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恐怖の物語  作者: 枯谷落葉
第1章 ばけものの物語
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02 嘘



 あるところに、子供のばけものがいました。


 その子供のばけものは、普通の子供より体が大きくて頑丈だったため、人間の子供達から仲間はずれにされていました。


 だから、そのばけものの友達は、たった一匹だけ。言葉を話す蛇しかいません。


 でも、そのばけものはそれでも満足でした。


 なぜなら蛇はとっても物知りでお話し上手で、一緒にいてとても楽しかったからです。


「君と一緒にいられるから、他の友達なんていなくても平気だよ」


 そう言えるくらいです。


「今日は何を話してくれるの? 虹ができる理由? それともシャボン玉を作る方法?」


 ばけものと蛇は、何年も一緒に遊んでいたので、親友のように思っていました。






 しかしある時、蛇が嘘をつきました。


 それはとても寒い冬の事です。


 ばけものの子供に、「とってもあたたかくなる方法をおしえてあげる」と言って、嘘をつきました。


「本当? うちの家は隙間風がひどくて困ってたんだ。その方法があれば、お父さんやお母さんも喜ぶよ!」


 喜ぶばけものに、蛇はにっこりと笑いながら教えます。


 家の中の、燃えている暖炉に油をかければ、もっとあたたかくなれるよ。


 と。


 危なくない方法だから大丈夫。


 と。


 たくさんの油をかけたら、下手に何かをせずに放っておくといいよ。


 とも。


「分かった。教えてくれてありがとう!」


 ばけものは、その言葉を信じました。


 蛇は今まで、嘘をついた事がありません。


 ずっとばけものに、本当の事だけを話してきました。


 だから、今回も本当だと、思ったのです。






 ばけものの子供は、家に帰ってから、さっそくその方法を試してみました。


 時刻は夜遅く。


 激しい吹雪の日。


 もう少しで、ばけもののお父さんとお母さんが帰ってきます。


 ばけものでも、愛情を持って育ててくれる、とっても素敵な人間の両親が。


 ばけものは、家をあたたかくしておけば喜んでもらえると思って、胸をはずませながら油の入った缶を手に取りました。








 燃える家を見て、蛇は大喜び。


「馬鹿だなあ、火に油を注ぐとどうなるのか知らないのかい? まあ、教えてないからしょうがないけど」


 家はごうごうと、すごい勢いで燃えていきます。


 あまりの勢いに誰も近づけません。誰もその火事を、消し去る事はできません。


「たくさんの油なんて注いだら、火が燃え広がるにきまってるだろ?」


 その蛇は本当は悪い蛇でした。


 ばけものと仲良くなっていい蛇のふりをしていたけれど、人が困る様子を見るのが好きなのです。


 ごうごうと燃える家を見て蛇は大笑い。


 燃えている家に入っていく二人の大人を見送って、最後まで見ることなくその場を去っていきました。


 蛇はもう、今までの遊んでいたばけもののことを忘れてしまいます。


 もうすでに、


「どこかで一人ぼっちになっているかわいそうな子供はいないかな」


 と、次のターゲットのことを考えていました。



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