二十三星 最古にして最後
語呂的に原点にして頂点みたいで気に入ってる
勇者達からの支援。もっと、もっと追いつけて無い。アナラーラに度肝を抜かせてやる。いつまでもヘラヘラと殺意が湧いてくる。でも目的は拘束。
「勇者様達!私が隙を作りますから、どうかアナラーラへの拘束をお願いします!」
「…アナ……ラーラ?」
頼みます、どうか私が殺してしまわないように。今の私は色々と考えることを捨てて戦闘に集中するしかないのです。
「なーによそ見してんの?」
「くっ!」
上から氷の剣が振り下ろされるのをなんとか止める。重い、片手で振り下ろされたとは思えないほどに。火炎の剣で剣に触れられない所為で受け止めきれない。流すしかないか……。
「あらら……そのままだったら叩き切れたのに」
「言ってくれるわね……そのふざけた笑いを止めてやる」
「へぇ……君程度で出来るとでも?」
「誰がいつから一人で止めるなんて言ったかしら?」
「あん?」
瞬間アナラーラが横に吹っ飛んだ。誰も一人でなんて言ってない。あんたが死ぬ程殺したがってた奴を忘れるんじゃない。龍の参戦。心強い。ここで疑問になるのが、じゃあなんで勇者様達は参加しないのかって話。勇者様達じゃ正直相手を出来ないと思う。それを言えばなんで私が出しゃばってんのよって話だけど、昨日聴いたレベルじゃ私の方が高い。
つまり勇者様達が相手をした場合、先程喰らった攻撃でさえ一撃で体力が無くなるでしょうね。良くても瀕死。追撃で死んじゃうわ。
息を整える。がむしゃらも良いけど冷静で。私は一人じゃない。仲間と共に連携を取れば必然的に勝てる可能性は高くなる。なら、独りよがりはダサいわよね?
「準備は出来た、止めるぞ」
「まさか伝説の龍と一緒に戦えるなんてね?夢みたいよ」
「ならばその期待に応えよう」
「嬉しい限りだわ」
「話は終わりだ、来るぞ」
ゆらゆらと立ち上がったアナラーラ。大きく息を吐き少しイラついてるのか乾いた笑い声を出す。
「よくもやってくれたな」
「少しはその笑いも無くなってきたか?」
「さっさとぶち殺してやる」
「やれるんだったらな!」
勢いよく真っ直ぐ突っ込んできたアナラーラ。それに唯決意を固めた顔をした龍が右腕で青い光を纏わせる。それを纏ったまま地面を強く殴りつけた。
アナラーラの腹の真下から土が勢いよく盛り上がる。直撃、………したかに思えた。上に避けた。都でも見せた圧倒的な跳躍力。誰もが驚かされた、あの中でさえ誰一人あんな芸当は出来ない。大きく飛び上がって龍に向かって踵落とし。
それを龍は両手で防いでみせた。私だったらきっと受け止め切れないであろう衝撃が空間に響く。それでも衝撃はこちらにまで来る。それを唯ふんばって耐える。ずずっと地面を擦りながら後ろに後退した。耐え切れはするが、それでも………。
「あちゃー止められたか」
「黙れ、貴様の喋りなど反吐が出る」
「そんなピリピリすんなよババア、もっとリラックスしたさぁ!」
「ああリラックスはするさ、お前が死んでからな!」
アナラーラは自分の踵落としを防いだ腕を踏み台に空中で一回転し、着地。間髪入れずに龍と間合いを詰める。それを待っていたか、龍はブレスを放つ。直線的、それを左に避けるアナラーラ。それに合わせて龍が蹴りをお見舞いする。吹っ飛んだアナラーラを私が追撃に向かう。
「おいおい、殺意高くない?」
壁に打ち付けられたアナラーラに突き刺す。すかさず氷でそれを阻む。うざったい。
「はっはー残念だったな!ってちょちょ!?無理矢理剣を当ててこようとするな!」
「大人しく死ね!」
「あら、怖い」
無性に腹立つわねこいつの喋り方。情緒不安定と言うか感情がごちゃごちゃしてるわねこいつ。でも私と龍ばかりに気を回してると足元救われるわよ?
