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天に二日無し  作者: OWL
第二章 天に二日無し ~前編~
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番外編:イルンスールの旅立ち

 イルンスールがマヤの要請を受けて地獄に行く事が決まり、ラリサから誰が護衛としてついていくかで揉めていた。


「地獄には私が行く。お前は残れ」

「はぁ!?何を言うんですか父上。俺の妻が行く以上、俺もついていきます」

「ダメだ。ラリサにはお前が必要だ」

「ラリサは父上が残ればいいでしょう」

「下らん事を言うな」


エドヴァルドとアルベルドは二人で言い争っている。


「お前はディアマンティスにも勝てなかった。お前では怪物から彼女を守れん。だが、ここで人心を安定させれば信仰の力でお前の妻を守れるだろう。護衛は私だけでなくアルヴェラグスもアルミニウスもマクシミリアン様もいる。心配するな」

「でも父上はいざとなればイルンスールより母上を優先するでしょう。貴方に俺の妻を任せられません」

「そんな事はない。ちゃんと守る」

「母上よりも優先すると言ってください!」

「お前の母親で私の妻なんだぞ」

「でも、もう亡くなってる!」

「私とお前達を命がけで守ったからだ!」


コンスタンツィアは己の霊体を飛ばしてエドヴァルドを守りつつ、肉体も暴漢から滅多刺しにされながらお腹の子供達を守って死んだ。


「きっと助ける。彼女も、エーヴェリーンも、イルンスールも。私は騎士として生きてきた。お前は違う、お前のやり方で人々を守れ」


アルベルドは納得しなかったが、イルンスールが説得した。


「もし帰るのが遅くなったらその時に来て。わたしに危険があれば伝わるはず」

「そう致しましょう。若、我々が第二陣として赴けばよいのです」


高齢の為、メッセールも待機組となりラリサに残る。


「ちゃんとまた会えるから」


最後にはイルンスールが説得してアルヴェラグスとエドヴァルドを先行させて安全を確認させた後、世界樹の力を使った転移でイルンスールも現地に赴いた。


 ◇◆◇


 転移先にはマヤと現地の帝国貴族らしき軍人、それに懐かしい顔が待っていた。


「あっ、ター・・・らっったー♪タッターッター♪」

「何言ってるのよ」


ごつん、とラターニャから突っ込みが入る。


「だっていろいろ不味いでしょ?」

「まあね。近くには知り合いしかいないからいいけど」


フリギア家はクーデターを起こし、失敗するとエイラシルヴァ天爵を攫って逃走したので帝国人達からは憎しみの対象になっている。


「随分な名前つけてくれちゃって」

「気に入ってくれた?」


イルンスールが幼い頃に気に入って髪飾りに使う事もある大輪の花の名だ。

雑草のようにしぶとく、へこたれず、一輪だけ大きな花を咲かせる。


「ふん、それより少し大きくなった?最後に会った時はあんなに小さかったのに」


最後に会った時は幼児のようだったのに、今は初対面の時くらいには成長している。


「い、いちおう結婚したし。あんまり小さいと旦那様に悪いし」

「それはおめでとう。アルベルドと結婚したわけ?」

「まあね」


久しぶりに友人に会った二人の為に周囲の者はいったん下がってくれた。


「よく来てくれたわね。他人と争うくらいなら自殺を選ぶような性格のくせに」

「えー、そこまで平和主義者じゃないよ。必要ならターラとだって喧嘩するし」


ぺしんとラターニャの大きなお尻を叩いた。


「私には絶対怪我させずに勝つ自信があったからでしょ。簡単にあしらってくれちゃって」

「まあまあ、こっちじゃ聖女みたいに思われてるって聞いたよ」


人々を悩ませていた怪奇現象はラターニャが片っ端から鎮めて回ったので、人々には救世主のように思われている。怪物の直接的被害にあったのは全体からみたら一部なので迷信深くなった人々は怪奇現象の方を恐れていた。


「それはあんたの方よ。せいぜい昔みたいにおしとやかに振舞う事ね」

「ええ?」

「出来るだけ努力はしたんだけど、人々は天爵様が帝国を救ってくださると思っているのよ」

「なんでわたしが?」

「ここの領主達は内戦ばかりで民衆はうんざりしてたのよ。怪奇現象だの怪物だの亡者だのは天爵が鎮めに来るって噂が流れちゃったの」


地獄への遠征軍について噂が漏れるのは避けられなかったし、情報を知っていた一部高官はイルンスールの到着を待って侵攻を開始すると知らされていた為、又聞きになった人々は天爵が全てを解決するという風に話が変わっていた。


「間違いでもないし、仕方ないわね」

「めんどくさ」


勝手に期待されて思い通りにならなかったと裏切られるのはうんざりしている。


「問題が解決すれば二度と会う事は無いわ。悪いけどみんなの期待を裏切らないようにしといて」


顔見世の時だけ、戦士や協力者に愛想を振舞って欲しいと頼まれた。


「じゃあ、ラターニャが傍にいて仕切ってよ」

「はいはい。ああ、そうそうスヴィータも来てるわよ」

「え?わざわざヘリヤヴィーズから来たの?」

「転移陣も復旧したし、空飛ぶマントもあるし」

「ああ、そういえばそんなものも贈ったねえ」


その後マヤに頼まれてとある村に行く事になった。


番外編を少しやった後、しばらくお休みして後編になります。

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2022/2/1
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