十七星 出会いは偶然
工業楽しいね。
エルキアに聞いた感じギルドで換金はできるらしい。というわけで俺はエルキアに案内して貰いギルドに向かって行った。
街道を歩いて行く。ここの国の人らは髪色が淡めの赤色をしていて高身長が多い。人混みを見れば180後半の男性なんかゴロゴロと居たし。女性でも170は全然あると思う。俺の身長が176だから多分合ってると思う。
てか結構人が多い。なんか祭りでもやってるのか?露店も多いし。いやこの国がそういう文化なのかも知れない。文化だとしたらこんなに街を派手に装飾するか?予想は何かの祭りだとする。
「エルキア今日ってなんかの祭りでもしてるのか?」
「祭り…ねぇ。覚えてる限り今日はアルモンテ王の一人娘の誕生日だった気がするわ」
「へぇ…国全体で祝うとは中々楽しそうだな」
「まぁアルモンテ王は国民を巻き込んでこういったお祭りをよくするのよ」
「それ浪費だろ」
「この国は他国に比べて裕福なのよ」
「なんたって海底にある資源を唯一取り出せる技術を持っている国だもの」
「そのおかげで海に関してこの国には誰も勝てない程よ」
そういや日本でも海底資源の話有ったな。アレってどうなってるんだろうな今。いや関係ないわ。てか人混み多すぎてエルキアと離れそうになっちまう。離れるのは後から面倒くさいし、手取り早く済ます方法は…。
「あんた、あんまり離れない⸺」
「エルキア手、繋ぐぞ」
「えっ…ちょっ……!?」
「離れると危険だからな」
はい一番手取り早い奴。エルキアの手を握りながら人混みの中を掻き分ける。せめて混んでいない場所まで行きたい。てか急に手を握るとか場合によってはただの勘違い野郎だよな。
コレは仕方なかったんだ(言い訳)はい次からしません。取り敢えず進んでいくと何やら装備を着た数人が居た。目立つ。普段装備などしない人達の中にガチガチの装備を着込んだ人は目立つ。俺だってこの服で若干目立っているのだからな。
顔がよく見えない。遠目でも分かる黒髪と周りに比べて身長がやや低いのも目立つ要因だろう。黒髪で若干身長何低めとか絶対日本人だろあれ。でも誰だ?勇者組だったらなんか面倒くさい事が起きそう。言わば彼らは主人公だからね。あそこら辺で何か物語が起きている可能性もあるし。
別の道に行くか。路地裏に入ってエルキアの手を離す。終始ぽかんとしているエルキアに声を掛けてみるが反応が無い。何、そんな嫌だったか?……目の前でそんな反応されると結構来るものがあるな。
「おいエルキア!人混みから抜けたぞ!」
「…………」
「聞こえてるか?返事しろー」
「………っえ、あっ」
「大丈夫かエルキア?」
「ええ……。えっと何処に行くのだったかしら」
「そうそう!ギルドに行くのだったのよね」
「……てっ、もう隣に有るじゃない」
「えっ嘘!?」
びっくりしながら横を見てみるとデカデカと看板に書かれた冒険者ギルドが目に入った。何故俺は気付かなかったんだよ。にしても何でこんな人通りの少ない場所選んだ此処の運営者よ。
そのまま俺達はギルドに入ってみた。中には受付の男の人と右の壁には階段、左は通路になっている。受付の人以外は居なく閑散とした空間は扉を開ける音だけが支配していた。
「ようこそ冒険者ギルドへ。君らは何の用で来た」
「換金が目的だ」
「そっちの通路を真っ直ぐ行った所にあるよ」
「それと君らは冒険者か?」
「私はそうだけどユウは違うわ」
「そうか。なら施設を利用するなら登録して貰おうか」
「分かった」
受付の窓口に向かいおっさんが何やら紙を渡してきた。羊皮紙か?犬小屋にある毛布みたいな匂いがする。俺はさっさと下の方に名前を書いて提出しようとした時エルキアに呼び止められた。
「冒険者登録するときは自分の血を名前の所に垂らすのよ」
「つまり指の先を切れと?」
「何処でも良いわよ別に」
「後で回復してあげるからさっさとしなさい」
「へいへい」
