01 湖
なぜか一年に一度、とある村にある、とある湖が赤くなる。
はじっこの方の目立たない場所だけが、そうなる。
人々はこれを、亡霊の仕業だと噂した。
この湖で死んだ女の霊の仕業だと。
それは小さな村の出来事だったけれど、摩訶不思議な出来事として広く知れ渡った。
多くの人が一目見ようと押しかけて、村の名前はどんどん広まっていく。
人がやってくるようになると、その村は変わっていった。
見物客のために宿や料理店などができていった。
みるみるうちに村は賑やかになり、豊かになっていく。
村人たちは大喜び。
湖が赤くなるのは不気味な出来事だったけれど、たくさん人が来てくれたから良い事もあったと。
けれど一部の村人達はびくびくしていた。
なぜなら、湖を赤くするために、定期的に人を殺めていたからだ。
初めのうちはただの事故だった。
もめていた男女がいて、かっとなった片方が石で相手の頭を割った。
証拠隠滅のために死体を湖に沈めたら、一日中その部分が赤くなってしまったのだ。
つぎも偶然だった。
その殺人現場を目撃した第三者が、自首するように説得していたが、それが喧嘩に発展しどちらかが死亡。
死体を投げ入れられた湖が、また赤く変色した。
生き残った人間は、それを見て思いついた。
この現象を利用して、村を発展させようと。
その目論見は成功し、見事に村は大きくなった。
一日に一人だけが消える村は……。
それはその後何日も続くことになる。
湖の秘密を探ろうとした誰かが、亡骸のあふれる水中に潜る日まで。




