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  作者: 暇人(過去形)
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俺の名前は秋峰あきみね 梨央りおだ。これからの話は俺が実際に体験したかどうかわからないが、しっかりと記憶に残っている物語だ。


俺は中学時代にいじめられていた。一年間から三年までずっとだ。理由は俺が太っていたからだろう。いじめといっても殴られたりしたわけではなく、陰口を言われたり嘘の情報を言って俺を陥れようとするような可愛いもんだった。


俺は元々人より頭がよく、色んな事を知っていたし心も他のやつより成長していた。だから俺はいじめを何とも思っていなかった。しかし他のやつらは反応のない俺を見てつまらなく思い、さらに嫌がらせをしてきた。


俺は吹奏楽部に入っていたが、中二のあるときこんな噂が流れだした。



『秋峰 梨央が吹奏楽部に入ったのは女子に近づいてスカートの中を見たり、シャツに透けたブラを見るためだ』



もちろんそんなつもりで入ったわけではない。単純に暇つぶしだった。しかし、周りは露骨に俺を避けるようになった。その上学校の教師に呼ばれ指導までされた。


もちろん俺は否定した。まったく違うのに責められるのは不条理だと思ったからだ。俺の言葉で聞いた教師はこう言った。



『こんな噂が流れたのはお前が本当にそう思われる行為をしたからじゃないのか?それに証拠はあるのか?お前がそんな気持ちを抱いたことはないという証拠があるのか?』



俺は反論をいくつか思いついた。



『男が女に欲情して下着を見たくなるのは当然だろ』


『心の証拠を提示する方法なんてないだろ』



他にもいろいろ思いついたが、もう諦めた。どうせ何を言っても無駄だろうと思ったから。そのころからだろうか、俺の感情の起伏がとても小さくなった。


そして、その噂が一般生徒に広まり切ったころに吹奏楽部に彼女がいたやつに呼び出された。彼の要件は、当然のごとく自分の彼女に何してんだという怒りをぶちまけるためだった。


彼は妙に正義感ぶっていた。俺のせいで彼女が落ち込んでいる等々言ってきた。おれはどうでもよかった。むしろ自分以外のやつらにやってないことを責められることにいら立ちを感じ始めていた。


