねぇよ。
「あなた、なかなか強いじゃない。私達はこれから次の階層に行くのついてきなさい田舎者」
「ちょっと待てよ、俺たちは一度も次の階層に行くなんて言ったないぞ。それに助けてもらった人にそんな態度をとるなよ」
「うるさいわね、私の言うことが絶対なんだからあんた達に拒否権なんか無いのよ」
「自分一人じゃ何もできない癖に偉そうに…」
また始まったよ。これじゃ話が平行線じゃないか、よくこんな人とパーティを組んでいるもんだな。今のうち進むとするか。そろそろと忍足で進んでいると、後ろから声を掛けられたので振り返った。
「今回はありがとございました、またどこかで」
「はい、そうですね。それでは」
また会うかもしれないが世界は広いんだそうそう会う事はなさそうだと思うけど。後ろの怒声が遠のいていくのがわかるぐらい走ってきたが、少し空気が軽くなってきた気がする。それに視界も明るくなってきたな。
それから三層、二層と上がって行き、もうすぐここから出られる所まで来た。
「長かった、本当に長かった。もうあんなクソまずい肉とはおさらばだ」
今思えば魔物の肉以外の食の記憶が薄れいてくようだった。さよなら肉よ、もうその面見せてくるな。お金とか持って無いせいで飯買えるかどうか分からないが、ファンタジー世界なんだ冒険者ギルドとかあるんだろうさきっと。いや待てよ、バックの中にもしかしたらお金が入ってるかもしれん。一回調べてみるか。
火打ち石、ナイフ、地図、よく分からん瓶が二つ、空の袋、布、それとじゃらじゃら鳴る袋を発見。お金に違い無いだろうと袋を開けると、銅色と銀色がいっぱいあった。後たまに金色も混じっている。これはあれだ絶対銅貨や銀貨、金貨の類だな。しっかり見てみると真ん中におっさんが彫られていて裏をみると何か小さく文字が彫られている。貨幣の種類によって振られている人が変わっているのが面白い。銅貨はおっさん、銀貨は女の人、銀貨は女の人だった。しっかしこれで外へ出ても暫くは困らなそうだな。心配もなくなったしさぁ、いざ行かん。
目の先には石で出来た扉がある。ふらふらと今までノンストップに近いぐらい外を目指して来たせいで、疲れで足が動きづらくなってきた。だが、ここで倒れてしまっては魔物に喰い殺されるんだ、耐えろ後もう少しだ。まただ、また魔物が出て来やがった。俺がそんなに好きか?そんなに食いたいのか?お前たちに構っている暇はねぇんだよ。まだMPは残っている戦いから俺は『逃げる』。
「星透」
魔物が俺を噛みつこうと口を開け、牙を向けてくるが通じない。また噛みつこうとする、学習能力がねぇのかこの野郎。いや考えるな目の前の扉に向かって走れ、いつまで持つか分からないんだ。肺が苦しい、汗が大量に流れる。後もう少し、大体400mぐらいなんだ走れぇえええ。一気に何かが抜けていく感覚がする。多分きっとMPが切れたんだと思う。だが。
「知るかよ、そんなの!!!」
後ろからわんわん聞こえるが振り向かない。
「ようやくここまで来たんだ、これで脱出出来ませんでしたとか洒落にもなんねぇ」
「だが、どうしたものか開け方が分からん。取り敢えず押してみるか」
一見、重厚そうな扉とは違い発泡スチロールかの如く軽く力を入れただけで開いた。目の前には少し松明とは別の光が石で出来た階段を光さしていた。また鳴き声が聞こえる。少しゆっくり過ぎた早く光の方へ行こう。そう思い、松明を投げ捨て階段を駆け上る。新鮮な空気、鳥の鳴き声と目の前に広がる緑の世界。俺はついに出て来れたのだ、嬉しさで涙が出そうだ。ふらふらと歩いていく。まるで幽鬼かの如くふらふらと。
「何処か休める場所に…」
あれ?意識がなくなっていく…まだ此処で終われないのに…。
「あのー、大丈夫ですか?」
誰だ、女の人の声がする。落ち着きのある優しい声だ。ん?俺は確か意識がなくなってダンジョンの目の前で倒れたはず、冒険者の人か?それにしても声が一人だけだ。揺られている、この感じの振動はまるで誰かに重いものを運んでいるみたいな…。
目を開けると誰かに背負われている。長い金髪が太陽に当てられ、宝石みたいに輝いている。何故俺は背負われているんだ?
「なんで、背負われてんだ俺」
「あ、起きたんだ」
「君は?」
「私?私の名前はエリサ。君、なんて言うの?見たこともない服装してるけど」
「俺は…悠。一崎悠だ」
「ふーん。聞いたこともない名前ね、人間族ってみんなそんな変な名前なの?」
「分からん」
「人間族なのに?」
「知らないものは知らないさ」
「変な人」
「此処って何処かわかる?」
「変なこと聞くのね。変な人はやっぱり変なこと言うのね」
「まぁいいわ。ここはエルフの大陸、セントルム大陸よ」
「セントルム…帰れるかな」
「ん?なんか言った」
「いや別に。後さ、今更なんだけど、そろそろ降ろしてくれない?」
「ダメ」
「………」
「………」
「やっぱ降ろしてくれない?」
「ダメ」
「じゃあ、何処で降ろしてくれる?」
「村に着いてから」
ダメだ降ろしてくれそうにないらしい。てか村に行くのか、村に行くんだったら少しは身体を休めるかもな。