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032.指輪
「帰ってきたら、僕と結婚してくれないか。
指輪も用意したんだ」
「嬉しい……!」
世界一幸せな女ね、私。
「ってなによこの指輪。
見たこともない材質ね」
戦地に向かう婚約者から差し出された指輪は、白いザラザラツルツルした不思議な、でもどこか知っている気がする素材。
「スケルトンの手の指の骨を加工したんだよ」
輪切りにするとすぐに割れてしまうから大変だった」
「指輪ってものは、指に嵌める輪ってことで、指(の骨)で出来た輪のことじゃないわよ!」
私、こいつと結婚して大丈夫だろうか……
「念の為聞くわ。この石は?」
「あ、それ?
ゾンビの目玉。綺麗でしょ?」
綺麗だけど……何故か綺麗で負けた気がするけど……!!
そんなもんを指輪につけんじゃないわよ!
やっぱダメだわ。断ろう。
「ごめん、やっぱこれ受け取れないわ」
「どうして……!!」
「どうしてもこうしてもないわよ!」
「他に男がいるのか!?」
「なんでそうなる!」
そんな会話の後、彼は戦場に行き、帰って来なかった。
帰ってきたのはあの指輪だけ……
え、これどうするべき??