だから俺は努めて冷静に俺がしてないと淡々と一切感情を表に出さないように説明した。

すると俺のその冷静さが気に入らないといってきた。


その後に俺の彼女を落ち込ませたことの罰だとか言って顔を全力で殴られた。口の中が切れた。

彼はこれで許してやると言ってきた。


俺は思った。許す?してないことに勝手に怒り、あまつさえ殴られて何を許されたんだ?ふざけるな。と

俺はもう限界だった。顔面を殴り返した。


彼は殴られたあと少し呆然としていたが、すぐに顔に怒りを浮かべて殴りかかってきた。

俺は昔から本ばっかり読んでいた。だからほとんどの体術を知っていたし会得もしていた。


もちろん危険技もだ。他にも剣術なども知識と行動はしっかりとできるようにしていた。


俺は自分でも驚くほどに冷静に彼の拳に手を添えて流し、その流れに身を任せ自分も一回転をして本気の回転蹴りを彼の脇腹に叩き込んだ。


彼は地面に無様に転がってすごく痛がっていた。俺はその姿を見てとても充足感を感じていた。思えばこの時に俺の精神は大分壊れてしまったのかもしれない。


後日、彼の肋骨が折れていたことが分かり俺は指導されたが、俺は指導なんて一切聞いていなかった。


それから少し経つと学校の不良に絡まれた。なんでも目つきが気に入らないんだと。

確かにそのころ俺は他の人をどうでもいい存在と思って、ごみを見るような目で見ていた。特に不良とかやっているクズどもには。


そしてやはり殴られた。相手は6人だったが負けるがしなかった。むしろ、心からの高揚感が抑えられなかった。


邪魔が入らないように人気のないところに移動してから喧嘩、いや一方的な暴力を始めた。全員で殴り掛かってきたからとりあえず後ろに交わした。


若干体勢を崩し前のめりになってたやつがいたから顎を殴り上げた。それだけで立てなくなった。後五人


それに呆然としている五人のうちの一人の腕をひねり後ろに回しそのまま関節を外した。悲鳴を上げて地面をのたうち回った。後四人


一人逃げようとしたので捕まえて一本背負いでコンクリートに腰から思いっきりたたきつけた。もちろん安全などは考えていない。後三人


残りの三人のうち二人がペーパーナイフみたいの物を向けてきた。刃物の対応の仕方は知っていた。右足を前に出し、体を傾け相手から見える面積を少なくする。


二人は愚かにも正面からやってきた。狙うのはもちろん見えてる狭い範囲だけ。少し体をずらすだけで簡単にかわすことができた。一人を二人目と同じように関節を外す。手からナイフを奪い太ももに突き刺した。

後二人


ナイフを引き抜きすぐそばにいた無手のやつに太ももに突き刺す。後一人


最後のやつは泣いて許しを乞うてきた。近づいてを腹をけり上げた。何度も何度も。

しばらくして声が近づいてきたので蹴り上げるのをやめてその場から離れた。


それから数日して警察に話を聞かれた。最初に殴りかかってきたのはあちらだったしナイフを持ってたのもあちらだったので正当防衛が成立したが、やり過ぎだということで厳重注意を受けた。


それから俺は周りからより一層距離を取られるようになった。俺を怖がり始めたのだ。

三年になって好きな人ができた。身長が小さくて俺にも優しく接してくれた。


仲良くなってしばらくしてから思い切って告白した。返事はこうだった。


『ごめんなさい。ほんとはあなたみたいな変人と仲良くなんてしたくないの。でもあんたに優しくしていると周りからよく見られるからそうしてただけだから、本当に告白なんてやめてくれない?変な噂立てられたくないし』


俺は完全に絶望した。もう何も信じることができなくなった。そして極度の女性恐怖症になった。


そうして俺は中学校生活を終えた。親は知っていながら俺を放置していた。それが俺が人に絶望するのに拍車をかけた。親すらこんなもんなんだと。


俺は極度の女性恐怖症になり、高校は男子が多い高校を選んだ。

そして入学の二日前に俺の人生の唯一と思える怪奇現象が起きた。


その日は普通の一日だった。いつも部屋にこもり、いろんな本を読んでいた。夜になり本を読んでいると眠気が襲ってきたので、俺は普通に寝た。そして心地よいまどろみの中で声が聞こえた。


「・・・きろ。・・・ぉきろ。早く起きろ」


声がはっきり聞こえ始めたころには意識もはっきりし始めていた。俺は目覚めはいい方だ。だから目を開けた時にいつもの自分の部屋の天井ではないことにすぐに気が付いた。


そして背中から伝わる硬い感触から自分がそもそもベットに寝ていないことにも気づいた。体を起こし周りを確認してみるとただ何もない空間がそこにあった。


地面も空もなく果てもないただ真っ白な空間だった。そこに俺は浮いていた。そこまで認識したところでいきなり目の前に人魂みたいな赤い光の塊が現れた。


その塊は常に形を変化させていて犬だったり虎だったりペンギンだったりの形になっていた。しばらく眺めているとその塊から声が響いた。その声は頭にするりと入って来た。



「突然知らない場所に対して動揺もしてないとはな」



確かに俺は全然動揺してなかった。むしろこの後の展開について何通りか仮説を立てていた。俺は死んでしまって、ここは死後の世界だとか、目の前にあるのは本当は神様で異世界に転生させてくれるとか。



