第11話 強襲
「アルケロやザルリクがやられた?」
昔は誰もが狩りをしていたが、定住して弓を捨てたものは多い。
だが、今も狩人として暮らす人々がウカミ村にいる。
その中でもまだ若い狩人が獣に襲われたという。
他の狩人に助けられて村に連れ戻されたが大怪我を負っていた。たまたま近くにいたザルリクも巻き込まれてしまっていた。
オルスが話を聞くと異形の姿をした獣で、話から判断する限り魔獣だった。
アルケロが何発も矢を当てて行動不能にはしたが蛇のような触手が出てきて近づけずトドメをさせなかったらしい。
「オルスさん、あんたなら倒せるか」
「ああ、たぶんな。それより鐘を鳴らして仕事中の人間を全員村に集めるんだ。長老に言ってもう村の脱出を始めるべきだと。俺はその魔獣を探してくる」
「いきなり脱出?」
「そうだ。最近村の周りに野営の跡があったって報告があったろ。メンガラかフィメロスかわからんが俺らの動きを面白く思ってない連中も近くにいる」
最近、各地で略奪が相次いでいる。元遊牧民達の村が襲われているが貴族達はどうもお互い争い合っているようだ。蛮族との戦いにも貴族達の争いにも巻き込まれないよう急いで隠れ家に逃げ込むべきだと判断した。
オルスは長年の相棒テネスとヴォーリャを探しつつ道中で会った子供達には家に帰るよう命じたが、自分の子供達がいない。自宅で大声を出して子供達を探していると、隣人がファノが村の外に出てしまいレナートや年長の子供達が追って村から出て行ってしまった事を教えてくれた。
「いつだ!?」
「鐘が鳴る前だ。今頃聞いて戻ってくるさ」
「不味い、不味い、不味いぞ。あいつらは魔獣が出たって知ってるのか!?」
「え、魔獣?」
その村人は鐘が鳴っている理由をまだ知らなかった。
「やべえ、母ちゃんにぶっ殺される!おい、あんたが家を見張っててくれ!」
オルスは子供たちと入れ違いになってしまう場合を恐れて村人に代わりに留守番を頼んで自分も子供達を探しに出発した。
「おいおい、困るよ。オルスさん。長老がみんな集まれって言ってるのに!!」
「待たせとけ!!」
長老の指示で一部の村人達は戦いの準備を始めていた。
ここには駐屯兵はいない。
巡回の軍団兵も滅多に通らない。
自分たちの身は自分で守る。それが辺境の寒村の掟だ。




