二十六星 崖落とし
どうでも良い話ですが、最近アニメのDVDやらBlu-rayを買い漁るのが趣味です。但し恋愛系、貴様は駄目だ
夜が明けた。俺はメリュモートに着いて行った。森の中に入り、唯真っ直ぐ歩く。特訓の為に着いて行っているが目的でもあるのだろうか?
「よし、着いたぞ」
少し先に渓谷が見える場所に着いた。周りに木々は無い。
「随分開けた場所に出たな」
「それで一体、どう言った特訓をするんだ?」
「ああ、まぁ任せろ」
「ほお、大した自信だな」
「なーに確実に貴様は強くなれるぞ」
ニッコニコで俺を見るメリュモート。ああ、嫌な予感しかしない。悪意の無い笑顔がよりそれを加速させている気さえする。
ガシッ。俺をしっかりと掴む。そのまま横に俺は放り投げられた。へっ?
「あああああぁぁあぁああああ!!!???」
「頑張って生き残れよー」
「ふざけるなぁあああこのクソ龍!!」
「…………まぁこれで死んだらその程度か」
………………あっぶねぇ!!ふざけてるだろあの龍。
ギリギリだった。右腕で落下の衝撃を耐える。正直右腕で防がなきゃ即死だった。
うわぁ片腕変な方向に曲がっててやば。まぁ反対方向にもう一回折ればいいけど。にしても暗いな。ダンジョンの時と同じぐらいか、日光もあまり差し込んではいないみたいだ。
メリュモート、多分あいつ特訓と称して殺しに来てるだろあれ。……脱出する方法考えないとな。魔法使えば良いか。
「氷の言葉、強化の言葉」
何も起こらない。イメージもしっかりしていたのにも関わらずだ。再び唱える。何も起こらない。………魔法が使えない。何故だろうか。別の方法を考えるとする。
…空気が綺麗だな此処は。上と比べて呼吸していて楽な感じがする。今は出る事が先決だな。
後ろからゾロゾロと何かが出てくる。魔物か。俺は迎撃体制を取った。
鳥型二匹と剣を持った骸骨一匹、鎧を着ているのが一匹の合計四匹か。魔法と言う手札が使えない以上ここはスキルで様子見か。
「星制」
「ん?あれ……」
発動しないだと?嘘だろ、致命的だろこれ!スキル使えなきゃ無理だ。魂鎮で対処する他無いか。どう足掻いても絶望だな。
「くそったれ、こうなったらやけくそだ!」
正直無闇に突っ込むのは愚策でしかない。圧倒的な不利、例え相手が俺よりもレベルが低かろうが人数的な有利さ、相手へのデバフとならばまぁ……死ぬしか道は無さそうだ。
せめてもの悪足掻き……案外死ぬ時って冷静になれるんだな。でも頭では分かってる事でも身体は…心は何処か勝てるなんて感じる。ああ……馬鹿だな俺は。
骸骨が俺に向かってきている。鳥共も上空から俺を攻撃するだろう。動きは見えるか……骸骨の剣を受け止める。重たいな……直感で分かるこれはレベルでも負けてるな。背後から爪による鳥の攻撃。痛い……。
そこから攻撃は勢いを増して、俺はただ痛ぶられ続けた。見事な連携だな……何も出来ない程に嵌められているな。…………。冷静か?冷静に死を待つだけなのか?………。怒りだこれは。殺したいんだ。そらそうだよな。自分をこんなにも痛めつけられてそら怒るよな!やっぱ馬鹿だ俺。冷静ぶってただの馬鹿だ。自分の気持ちにも気付かねぇ馬鹿はよ………。
「素直に暴れたらいいじゃねぇかよ!」
一瞬だった。俺のスキルが発動した気がした。いやスキル名を唱えていないのに俺は青い力を見たんだ!
周りに居た奴らは吹っ飛んだ。良いじゃん、好機到来か?まずは……あの鳥どもからだ。
「テメェら鳥はよさっさと焼き鳥になりやがれ!!」
吹っ飛んで墜落した鳥どもに飛びかかる。一番うざって奴は先に殺す。後々が楽だからか?まぁそれも理由か。だが大半はストレス。
「ぐぎぇえええ!!」
「五月蝿え!騒ぐなら死んでからにしやがれ!」
なんとか立ち上がろうとした所で首を断ち切った。言い様だぜ、次は人間の家畜になる事を推奨するぜ。
「さて、次は骸骨野郎。テメェだぜ」
魂鎮、お前は死に損ないに特攻らしいな。あれから考えたんだダンジョンで出会ったアイツが言ってた事をな。「そんなガラクタ」アイツにとっても不都合だった物。つまり特効がついてるって考察だ。さて合ってるかな?