自分の親指を少し噛み切り血を垂らす。赤く染みた紙を提出した。その後エルキアが回復薬をほんの少しだけかけてくれたお陰で傷は塞がった。俺は受付のおっさんから銅色のプレートを貰った。しっかりとプレートには俺の名前が彫られている。
「これで登録は終わりだ。換金所はそっちの通路を通って左側にあるからさっさと換金しろよ」
言われた通り換金所に行くとちっこいおっさんが座っていた。アレだな絶対。ドワーフって奴か?すげぇファンタジー。
俺は換金所の窓口にどっさりと硬貨の入った袋を置いた。おっさんは少し目を丸くしながら少し呆けていた。しばらくして袋の中身を確認する。
「こりゃあ相当古い物持って来たなぁ。ちょいと待っとれ直ぐに終わるからよ。そこの椅子にでも座っといてくれ」
おっさんは窓口の奥へ入って行き俺たちは椅子で待つ事に。あの硬貨って古めの物品だったとは。これは少し期待出来るな。……いや期待していいのだろうか。
「私ちょっと飲み物買ってくるからあんたも何か要る?」
「何があるか知らないからな…オススメとかあるか?」
「オススメはそうねぇ……やっぱりシーオレンジのジュースとかかしら」
「シーオレンジ?」
「この国の特産品よ。甘味が強くてとても美味しいの」
「じゃあそれで頼む。後で代金は払う」
「良いわよ代金なんて。私に奢らせて」
「すまねぇな。ならお言葉に甘えて」
「じゃあ行ってくるわね」
「おう行ってら」
エルキアを見送った後ドワーフのおっちゃんが奥から戻ってきた。なんか金ピカな硬貨がいっぱい見えるのだが?
「おう換金終わったぜ。銅貨38枚、銀貨14枚、金貨13枚。これらの硬貨は希少性が高く殆どが当時の状態を保てている。よって合計1380000キルトだ」
百万超えたぞおい。えーとたしか入国に必要なキルトは1000だったから……。1380回は入国出来るな。
やばくね?
「流石にこんだけのキルトを出したのは久々だぜ。あんたこれで一生分稼いだも同然だな」
「他国でさらに変換し増やすも良し、此処で一生住むのも良し。かぁ〜羨ましいねぇ」
「しっかり嬢ちゃんの事も養ってやれよ!」
「いや俺たちはそんな関係じゃないですよ」
「おうそうか!そらすまなかったな」
「それとついでなんですけど近くにオススメの宿って有ります?」
「そうだなぁ……ここの近くによ、海鳥亭って所があんなよ。あそこの宿は料理も美味いしベッドも最高だぜ。此処から右に行った所の突き当たりを左にあるから行ってみな」
「教えて頂きありがとうございます」
「構わねぇよ。あそこはオレもよく行くからな。うめぇ所は共有してぇもんだ」
「おーいユウー。買ってきたわよー」
「ありがとうー。それではこれで」
「おう!」
海鳥亭ねぇ…。海産物とかが美味いのかな?俺魚系は苦手なんだがなぁ。うーんでもオススメされたからには行ってみたい自分が居る。
「はいコレ」
「おう。すげぇ青いなこのジュース」
「でしょお〜。このシーオレンジってね海の近くでしか生えていなくて、果実も青色だからシーオレンジって呼ばれているの」
「ほう。では実食」
見た目では気付かなかったが中に果実が混ざっている。それにジュース自体砂糖でも混ぜたかと言う程非常に甘く、口辺りがとても爽やか。そら人気になるな。
「今晩は海鳥亭って所に泊まるか」
「良いわね!あそこは人気だから早めに部屋を取りに行きましょう」
俺たちは海鳥亭を目指してギルドを後にした。未だ大通りは賑わいを見せ、活気が溢れている。魔王軍が進行している中こうも人々の笑顔があるだけでまだ希望はあるのだと感じる。
それでも善人ばかりがこの世の中に居る訳ではない。光有るところに影は有る。こんな世界情勢でも犯罪を犯す者は絶対と言って良い程居る。
路地裏から少女の叫び声が聞こえた。方向は……右か。エルキアにジュースと荷物を預けて全力で走る。面倒事になっているのにも関わらず助けたいだなんて何とも滑稽だろうな。だがそんな事は知らん。後悔は後だ。
見つけた。デブとマッチョの二人組か。テメェらは変態かこの野郎。そしてあれは……獣人の子供?