「………不意打ちとはあまり好まないが、一崎、君を止めるためだ許せ」
「っ………!?」
「『覇撃』」
背中を思いっきり斬られた。そう勇者である。強化を一身に受けて私よりずっと強くなったでしょうね。………攻撃を避けきれずに当たりまくってさえいなければね。なんで防ごうとすらしないのかしら?
「痛ってぇ!もう少し配慮とか無いわけ?」
「ある訳無いだろ」
「あら?」
綺麗なアッパーが決まる。最悪顎砕けたんじゃ無いかと心配する程に強力だ。そこからは側から見ていても引くような事をしていた。
反撃する暇も無く、唯殴り、蹴り、斬り続けられていた。私念さえ感じる。でも本来の目的は拘束する事だった筈だ。あれはもう唯楽しんでいる様にしか見えないわね。十分程殴られ続けて弱った所を皆んなで羽交締めした。
拘束されている間アナラーラは苦しそうだった。青いオーラの様なものが溢れて心底苦しそうだった。悶絶。最初の威勢は何処へ消えたのか、弱々しい力でなす術無く、アナラーラはキスされた。
何故態々キスしたのか疑問でしかないわね本当。勇者方は狼狽えてる。そんな狼狽える事じゃないと思うのだけれど。
ーーーーーーー
「大体の話はこんな感じよ」
「オーケー取り敢えず俺をボコボコにしたって訳ね」
「分かって無さそうな反応しないでくれる……?」
マジかこいつみたいな顔でエルキアは俺を見る。
「それとえーと………なんて呼べば良いんだ?」
俺は龍に視線を向けて話しかける。
「我か…?………そうだな自己紹介が遅れたな」
「我はメリュモート。最古にして最後の龍である」
メリュモート……。聞いた事の無い名前の筈が不思議だ。懐かしさが心を通り抜けていった。デジャブに似た感覚さえ感じる。
「最古にして最後……?」
「ああ、言葉の通りだ。我は龍の祖であり、事実上世界で最後の龍である」
事実上って………。もしかして態々ご丁寧に探し回ったのかこいつ?その執念と根性に脱帽。
「そんで……メリュモート、何故俺にキスをした?」
「手取り早い方法がこれしかなかっただけだ」
よくそんな澄まし顔で言えるなこいつ。
「もういいや、疲れたし一回帰ろうぜ?」
「それもそうねさっさと帰りますか」
各々が洞窟から去ろうと歩き出した。その中にはメリュモートも入っていた。
「………あのメリュモートさん?」
「ん?なんだ」
「あの……ついて来るつもりですか?」
「そうだが?」
何言ってんだこの龍。
「まぁタダでついて行く訳ではない。貴様にも利点はある」
利点ねぇ……。まぁこいつに聞かなきゃならない事があるし良いかのか……これは?
それから俺たちは洞窟を出て馬車に乗り込んだ。勿論メリュモートは俺たちの馬車に乗っている訳なのだが……。隣で爆睡かましているエルキアを置いて目の前のメリュモートが口を開ける。
「貴様に聞きたいことがある」
「はぁ……」
こっちが色々と聞きたいんだがなぁ。
「貴様……その力何処で手に入れた?」
ん?手に入れた?その言い方的にまるで後付みたいな……?
「手に入れたって……いやこの腕は⸺」
「違う、その腕の話ではない」
「貴様のその青い力だ」
……………もしかして俺のスキルの話か?何か特別なのかこの力は。……メリュモートと同じ様な力……。
「………何の話か理解出来ていなさそうだな」
「いや……其方の方が好都合とも言えるか………」
すげぇ話していた筈が見事に自分の世界行ったやがるよこいつ。
「話を変えようか……君はその力はスキルでしか使えないと思っているか?」
「えぇまぁ……」
少しニタリと口角を上がるメリュモートは不気味だった。
「貴様らに我も同行しよう。そして貴様に旅の目的を与えよう」
「その力がなんなのか?その答えを見つけよ」
俺の……力の正体。
「………良いじゃん面白そうだ」
「目的の無い旅は退屈だろうしなぁ……。ワクワクしてきた」
「唯旅をするだけでは危険だ。己の力を存分に扱える術を貴様に教えよう」
「言うなれば……貴様の師匠になってやると言うことだな」
前言撤回したい。全然面白そうじゃねぇ。
戦闘描写ってむずい