051. 黄金の竪琴
誰も弾きこなせないと言われる国宝の黄金の竪琴を弾いてみたい、それが宮廷楽士たる私の夢です。
数々の国賓を招いた宴で絶賛されたことを認められて、褒美をやろうと陛下から言われたので、黄金の竪琴を弾かせて欲しいと申し出ました。
私以上に竪琴が上手い者はいないと自負しておりますし、周囲の評価もまた同じでした。
しかし、陛下始め王族の方々は無理だ、弾けない、やめておけの一点張り。
納得いかなかった私は、とうとう宝物庫への侵入を決行しました。死罪になっても、国宝の竪琴を弾けるなら悔いはありません。
しかし、一国の宝物庫の警備が甘いものであるはずがなかったのです。
黄金の竪琴に到達する前に取り押さえられてしまいました。
過去の外交の場での数々の功績が認められ、先日の褒賞をまだいただいていなかったこともあり、刑の執行前に、「死ぬ前にせめて黄金の竪琴を一弦だけでも良いので爪弾かせてほしい」という願いが聞き入れられ、刑場に黄金の竪琴が運ばれてきました。
何故か、王族だけでなく、移送に関わった兵士たちも皆、なんとも言えない顔で目を合わせようとしません。
しかし、黄金の竪琴の前にはそんな些細なことはどうでも良いです!
夢にまで見た黄金の竪琴が目の前に……!!
いや、これ、弦も黄金で出来てますよね。固い。
ただの飾り物?誰ですかこんな使えない楽器作ったのは。
「だから弾けないって言ったのに……」
処刑場に陛下の言葉が虚しく響きます。
私は躊躇わず毒杯を飲み干しました。
夢は夢のままの方が良い。
私の死が未来の楽士たちの教訓になることを望みます。