番外編②:百獣の母
イルンスールはウカミ村で氷神と出会った。
貸し出している月の舟で彼らはやってきたのでそこには大勢知り合いがいた。
「あらまあ、お義父様もいたんですね。アルヴェラグス様は?」
「あいつは妹の国を立て直そうと尽力している。妹の子が何やら妙な怪物になってしまっていてな」
話によると人間の母体から生まれたとは思えない姿だという。
「ひょっとしたら見誤っているかもしれませんよ」
「というと?」
「こちらの地域はバルアレスと違って随分マナが濃厚みたいです。だからいろんな霊体が誰の目でも見えるように顕在化しているんです。それを排除すれば可愛い赤ちゃんがいるかも」
そう聞くとエドヴァルドやレナート達は沈痛な顔から一点して喜色を浮かべた。
「本当か?」
「とりあえず見てみないと」
「じゃあ、行こう。すぐ行こう」
レナートがイルンスールの手を取るとびくっと震えた。
傍のクーシャントが怒って咆哮を上げた。
「な、なに?いけなかった?」
「ううん。びっくりしただけ。冷たくて」
「あ、そうか。御免ね・・・」
「こちらこそ。そっちの子もおいで」
声をかけられたのは後ろでびくびくしているエンリルだった。
注目が集まると気を取り直して虚勢を張る。
「な、なんだってんだ?」
「大丈夫、噛まないからほら」
イルンスールはしゃがんでちちち、と呼んだ。
「あのね、エンリルはペットじゃないんだから。そういう扱いは・・・」
とレナートがいう傍からエンリルの方が近づいていきしゃがんだ。
「よしよし、いい子だね」
喉を撫でてやると気持ちよさそうな声を上げた。
「ちょっと。どういう事?」
「いや、俺達にとっては神獣はその・・・いちおう尊ばないといけない相手で」
「この子は違うじゃん!」
「うーん」
「まあ、いいからいいから」
されるがままのエンリルに嫉妬してレナートは引き離した。
「こいつはね、あんまり撫でてるとそのうち発情して襲ってくるから構わない方がいいよ」
言葉を理解しているのかクーシャントが唸って間に入ってくる。
「しねーよ!」
濡れ衣を着せられたエンリルは大いに反発した。
そのあとカイラス山に寄って母達を預けた時、子供らに任せていた仔猫にも会ったが忘れられていて警戒された。
イルンスールには勿論懐いた。
「なんで!?」




