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星闘家、星を殴るまで  作者: 竹小
海の国 アルモンテ
17/32

十六星 久しぶり、外よ

ごめん、色々と学校であったから書く時間なかった。言い訳とでも思っといてください。

 目が覚める。真っ白な空間。奥行きがわからないほどに純白な空間に俺は一人ぽつんと立っていた。これは…夢なのか?余りにも現実味のない空間は違和感でしかない。それに俺は牢屋に居た筈だ。


 他にも違和感はあった。腕が無い。あの右腕は無くなっていて俺は片腕だけの状態でいたのだ。辺りを見わたしても何も無く、俺の距離感だけがバグり出してきた。少しばかり経つと俺の後ろに何かが立っていた。


 黒く塗りつぶされたそれはなんなのか分からない。仮称としてヌルとでも名付けよう。ヌルが俺に指を指す。呆気に取られた俺はその場で立ち尽くしている。いや動きたいのに動けないんだこれは。


 真下を見れば黒い腕が俺の脚を掴んでいる。腕は俺に這いずりどんどん上へと進む。纏わりつかれた俺は何も出来ずただ腕に視界すらも塞がれるように消えていく。最後に見えたのはヌルが笑うように口角を上げる瞬間だった。


 ゆっくりと瞼を開くと冷たい石でできた牢屋の天井だった。夢…か。なんとも変な夢を見たな。むくりと身体を起こし頭を掻く。少しの眠気さと頭痛で気持ちはどんよりと沈んでいる。


 それでも日課(?)の壁に線を書き、冷たい床に座り込みながらただ時間が過ぎていくのをただ待つだけ。日にちの感覚だけは把握しないと気が狂う気がして書き続けているがじっとしているだけなのも堪える。


 コツコツと足音が響いて聞こえてくる。なんだまだ配給の時間じゃないだろ。夜にしか来ないんだからほんとに何の用だか。そう考えているとそこにはエルキアが牢の前に立っていた。


