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天に二日無し  作者: OWL
第一章 地に二王無し ~中編~
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第21話 裸人教徒の村

天馬に荷物を乗せ換えた事でサリバン達とラターニャ達は一蓮托生となった。

サリバンも別れた後の出来事をレナートに伝えた。その中に裸人教徒の村も含まれる。


「裸だからって獣人さんに襲われないってことは無いと思うよ」


くすくすとレナートは笑う。


「そうですね」「うむ」


皆も同意したがラターニャは放置できないと主張した。


「獣の民は人口一万人以上の都市の破壊を大精霊から命じられました。小さな村は彼らのお腹が減らなければ襲われたりしないでしょう。人間を好んで食べる種族は一割もいませんし、憎しみや戯れに殺戮を楽しむ者もいずれ飽きるでしょう。ただ・・・亡者はそうはいきません。警告してあげなければ」

「おいおい、ラターニャ様。それはお人好し過ぎるぜ。俺たちゃ早くヴェーナに戻って大精霊達と亡者の打合せをして、それからカルロの嫁さんを探さなきゃ行けないんだ」


道中の村々に警告をしている暇はない、とソラは反対した。


「連れて行こうという訳ではありません。すぐ近くの村に警告するくらいの時間はあるでしょう。後は彼らに他の人々にも触れまわってくれるよう依頼すればいいのです」

「そりゃまあそうだが」

「では、構いませんね。まずは行動しましょう。レンちゃんの話ではいくつもの死霊魔術の系統があるようです。私の力が効かなかったのはそのせいでしょう。もっと多くの情報と時間が必要です」

「仕方ない。また今晩にでも話そう。あのガキ、他にもいろいろ知ってそうだ」

「チンピラみたいですよ。ソラ様」

「育ちが悪いんだ、勘弁してくれ」


 ◇◆◇


 裸人教徒の村へは面識があるギデオンが行く事になった。

護衛のイオとシオン以外の者達は近くの森で待機していたが、ギデオン達がすぐに戻ってくる。


「亡者ではないようですが大柄な女性と村人達が大乱闘していました」

「あらまあ、助けに行かないと」

「ええ、女性はかなり強いようでしたが、あの数では危険ですね」

「じゃ、ボクが天馬で行ってくる」

「「それは駄目だ!」」


サリバン達に止められる。


「天馬が一番速いのに」

「俺らが行く。待ってろ」

「はーい」

「ソラ様もお願いします」

「ああ、ブルクハルトはここを頼む」

「うむ」


サリバン達が女性を助けようとすぐに出かけて行ったが、レナートは霊体化してこっそり勝手についていった。


 ◇◆◇


 現地に着くと女性は風車小屋の上に陣取って、梯子をかけて登ろうとしてくる男達をあしらっていた。


「お前達、いったん静まれ!」


サリバンが後ろから声をかけたが、興奮状態の暴徒は止まらない。

女性はかなり疲れてきたのか、風車小屋の屋根からさらに風車の上へと逃げようとして足首を掴まれて引きずり降ろされた。


(これは不味いよね)


皆は取り押さえる為の道具は持っていない。

暴徒相手に剣や弓では殺してしまう。それはさすがに躊躇われ、サリバン達はすぐには手を打てない。一刻の猶予も無いのでレナートはすぐに氷神化して神域を作って全員取り込んだ。


”静まりなさい、お前達”


インパクトが必要だと思って現象界の姿を大きくして現した。

風車小屋の女性の傍へ飛んでいき、自分の後ろへ庇った。


期待通り、皆びっくりして動きを止めてこちらをみやる。

注目されて仰ぎ見られるのは悪くない気分だ。

生意気だったソラも唖然としている。

信徒の多い北方圏以外でも意識的にやれば巨人化出来る事がこれでわかった。


「あ、あなた様は・・・?」


恰幅のいい裸人教徒が声をかけてくる。


“・・・醜い”


(うえええ、なに、この人。気持ち悪い。目もお腹も、その下も)


若くて力仕事をよくやっているであろう男はともかく、この男は村長なのか現役を退いたのか、ろくに仕事をしてなさそうで太っている。


(うう、スヴェトラーナさん達がいればこんなの排除してくれるだろうに)


“わたくしは氷神グラキエース。そのほうら頭が高い。ひれ伏せ”


仕方ないので自分で命令した。

レナートは逞しい男と可愛い女性と優しいお姉さんが大好きである。

そして肥満の男はその精神性も含めて大っきらいで視界にも入れたくない。

侮蔑を隠そうともせず、レナートは村の男らを見下ろした。


「おお、ついに待望の我らが神が降臨なされたか!」


男達は狂喜して言われた通りにした。


(この人らの神にはなりたくないなあ)


“貴女はこちらへ”


「お、おお。悪いな」


“お前達、この見苦しいブタ共に服を着せなさい”


村の女性達は各家の扉からこっちをこっそり覗いていた。

言われた男達は驚愕に目を大きく開く。


「なにをおっしゃいます、我が神よ!」


“わたくしはお前達の神ではない”


「我々はずっと待ち望んでいたのです。太古の、人間の文明に汚染されていない生まれたままの姿の、真の自然の神を!」


“生まれたままの姿?”


急いでいたので巨大化した後の事を考えていなかった。

マントの下の服は下着も含めて弾け飛んでいた。


「やーーーーー!みるなーーーー!」


神器の黒いマントが自動的に大きくなって体を隠していたのでまだマシだったが、全裸に近い女神様だった。彼らが待望していた神と間違われても仕方ない。


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2022/2/1
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