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天に二日無し  作者: OWL
第一章 地に二王無し ~後編~
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第10話 ウカミ村へ帰還

 ケイナン達の遺骨を発見後、レナートとソフィアは先にウカミ村にやってきた。

ソフィアと一緒に移動している天馬の群れが村人達を驚かせて警戒されては困るので、やや離れた地点で降りてから徒歩で村の入り口へと登っていく。


するとエンリルとジーンが走ってやってきた。


「ジーン!」


かなり久しぶりだったのによく匂いを覚えていて体当たりするようにレナートに抱き着いてきた。顔をぺろぺろと舐められて久しぶりにレナートは笑顔を浮かべた。


「なんだ、お前か」


少し遅れてきたエンリルがぶっきらぼうに言う。


「あれ、ボクの事よくわかったね」

「なんか匂いが違うから戸惑ったぞ」

「今日は男の子の日だから」

「なんだそりゃ」


エンリルは匂いをくんくん嗅いで首を傾げた。


「それよりファノを見つけてくれたって聞いたよ。ありがとう!」


レナートは抱き着いて感謝を示したが、エンリルはちょっと嫌そうな顔をした。


「なんか前と感触が違うぞ」


抱き返して背中を叩いたエンリルは体が硬いと文句を言った。


「まあいいじゃん。またブラシかけてあげるね」

「おう」


 ◇◆◇


 それから少し遅れてスリクとファノもやってくる。


「レン!」「おにーちゃん!」


ジーンに引かれなくてもファノは意外と足取りがしっかりしていた。


「スリク、ファノ!無事でよかった」


三人は抱き合って再会を喜び合った。


「ファノは大きくなったね」


抱き上げるのも一苦労だ。


「レンもちょっと大きくなったか?」

「そうかな?ヴォーリャさんから聞いたけどファノの頭の包帯って・・・」

「ああ、ヴォーリャさん達に会って来たのか。ファノのはな・・・なんか角生えてきた」


指摘されたファノはちょっと暗い顔をする。


「からかうような奴はいないけど、ファノは周囲の空気に敏感でな」

「大丈夫大丈夫お兄ちゃんなんてこうだぞ」


レナートは女の子になったり、巨人化しようとして、下着は神器じゃないと気付いて慌てて取りやめ、逆にファノくらいに小さくなってみた。


「?」


ファノの反応は特にない。


「あれ?」

「なにか違う?」

「うーん、ファノ的には見た目の違いはわからないか。そりゃそうか」

「それよりお父さんが・・・」

「うん、聞いた。一緒にいてあげられなくてごめん」


レナートはそれ以上何もいわずただファノを抱きしめて哀しみを共有した。


「オルスさんは竜を倒してから力尽きた。ドムンとシュロスさんが見届けて遺体は皆と一緒に埋めた」

「うん・・・信じられないよ」


そういえばほんとは遺体は火葬しないといけないんだよね、とレナートの脳裏に亡者の件が思い出されたが自分の家族の事となるとそんな事は出来そうもない。

今後、マヤを通じてバントシェンナ王から各地へ指示が行く事になるのだろうが、果たして守られるだろうか。単に火葬するだけだなく骨まで砕く必要があると。


「さ、家に帰ろう。俺もヴァイスラさん達と一緒に住んでるんだ」

「そうなんだ。そうだよね」


スリクも父親を殺されている。

以前には母親も殺されているし兄弟もいない。天涯孤独の身だ。

従兄なので一緒に住むのに不都合もない。


 ◇◆◇


 村への坂道を登りながらレナートは簡単に経緯を説明する。


「でね、飛行船は無くなっちゃったけど。東方の人達も一緒だし、数十人くらいなら妖精の民が森に住まわせてくれるって」

「そっか。でもここはエンリルもいるし、ラスピーも獣人の血を引いてたしバントシェンナ王も自治権くれたから今さら外国に行って肩身の狭い思いをしなくてもいいかな」

「そうだね。大精霊のお孫さんとも知り合えて獣人さんとの関係もどうにかなりそうだし。あ、でも毛皮とか使うと怒られるかも」

「防寒的には無いと暮らせないなあ・・・」


二人は一緒に歩いているエンリルを見る。


「まあ毛玉だけでも使わせてくれれば大丈夫か」


毛織物だけでも十分で皮まで剥ぐ必要はないかと思い直した。


「ところでやたらとトンテンカントンうるさいね」

「ああ、あちこちに潜んでた遊牧民の生き残りが集まってきてウカミ村を再建してるんだ」


大人はマリアやヴァイスラほか数人しか生き残っていない。

スリクやドムン達子供部屋にいた数十人が生存者のほとんどだった。

奴隷として売り飛ばされそうになった人も襲撃隊長のジェフスタインが死亡した事により売却がまとまらずまとめて処分されてしまっている。


 ◇◆◇


 村を囲う竜の骨の門をくぐり、懐かしの我が家へとレナートは戻った。


「レン!」

「母さん、ただいま」


スリクやファノと一緒に帰宅した事、レナートの表情からヴァイスラは説明が不要だと察した。


「貴女が無事で良かった」

「母さんも」


母子の再会は静かなものとならず、家に居た老人が口を出して来た。


「おいヴァイスラ、この子はなんじゃ。息子のレナートか?」

「だれ?」


スリクはともかくなんでよそのお爺さんが家に?とレナートは首を傾げた。

ヴァイスラがそんなレナートに老人を紹介する。


「この人はお爺ちゃんよ。オルスの父のホルス。昔の戦いで貴族に捕まっていたけど解放されたんですって。吃驚したでしょ?」


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2022/2/1
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