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天に二日無し  作者: OWL
第一章 地に二王無し ~中編~
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第15話 神々の議事堂②

レナートは泣きつかれて眠ってしまい、起きた時には自分が幼児に戻っていた事に気が付いた。


「あ、御免なさい。ずっと抱いていてくれたんですか?」

「ええ、いいのよ。久しぶりに子供を抱けて嬉しかったくらい」


母なる神ゆえ、子供を抱くことは苦にしない。

抱かれた時の感触で分かったが、ヒトと違って大地母神には胸が6つある。

多くの子供を育てる為だ。


「さて、もう質問はいいかね?」


ウィッデンプーセはまだ待ってくれていた。


「あー、んー、せっかくだからもうちょっといいですか?」

「いいとも」

「じゃあ、お言葉に甘えて。あの、ボクの体ってどうしてこうすぐ変化しちゃうんでしょう?」

「儂には大差ないように思えるが」

「え、そうですか?明らかに小さくなってますよね」


先ほどまでノリッティンジェンシェーレより少し小さいくらいだったのだが、今は赤子のように腕に抱かれて胸にすっぽり収まっている。


「このお爺さんは耄碌してるから神としての存在の大きさしか見てないのよ」

「出来れば普通の人の視点での話をして貰ってもいいですか?」


レナートも霊視出来るので言ってる意味は通じたが、今は現象界の一般人の視点の話をして欲しい。


「儂にはそういう感覚はわからん。彼女のように人間と恋をして子を作った事もない」

「えっとですね。ボクの体って地上では性別が変わったり、大きくなったり小さくなったりするんですよ。物理法則に反していておかしいんじゃないかなって」


乙女的にズシンズシン足音を響かせて歩くのが恥ずかしいのでなんとかしたい。


「君がまだ力を制御出来ていないだけだ。北の民の信仰が集まって余計難しくなったのだろう」

「えー、力を制御すると軽くなったりするんです?」

「無論そうだ」

「無論なんだ・・・ちょっと人間の常識と違うかも」

「そうか?ヒトも力と質量の関係は解明した筈だが。結局のところ世界の総量は常に不変だ。外部の力を得て成長した時はともかく人も己の世界の中では一定なのだよ。君は現象界だけでなく第一世界から第三世界全てに偏在している。現象界で物理的に重くなったということは現象界に干渉しやすいように異界から力を引き出したということだ」


知の探究者として興が乗ってきたのかウィッデンプーセは黒板のような物を出現させ、複雑な式を書いた。もちろんレナートにはちんぷんかんぷんである。

ウィッデンプーセはその表情で通じてない事を悟る。


「つまり、簡単にいえばマナとは力であり、質量に変換しうる。現象界では知覚出来ていなかっただけで君の総量は変わらない。重量が気になるなら現象界で変換されてしまわないように絞ればよい」

「全然わからないです」

「・・・残念だが、儂が君に教えるのは難しいようだ。まずはヒトの書物で基礎から学ぶと良い」


残念ながらレナートは生徒としてウィッデンプーセに相応しく無かった。


「人間もお爺ちゃんほどの知識を得る事が出来たんですね、凄いや」

「うむ、彼女はそこらの神よりも生命の神秘を解き明かす事に成功した。それゆえもっとも強力な死霊魔術を開発できた」

「え、死霊魔術師の一人なんです?」

「結果として応用可能だっただけだ。それゆえ彼女は己の力に恐怖した」

「へー、その人の本を読めば亡者もなんとかなったりします?」

「さあ、研究してみなければ結果はわからないだろうな。ただ、地上を席捲している亡者は別系統の開発者の手によるものだ。基礎研究は流用されたかもしれないが」


せっかくの機会なのでもう少し学べればいいのだが、残念ながらレナートでは基礎知識が無さ過ぎてウィッデンプーセから教えを受けるのは難しそうだ。


「もしまた来れたら教えて貰いに来てもいいですか?」

「構わない。儂の方からも一つ頼んでもいいか?」

「ええ、勿論」

「もし、儂がこの世界から消える時が来たら君の中にお邪魔してもよいかな?」

「死んじゃったらボクの子供になりたいということですか?」

「神霊的な意味でな」


若干語弊があるのでウィッデンプーセは訂正した。


「構いませんけど、なんでまた」

「先ほどいったように森の女神が訪れた事で天界は割れ始めた。我々がこうして数千年振りに議会を開くようになったのもそれが理由だ。帝国人の多くが死んで古き神は力を失いつつある」


レナートが北の民の信仰を得て力が増大したのと裏腹に人々が死んだ為、多くの神々が力を失い消滅しつつある。


「でも他にもいろんな国があるのに」

「南方圏の国々は壊滅した」

「壊滅って?」

「千年振りにオット・パンゴ火山が噴火したのだ」

「火山の噴火くらいで壊滅しちゃうんです?」

「衝撃波が星を一周するほどの巨大な爆発だ。地軸が傾き、その影響で各地で天変地異が起きつつある。君も地上で女神としての力を使うのは慎んだ方がいい。二度とウェルスティアを脅してはいけない」


ばれてた、とレナートは首をすくめる。


「本来他の地域で降るべき雨を奪ってしまった。これがどういう悪影響が出るかは今すぐにはわからない。君は誓約に加わっていないので仕方ないが、我々が力を振るえば再び地上は破壊される。それを避けねばならない」

「神様でも元に戻せないんです?」

「やろうとすればまた勢力争いになる」


予言の神が地上への介入は全てのものにとって悲惨な結果を招くと告げ、神々は手を引いた。


「その件がなくとも儂は本来、時の神だ。古来から人々に正確な時間を告げる事を役割として必要とされた。しかし、科学技術が発達し街角に時計が設置され、人が携帯可能な時計さえも誕生して儂は忘れ去られた。つまり死すべき時が来た」

「じゃあ、地上に戻ったら神殿建てて皆に信仰してもらいましょうか」


無邪気なレナートにウィッデンプーセは苦笑する。


「君は優しい子だな。だが、もういいのだ。みっともなく延命したくもないし、神々が再び醜く争う姿も見たくない」

「じゃ、将来ボクがきっと産んであげます。時計の神様とかがいいのかな?」

「さあな。いずれ人々の思いが新たな形を作るだろう」


レナートの聞きたい事はだいたい聞けた。


「あ、そうだ。さっきの本書いた人の名前を教えて貰えますか」

「コンスタンツィア。・・・コンスタンツィア・シュベリーン・ダルムントという」


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2022/2/1
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