「さぁ大人しく捕まって貰おうか」
「いやぁ…来ないでぇ…!」
尻餅を着きながらでも逃げようと必死にもがいている獣人の子供。おいおいさっさと片付けて俺は海鳥亭の部屋取りたいんだよ。
「ちょっと待てやテメェら!!」
マッチョに対して全力疾走による助走が着いたドロップキックをお見舞いしてやったぜ!勢いのあまりマッチョは壁に少しめり込んでいる。
「なっ…!なんだテメェは!」
「通りすがりの冒険者だ!」
「ちっ!テメェは此処で死ねぇ!」
デブがポケットからナイフを取り出す。テンプレみたいな野郎だな。デブは俺に対してナイフで刺しに来る。星透で避けるのも良いがそれだと獣人の子に危害が及ぶ。なら此処は受け止めるか。
腹を目掛けてナイフを突き刺して来たが肉に届く事は無く。代わりに刺されたのは無機物な右手だった。右手で刺されたままデブの手を握る。ゆっくりと力を加えてやりメキメキと痛みを与える。
引き抜こうと腕を引っ張っていたので態と離してやった。デブは地面に座り込んだ。俺は突き刺さったナイフを引き抜きそこら辺に投げ捨てる。デブは少し不敵な笑いをした。何が可笑しい?
「へっへっへ。あのナイフにはな、毒が仕込まれていたんだよ!あのワイバーンさえ即死させる超強力な毒がな!」
暫しの沈黙。俺もデブも顔を見合わせる。
「へぇ…なら俺は何故死なないんだろうな?」
「嘘だろ……!?」
ナイフで刺された場所は煙を上げながら塞がっていく。そんなすごい毒だったら俺みたいな奴は即死だろうが、生憎右腕で防いだんでな効かないんだよ。
「大人しくずらかれ!」
「ひぃぃい!化け物!」
デブはマッチョを拾って何処かに去って行った。アイツらの目的は知らないがどうせろくでも無いことだろう。そう例えば……人身売買とかな。
「大丈夫か?」
「ありがとうお兄ちゃん」
「礼はいい。もう一人で居るんじゃないぞ」
「それがね……わたしお母さんと逸れちゃったの」
「……分かった。お母さんの特徴って分かるか?」
「うんとね…わたしと同じ耳で同じ髪の毛の色してるの」
この子の見た目は狐耳で金髪か。となると結構探し回らなくちゃな。
「それと……何処で逸れたか覚えてるか?」
「うんとね…お城の門の近くで逸れたの」
「分かった。お兄さんと一緒に探そっか」
「うん……!」
さて探す前にエルキアと合流するか。俺ここの国の地理全く分からないし。来た道を戻ろうと子供の手を握りながら進んで行くと何やら足音が聞こえてきた。
エルキアか?にしては大人数だし。警察みたいなやだったら俺終わるじゃん。この場で現行犯逮捕されるよ俺。
そう思っていたら足音がどんどん近づいている。そしてその足音の正体は勇者様御一行でした。あっやばい殺されるかこれ。
「貴様ァ!そんな幼気な少女に手を出すとは。このクズが!」
勇者ってあんな感じだったけ!?なんか物凄く怒気を感じるのだが!?くっそせめて話を聞いて貰えたらまだ挽回の余地があるってのに。
「おい獣人の子供!俺から離れろ!」
「逃走とは卑劣な!このロリコンが!」
「誰がロリコンだコラァ!」
コイツマジで頭とち狂ってんのか?状況だけで判断するな。一心不乱に斬りつけて来るのを避ける。これが勇者の姿とか世も末だな!
避けている時剣だけでなく火の玉も飛んできた。そうかパーティーで来てたか。くっそ油断してたらほんとに死ぬ!見せてやる、セントルムで鍛えた避け技術をな!
「辞めて!お兄ちゃん達!」
子供の静止がこの場を支配した。俺に対して猛攻をしていた勇者や仲間達は一斉に攻撃を辞めた。少し困惑した顔で子供に問い掛ける。
「でっ、でもコイツは君を拐おうと⸺」
「違うの!お兄ちゃんはわたしを助けてくれたの!」
「そう…だったのか…」
「漸く落ち着いたか?」
「……ってその声は!?」
「結構早めの再会だな」
最悪な再会の仕方だがな。
魂鎮もエルキアに預けてる。何故ならば「さっさと終わったらいいやろ」の精神だからだ。そんな事はできずにちょいと面倒臭い事に。