十二星 エルフの都エイラメス
あの骨野郎爆弾残して死にやがって。…一週間か、エルフの都がどれだけ遠くにあるかは知らないが余り悠長にはいられないな。殲滅と言うからには大方魔物の大群で押し寄せる感じだろう。
只今村長の家にいるのだが村長に殲滅の事を伝えると何処か慌てて出て行ったが俺としては早く都に行きたい所だ。…前にも言ったが俺は別に立派な道徳心なんか持ち合わせてい無い。俺が居る間何かあっては安心して過ごせ無いし、帰れ無いだろう。
俺にとっての障害でしか無い。そんな訳で俺は逸早くこの事態を解決したい。だから都に行きたいのだ。話が逸れたな…村長がどっか行った後エルキアももし都に行くのであれば行くとの事だ。
いつまでもじっと見ている訳にはいか無いとかなんとか。まぁ理由なんて割りかしどうでもいい事だ。戦力が増える分にはとても良い。…村長が戻って来たな。
「都に居る抵抗軍の人達に連絡を取った。一週間後魔王軍の殲滅開始に合わせて全面戦争を仕掛けるらしい。…君達も参加するのかい?」
「ええ、都…エイラメスを取り返したいの」
「…心意気は良いかもしれ無いが、ダンジョンに比べ魔物の質が高い。…本当に行くんだね」
「黙って死ぬ訳にはいか無いので」
「そうか、分かった。少し待ってて」
そう言って村長はまた外に出て行った。数分後軽い金属同士がぶつかる音が聞こえてきた。その金属の正体は村長だった。村長が何処からか装備を持ってきたのだ。
「私のお下がりだがね…持っていくと良いきっと役に立つよ」
そう言った村長は俺に胸プレートとアームプレート、ブーツをくれた。重さはあまり無く動き易さが装備してい無い時と然程変わら無い。
「ありがとうございます」
「いいさ、老人が持っていても意味がない物だ。それにもう私は冒険などはしないと決めたんだ」
会話に違和感。何だ…村長の言っている事に違和感が…。村長が言った“私は冒険などはしないと決めたんだ”は無くて良いはずだ。まるで次が有るみたいな…。
いやどうでも良いか。今は気にするな、それより都が何処に有るかだ。俺知らねぇよ都の場所とか、移動手段とかさ…。
「…いつ出発するんだい?準備は出来てるよ」
「いつ出発するユウ…」
「今からだ」
「随分と急いでるみたいだね、抵抗軍に恋人とか居るのかい?」
「ちょっ…!何聞いてんのよ村長!」
「いやぁ…唯の冗談だよ」
何聞いたんだこの爺さん。それと何焦ってるエルキア…お前には関係ないだろ。まぁ早めに行くのは悪い事じゃないだろ。
「…着いてきてくれるかな」
少し微笑んで村長は言った。俺達は言われた通り着いていき着いた場所は村長の家の裏庭だった。地面にはなんかよく分からない石見たいな物があり、それから円が描かれていた。
「この円に入りなさい」
俺達が円の中に入ると突然下から風の様な物が吹き始めた。この感覚は俺がダンジョンに飛ばされた時と同じ感覚だ。
瞬きをしたたった刹那、そこには村長も周りの山々は無く密閉されたまるで…て言うかまんま地下だなこれ。見渡せば人…じゃねぇエルフだ間違えしまった。
「着いた…のか」
「…どうやらそうみたいね」
「おう、あんちゃんら。連絡で知らされた助っ人ってやつか?」
なんか、めっさムキムキなエルフが現れたんだが。ああ…すごい胸の筋肉ピクピクさせ無いで。…異世界でもタンクトップ的な物があるんだな。
「ああ…その助っ人だ」
「なら少し着いてきてくれ…」
マッチョエルフに言われるがままに着いていくとそこには荒れ果てた土地に広がる石煉瓦で出来た壁があった。これがエルフの都か…。イメージとは違うな。俺がイメージしていたのは自然豊かな感じだったんだがな…。妖精的な感じをイメージしたらダメか。