「あんた、自分が何したか分かってるの?」


「ただ都奪還の為に戦っただけだろ?」


「理由じゃなくてその腕をなんで触れちゃったのってことよ」


「そう言われても…腕が勝手に引っ付いたとしか言えないし」


「はぁ…。あんたの処遇が決まったわ」


「へぇ…死刑か?」


「本来は死刑が下されても妥当でしょうね。でも温情でリーリント大陸の方に“様子見”として送られることになったわ」


「それはお優しい事で」


「まぁ様子見って名目であんたを此処に置いておくのを怖がっての判断だろうけど」


「そんなにやばい代物なのか?この腕」


「当たり前よ!昔にこの大陸を滅ぼしかけた物なんだから」


「ふーん」


「興味無さそうに言うけどあんた普通に死ぬからね」


「なんだこの腕に殺されるのか?」


「まぁ似た感じよ」


「…話を戻すわね。今日の夜に船が出されるからそれに乗って送られるわ。あんたの荷物はその時渡すからそこで待っておきなさい」


「了解」


 エルキアが去った後俺は少しばかり何でエルキアが俺の処遇知ってるのかハテナが浮かんだが、まぁもうどうでも良くなる事だ。


 それから時間は過ぎ配給を食べ終わった後にまたエルキアが来た。…俺の魂鎮とバックを持ちながら牢屋を開けてくれた。立ち上がって荷物を受け取る。


「ありがとさん」


「はぁ…着いてきなさい。船を用意してあるから」


 エルキアに着いていき、扉を潜ると夜風が俺を撫でた。目の前に広がる花畑が月光に照らされてとても綺麗に輝いている様に見えた。とても空気が澄んでいる。心地良いな。


 着いた先は質素な船しかない船乗り場だった。大丈夫かこれ?乗れても三人が限度だろこれ。大陸間の距離は知らないがイケるのかほんと。


「…あんた今これでリーリントまで行けるのかと思ったでしょ」


 姉妹揃って俺の考え読めるのか?それでもこの船しかないので渋々荷物を乗せる。しかし誰か船を漕いでくれるのだろうか?……えっ、俺がやらねばならないのかこれ…。


 せめて、せめてオールをくれ。何も無くては船は動かんぞ。俺が後ろから押したところで大した進まんだろうし…。


「どうやって動くんだこれ?」


「ちゃんと目的地にまで運転してくれる魔具が仕込まれてるから安心なさい。後睡眠用の毛布ね」


「ああ…ありがとう」


「後私、あんたの監視役に任命されたからついて行くわよ」


「マジかよ…」


「あんたがまた何かしで出すか分からないからって私に監視役を任命するなんて…もう最悪よ!」


「えらく怒ってるな」


「当たり前よ。こっちは都復興の為に身を粉にしながら働いてたってのに」


「てかどうすんだよ船一つしか無いけど」


「……それに二人で乗るのよ」


 マジかと驚く俺。そんな俺を置いてエルキアが何も言わずに船に乗る。そして諦めて渋々乗るとそのまま船は勝手に動き出した。自動運転とは現代では未だだったからなぁ。異世界ってやっぱ凄い。


 少し経ったら眠たくなって来たな。海上での睡眠は少々危険だが今は寝る。毛布を被り硬い木の底で目を瞑り身体を休める。薄らとある意識は空中へと散り、俺は寝た。


 夢が見れない事はよくある事だ。眠ってしまえばすぐさま明日の朝になる。現代に居た頃は朝が来るのがとても憂鬱だった。何も達成出来ない自分の人生が虚しくて苦しくてなんとなく嫌だったから起きるのが辛かったな。


 いや、いいか別に。結局は昔話だ。俺は今腕を組みながら横になっている。何故起き上がらないかって?隣の方が足を俺の足のところに乗せているからだよ。寝相が悪いのかは知らないが動けないから退かしたい。


 そもそもの話よ、広くもなく狭くもない船の上で寝るなんて中々きついんだよ。背中合わせのこの空間はなんとも窮屈だ。しかも何故だか知らないが寝れないし。ああ…早く起きてくれ。


 数時間程経つと漸く起きてくれた。日の暖かさが出てくる時間。起き上がって身体を伸ばしたエルキアが俺の身体を揺らした。はいはい起きますよっと。


「ほら起きなさい、もうすぐ着くわよ」


 起き上がった俺は遠くを見る。見えた街並みはヨーロッパの様だった。


「あそこはアルモンテ。リーリント大陸で一番強い海軍を持つ海の国」


「海の国……か」


 風が俺を撫でながら俺はなんとも胸騒ぎがする。こう思春期に親と一緒に居るところを見られたくないあの感じがする。まぁ…俺にはそんなものは無かったが。でも胸騒ぎがしているのは本当だ。はてさてこの先に何がある事やら。


 アルモンテの小さな船着場に着いた。正直な話不法入国になってないか心配でしか無い。それに今の格好だった下手したら捕まりそうなんだよな。今はせめてものお下がりのエルフの服を着てるが所々ボロボロだし、腕を見れば変な腕してるし、実質変質者だろ。


 船を降りて船着場を少し行くと検問所の様な建物があり、そこに人が通って行くのを見た。金とか支払うのだろうか?なんにせよ俺には何も出来やしないがな。


「検問所って金支払うのか?」


「まぁそこら辺は任しときなさい」


 結構なお自信で。スタスタと検問所まで着くとエルキアが何か鞄を漁り始めた。やっぱ金払うのか。


「おうにいちゃんら、入国なら1000キルトだよ」


「金を払う前にコレを見て欲しいんだけど」


「あぁん?」


「………分かった。通りな」


 エルキアが紙を見せるとおっさんは少し黙り道を通ることを許可した。絶対令状とか見せただろ。明らかにおっさんの顔関わりたく無いって顔してるぞ。


 ともあれ検問所を通り晴れて入国することができた。まぁ特にやりたい事も無いしどっかプラプラと歩き周るかな。その前にダンジョンで手に入れたあの金をこの国の通貨にする所から始めなくちゃな。


 換金所って何処に置いてあるだろうか。セオリー的な話をするとギルドとか銀行とかの組合とかかなそこら辺だろうし。エルキアに聞けば何とかなるか。魂鎮は換金するべきだろうか。なんだかんだ愛着はあるしこのまま使い続けようか。

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