カタカタと骨の音をたてながら俺に襲い掛かる。一瞬の勝負と行こうぜ?
縦振り、それを刀で受け流し、身体をぶった斬った。念には念をだな。頭に刀を突き立て刺す。よし。
さあ、ラストだ鎧。向かってくる鎧。ランス片手に突っ込みはまぁ基本的な戦い方だな。突きを刀で凌ぐ。横振りは鎧により防がれる。関節部分を狙うか?いや狙いづらい。ランスによる突きのラッシュ。防ぐ避ける掠ったか頬に血が馴染む。まぁ既にボロボロの血まみれなんだし変わらないが。
「ふぅ、打開案が思いつかねぇな」
星殴が使えたなら何も考えずに使えるんだかなぁ、今は優しくぶん殴る事なんざ出来ねぇし。あああ!イライラする!!なんで俺が必死こいて相手の弱点探さなきゃなんねぇんだよ!
頭は冷静で居たいのにストレスマッハで血管ブチ切れそう。なんなら力さえ湧いてくる。
全身が再び光に包まれる。俺の本能が言ったらぁ……今ならあのクソ鎧野郎をボコボコに殴れってな!
魂鎮を適当に投げ捨て突っ込む。蹴りを腹部に入れる。さっきまでの硬い鎧が揚げ物の衣みたくひびが入った。鎧は槍で俺の頭目掛けて突く。それを左腕で弾いた。槍は見事にあらぬ方向に曲がった。そのまま右手で腹部に攻撃。こちらは威力が出なかったのか先程のようにひびとまでは行かなかったが鎧を少し後ろに下がらせた。
唯サッカーボールを蹴り飛ばす様に攻撃するのでは無く、衝撃を内側へ。確実にダメージを与える方法。そんなのはなぁ…………死ぬ迄殴れば勝てんのよ。
我武者羅に殴れば良い、今は行けるからなぁ!!何もできない鎧を着ただけのカカシなんぞもう恐るるに足らぬ!
不思議なものだ、体力の少ない俺が10分だ。休憩もなく鎧を殴り続けられるのはおかしい、おかしい。体力の底が見えない。だがこれも終わりだ。
「これで終わらせてやる」
左拳に俺のありったけの力を込める。青色は濃く濃く鮮やかに澄んだ青へと変わった。俺は鎧を壁の方に蹴り飛ばした。
「くたばりやがれぇええええ!!!!」
めり込んだ鎧に対して全力の拳を叩き込んだ。壁は亀裂を作り地上、真横、地面まで広がった。瞬間鮮やかな青が鎧を消し飛ばした。消し炭その言葉が綺麗にハマる程本当に跡形も無く消えた。
「…………。終わったな」
「今どっと疲れが来たな………アドレナリンだったか?が出てたからかな?」
取り敢えずメリュモートは後で絶対に殴る。それは確実にやってやる。達成感もクソもねぇ程には今は何も感じねぇ。脱出の手立ては無い………か。とりあえず辺りを散策するのが良さそうだな。
この感じダンジョンを思い出すな。クソまずい肉を貪って、戦って……。楽しい記憶のように語ってるが実際は死にかけただけのクソみたいな思い出だがな。まぁ此処はダンジョンを彷彿とさせるが、決定的に違うのは俺に対してデバフ掛かりまくりのハードモードって事だな。
単にプレイヤーに対して理不尽を押し付けてきた挙句報酬何もないと考えると運営のプレイヤーへのリスペクトに欠けているな。此処ゲームじゃないけど。…………本当何も無いな……。
そういえば指輪の存在忘れてたな………。ステータスオープンと言った。だが、その声は虚しく響き渡るだけだった。
「これもかよ!クソったれーーーーーー!!!!」
異世界来てから少し異世界らしかったのに、現代の時変わらない程度に力が使えなかったとか笑えねぇ。何が目的なんだよあの駄龍!