「一週間後あの壁に穴を開ける組とそれを囮に突撃する組とで分かれる。お前達は突撃組に入ってもらう」
そっからまた連れられ今度はまた別の地下に着いた。なんで転移場所をわざわざ変えたのやら。それにしてもここはエルフが多いな。むさ苦しい空間だ。地下にいるせいか空気が悪い。
「あんちゃんら悪いがここで一週間待ってもらう。作戦自体はあんちゃんらは突撃して魔物共を倒すだけだ。簡単だろ?」
「飯は携帯食しかねぇが一週間の辛抱だ…我慢してくれ」
此処で一週間ね…。もしかしてだけどこの狭い場所で寝ろだと?おう俺は良いがエルキアが何か言いそうだがな。“男と一緒に寝るなんて!”なんて言いそうだ。
それから数時間後また人が増えて来た。そっからエルフが出入りして来た時と比べてエルフが少なくなった。そして寝巻きに関してだが地面に布を引いてそこで横になるだけのお粗末な感じだ。
「おいエルキア、お前何処で寝るんだよ」
「…?」
こいつ様当然かの様に俺の寝床の隣に来やがった。なんで俺の横に来るんだよ。別に知り合いの所とかに行けよ。お前さっきまで知り合いみたいなエルフと喋ってたし。
「…あんたの隣がいいからよ」
「はぁ…好きにしろ」
「好きにさせて貰うわ」
中々図太いなお前。…それから3日位してからなんか慌ただしくなった。んで1日位すると収まって何も無く過ぎた。つまり突撃決行日だ。続々と皆で集まり待機する。
壁を壊す音がこちらまで聞こえて来た。その次に何か生物達がそこへ集まる足音が聞こえ遠ざかっていく。今なんだろう。
エルフの男がゆっくりと目の前の木製の扉を開ける。俺も刀を抜く。目の前には割りかしいる魔物…見た目はトロールの様な奴が数匹。ゴブリンが少なくとも三十匹位。そしてこちらは二十人程度。やってやる聞いた話じゃ奥の方にある城に入り制圧すれば今回の奪還は終わる。
「行くぞぉおおおおお!」
先陣に続き皆一斉に突き進む。ひたすらに襲い掛かる魔物共を倒す。トロールは数人で殺し、追加で来た奴も道中で殺す。刀を落とした時はゴブリン共が持っている棍棒で対処し、魔物の死体を踏みつけ血を浴びながらただ正義の為にと自らを鼓舞する。
同じ敵。大多数の魔物共を殺しある程度制圧出来たのだと感じれば今度はワイバーンが現れた。火を吐き爪で上から襲い掛かる姿は獰猛な虎でさえ怯む。それでも我らは止まらず周りの建物によじ登り飛び掛かり地面は墜落する。
地に堕ちたワイバーンは何人ものエルフに打撃、斬撃、魔法による攻撃に耐えきれず舌を出しながら死ぬ。呼吸が荒くても魔物への攻撃を止めず蹂躙する様はまさに聖戦だ。奪われたものを取り返す。
制圧行動開始してから約一時間近く過ぎた頃には殆どが制圧出来ていた。これも壁を破壊した音であちらに寄って行った事が良かったのだろう。それから破壊した壁の付近まで進み大量の魔物共を不意打ちで殺す。
壁を破壊したエルフ達は何人かは死んでいた。上から潰され内臓を露わにしながら血と体液と排泄物で酷い悪臭を放ちながら死んでいるもの。顔が潰されて死んだもの。火に炙られて真っ黒になり痙攣しながら死んでいるもの。全ては奪還のためだ…安らかに眠っていて欲しい。これでもしゾンビになって襲い掛かってきたら面倒くさい。
そこからどんどんと湧いて出てくる魔物共に嫌気がさす。魔物共の出所はあの城だ。あの中に行くまで一人では無理だ。
「誰か!俺に着いてきてくれ!あの城に行くぞぉお!」
「「おおおおぉおお!」」
今度は俺が先陣だ。邪魔な奴らを跳ね除けて斬り捨てながら城へと突き進む。制圧なんざ後だ後。蛇口止めなきゃ水は止まらないだろ。つまりそういう事だ。
クソが目の前に門番見たいな奴が二体居るなんてな。西洋甲冑を着ていて、槍を持っている奴が一体。レイピアを持っている奴が一体。さあてどうしたもんかなこれ。