「まぁな、あんまり動揺はしてないさ。それよりここはどこで、お前は誰で、なんで俺はここにいるかを説明してくれないか?」



俺がそう返事すると赤い塊はまるで笑うようにその体?を震わせて言った。



「カカ、いきなりストレートな質問じゃないか。答えてやろう。ここは神と人間が住まう世界の狭間で、私はお前が予測した通り神様だ。ここに呼んだ理由はお前への詫びだ」


「詫び?何に対してのだ?」


「最近お前はとても不幸だったろう?実はそれは私のミスでな、本来は普通の生活になる予定だったんだ」



この答えを聞いて俺はなるほどと納得し、特に怒るでもなく冷静に返事をした。



「それで、詫びとしてどんなことをしてくれるんだ?」


「君を異世界に送る。剣と魔法の世界だ。何をしてもいい。悪人になってもいいし勇者でも魔王でも何してもいい。強い力が欲しいのなら与えよう。君の望むままにしよう」


「異世界か、どんなところか説明してくれるな?」


「もちろんだとも。まず文明レベルは君のいた世界では中世ぐらいだが、銃などの遠距離用の武器はほとんどない。あっても古典的なものだけだ」


「火薬となるものはあるのか?」


「一応あるにはあるが、爆発力としては遠く及ばないからあまり意味を持たないだろう」


「他には?」


「魔法が存在する。使い方や原理は自分で見つけてくれ。それと魔法のもととなる魔力がある。これはだれでも持っているし、例外的な場所を除いて大気中にもある。


そしてその魔力を取り込み過ぎた動物や物は魔物と呼ばれている。人が魔力を取り過ぎた場合は魔人と呼ばれ、その頂点に君臨するのを魔王と呼ばれている。


魔人や魔物は取り込み過ぎる前より格段に強くなる。魔力から生まれる魔物もいるが、それは中間ぐらいの強さだ。他にもいろんな種族がいるがそれはあまり大事ではないからあっちで自分で調べてくれ」


「その魔物に例外は存在するのか?」


「二つほど存在する。一つは竜だ。竜は魔物にはならない。もう一つはダンジョンだ。ダンジョンは一応魔物だが中に魔物を内包していて、魔物の中でも特殊なものだ」


「大体わかったが、お前のような神がその世界に干渉することはあるのか?」


「ないね。たとえその世界が滅びようと私たちは一切干渉しない。それと、地理も自分で調べてくれ」


「分かった。少し考える時間をくれ」



俺は赤い光の説明を頭の中にまとめて少し悩んで答えた。



「別に特別な力はいらない。ただ、異世界なら冒険者ギルドみたいなところがあると思うが、そこに入れるようにしてほしい。後、体形を平均並みの太さにしてくれ。それと、当面必要となる金や防具、武器などが欲しい。


聖剣とか特別なものじゃなくていいから。最後に、魔法を使えるようにしてほしいのと、俺の成長に限界をなくしてほしい」


「それだけでいいのか?」


「ああ、自由に生きたいからな。これだけもらえば十分だ。そういえば、異世界で死んだ場合俺はどうなるんだ?」


「それについては心配ない。君が向こうの世界で死んでしまった場合、一度ここに来てもらい元の世界のここに来た時間に君を送り返すから。


ただ、君がこちらにいる間はあちらの時間も進む。親や友達などの君を心配してくれる人達には意識を少しいじって大事にならないようにしておく」


「そうか」


「送る場所はどの辺がいい?」


「そうだな、近くに魔物がまぁまぁ出て、冒険者ギルドがある村の近くがいいな」


「分かった。ダンジョンは無くてもいいんだな?それと、文字に関しては自分が書きたいと思うと勝手に手が動いて文字を書くようにしておくし、向こうの言葉も普通に聞いたり読めたりできるようにしておく」


「ダンジョンは無くていい。文字に関しては感謝しておく」


「じゃあ、もう異世界に送ってもいいかな?」


「ああ、問題ない」


「異世界に着いたときにはさっきの願いはかなうようにしてあるから。では、あなたの異世界人生に幸があらんことを」



赤い光がそう言うと俺の周りに魔法陣らしきものが現れて一瞬意識が途切れた。

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