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天に二日無し  作者: OWL
第二章 天に二日無し ~後編~
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第4話 蛇神トウジャ

 巨大な蛇は女神達を呑み込もうと真上から襲ってきた。

人間達は周囲は警戒していたが、真っ暗闇の天井に注意を払っておらずそれに対処出来なかった。


しかしながら幸いここには大精霊ドルガスがいた。

神獣クーシャントとドルガスは間一髪横合いから飛び掛かって方向をずらし女神を守る事に成功した。


遅れて魔導騎士達が蛇に向かうものの巨体に弾き飛ばされて死傷者が多数出た。

マヤが魔術で岩の槍を作り貫こうとしたが、激しくうねる体が弾き返す。

どこからか銀光が放たれ、怪物を貫くと鼓膜が破れそうになるほどの悲鳴をあげた。

さらに縛霊索の神器で絡めとられそうになり、アトラナートとアトラナータが糸を出して動きを制限すると遂に蛇は河の中に逃れて姿を隠した。


「エーゲリーエ、どうですか?」


エイメナースが問う。


「駄目。この河は生命力に満ち溢れすぎてて見通せない」


さざ波が立ち、まだ近くにはいるようだがそのうちそれも収まった。


「まだ警戒した方がよろしいでしょうか」


マクシミリアンが問うた。


「そうね。お姉様はあの蛇の事知ってます?」

「ええ。貴女達が生まれるよりずっと昔の事。モレスと敵対し、巨大な力から古代人にも信仰された蛇の怪物です。そこの魔術師の杖にからまった蛇や紋章に使われている蛇はおそらくあの怪物を指したものでしょう。何度倒しても河の中から復活した為不死の神と崇められていました。ここで戦っても勝ち目はありません」


太陽神といえども古代の広く深い河底にはその力が届かなかった。

戦いに長けた神ではないエイメナース達には対抗出来ない。


「しかしここは地上へと繋ぐ要衝です。失う訳にはいきません」


マクシミリアンはどうにかならないかと思案した。


「ではグラキエース殿に相談してみなさい。彼女なら河を凍結させてあの蛇を封印できるかもしれません」


マクシミリアンは頷いて伝令を出した。


「アイラクーンディアはあの怪物と手を組んだのでしょうか」

「可能性はありますね。私達を取り込めば地獄門の結界に妨害されずに地上へ出ていけるかもしれません。ただ・・・」

「何かお気にかかる点が?」

「地獄のああいった怪物達は古代の英雄達が苦戦の末倒し、封じ込めたもの。アイラクーンディアがどうにかできるものとは思えません」


自分が食われるかもしれないのにそんな危険な真似をするだろうか。


「もしそれだけの力を手に入れていたらこの子でもどうにもならないかもしれません」


 ◇◆◇


 立ったまま気絶していたイルンスールはそのうちふらっと倒れて友人に抱きかかえられていた。

ぺちぺちと頬を叩かれてようやく覚醒する。


「はっ、ナジェスタ」

「起きた?もう怖い蛇はいないよ。たぶん」

「たぶんってなに?」

「そこの河の中にいるかもって。わかる?」


ナジェスタに隠れながら河を見てみたが、イルンスールにもわからなかった。


「出番が来るまで地上で待ってたら駄目かなあ」

「バラバラになるとかえって危ないよ」

「そうだよねえ」


士気に影響するので人前で本音は喋れないが幼馴染のナジェスタにはつい弱音を吐いてしまった。

河原の哀れな子供達も見捨てられないので本気ではない。


「ナジェスタは子供の事心配にならない?」

「もう大きいもの。平気よ。私や夫に何かあっても一人で生きていけるでしょう」

「まだ成人前でしょ。遊牧民は強いねえ」

「山奥で五歳で一人暮らししてた子が何言うのよ」

「自分でもあの頃の方が強かったと思うよ」

「何も知らなかった頃より成長したってことよ。あの頃に戻りたい?」

「まさか。今の方が幸せ」


といってはいるが何処か陰りを感じてナジェスタは励ました。


「もっともっと幸せな事あるから、まだまだ満足しちゃ駄目よ」

「それはそれとして今は不幸と恐怖のどん底なのでここから離れてもいい?」


 ◇◆◇


 一方、先遣隊は泥沼に道を塞がれていた。


「こんな所なかった筈なんだけど」

「河が氾濫してこっちに流れて来たのかも」


レナートが空を飛んで上から先の方を見ようとしたが、途中で丘や鬱蒼とした茂みもありどこまで沼地が広がっているかはっきりとは掴めなかった。

ひとまずロスパーが見覚えがある場所を探す為に10名ほどで沼地に入る事にした。


「重武装のアルハザード達はここで待っててね」

「しゃーないな」

「スリクとお爺ちゃんもね」


神鷹を失ったスリクは姿隠しの指輪を使う事くらいしか出来ないが、この世界の怪物に効果は期待できなかった。


「攻撃的ではないけど亡霊もうろうろしているし、私も行きましょう」


ズボン姿のラターニャが同行を申し出て、ブルクハルトも護衛の為ついてきた。


「俺も行くぞ」

「ドムンも?重くないの?」

「多少は術を習ってきた。自分が踏みしめる場所くらいなら固められる」

「じゃあ、いいけどボクよりロスパーを守ってあげてね。いこ、エンリル」


一時期まったく口を利いて貰えなかったドムンだが、今回はまともに返答が返ってきただけよしとして同行した。


しばらく歩くと霧が立ち込めてきて一行を包み込んだ。


ウジャト、古代エジプトの蛇の女神から

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2022/2/1
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