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恐怖の物語  作者: 枯谷落葉
第3章 幽霊の物語
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04 廃村



 その地域には、人が住まなくなった家がたくさんあった。


 とある事故で、人が住める環境ではなくなっていたからだ。


 原因は、ガスだ。


 夢の資源を求めて地面を掘り進めたが、出てきたのは有毒ガスだった。


 最初に作業をしていた作業員が倒れ、近い場所から遠くへと避難の知らせが出された


 風が吹いていなかった事から、当初はすぐに解決できると考えられていたが、数分後に天候が急変。


 吹き荒れる暴風が、死の風となって人々に襲いかかった。


 それは計画が立てられた当初は、地域の発展を進めるはずの夢のプロジェクトだった。しかしたった数分で、人々を不幸にする悪夢へと変わってしまったのだった。


 ガスは次から次へと噴き出して、なかなか止まらない。


 だから、そこに住んでいた人達は逃げなければならなかった。


 避難が行われたのは夜中で、荷物をきちんとまとめる時間もなかった。


 




 全員が無事に逃げるられたわけではなかった。


 逃げ遅れた人達が何人も餌食になり、最終的には全国でニュースになるほどの規模に膨らんだ。


 その災害で死んだ者達は、幽霊となってしまった。


 死んだと認められない者達が多かったためだ。


 災害が起きた時は、あっという間の事だったため、死んだ事に気づかない者の方が多かった。


 そういった者達は、幽霊となった後でも変わらず生活し続けている。


 この世ではない世界で、ずっと成長する事もなく、姿形をかえることもなく。


 同じ一日を繰り返していた。


 しかし、どんな事にも永遠はない。






 ある日、とても強い力を持った除霊士がその場を訪れた。


 無事に災害から逃げられた者達が、依頼を出したためだ。


「いつまでも、知り合いをこの世に彷徨わせておくわけにはいかない」という善意の気持ちで。


 依頼者のそんな願いを受けて、除霊士は現場を訪れる。


 きちんとした装備をまとい、ガスの発生場所からは適切な距離をおいて。


 人のいなくなったその地域で、除霊士はさっそく自分の仕事を行う。


 普通の人にはない超常の力を行使し、幽霊たちに干渉しはじめた。


 すると、みるみる霊達に影響が出ていく。






 それは依頼者たちにとっては嬉しい事だった。


 しかし幽霊たちにとっては恐ろしい事だった。






 ただの日常を過ごしていた死者達は、身の回りで人が消えていくのを見て恐怖した。


 何が起きているのかわからず、混乱しているうちに、多くの人……だと思い込んでいる死霊達が消えていく。


 それは、かつてガス災害が起こった時、生き延びた者達が感じた恐怖と同じだった。


「友達がいきなり倒れたんだ! 誰か助けてくれ!」

「よせっ、そっちの方向へ行くな。危険だぞ!」

「きゃあああっ、お母さんしっかりして!」


 そんな阿鼻叫喚はキレイに消えていく。


 誰も知ることなく、聞くことなく。


 跡形もなく。


 除霊士の力と、生者の願い、そして善意によって。



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