第51話 竜殺し
地下で地竜が暴れるたびに、竜顕洞は激しく揺れ、全面崩落の危機が高まってきていた。
そのおかげかどうか敵は増援を送るのを止めていた。
地竜エラムは最深部で荒れ狂い、迷宮の壁は破壊され、地下神殿も叩き潰されている。
岩を噛み砕き吐き出しては逃げ遅れた兵士がその岩石で叩き潰されていく。
そして目覚めさせられた小鬼も同様に巨大な爪で引き裂かれていた。
「婆さんも思い切った事したなあ」
ドムンも荒れ狂う地竜を見つめていた。
長い爪を突き出して体全体で回転し岩を吹き飛ばしている。
とても近づくことすら出来ない。
「本当に竜を殺せるんですか?」
「・・・さあなあ、親父はそう信じてた。昔は馬鹿馬鹿しいと思ったもんさ。だが、やるしかない」
エラムは門に向かって何度も体当たりをして、こちらに気が付いていない。
オルスはその間にドムンに吸魂槍を取って来させ受け取った。
「世の中いろんな竜がいるらしい。東の国の竜騎士は空を飛ぶ竜に対抗する為に、自分らも空を飛んで戦う術を身に着けた。俺達の祖先は別の手段を取った」
「どうやるんですか?」
「ひとつは逆さになっている鱗を剥いで急所をさらけ出す事。だがこいつは危険だ。祖先は物理的な方法で殺すんじゃなくて、夢幻界の竜に直接攻撃する方法を編み出した」
「夢幻界?」
「機会があったらヴァイスラに聞け。今はな、人間の魂を込めた槍で竜を叩きのめすと知ればいい」
オルスはもう死にかけていた。
その体から魂が離脱しそうになって初めて祖先が残した技の奥義を知った。
朦朧とする状態になるとかえって竜の本体、急所が見えてくる。
「魂を槍に込めて竜を貫く。この技で俺達の祖先は犠牲となったが、死後に大地母神の神兵となる事を約束された。魔術師のいう現象界では竜の体は最強だが、魂の世界では同じ生物に過ぎない。人間だろうが竜だろうが強い奴は強い、弱い奴は弱い」
分かったかと言われたドムンは頷きオルスの奥義を見守った。
「ドムン、いいか。人間はしぶとい。魂は尽きることは無い」
こくんと頷くドムンに教えるように、ゆっくりとした動作でオルスは槍に自分の魂を吸わせた。
「だが、こいつは吸いつくしちまう。気軽に使うなよ」
「はい」
「どうせ死ぬ命だ。俺はもういいけどな。さて、我が神に命をお返ししよう」
”我が一撃に貫けぬもの無し”
オルスは魂を喰らう槍に己の全てをかけ、それを解き放ち、地竜を貫いた。
オルスの放った神槍は地竜を再び眠りにつかせ、彼もまた永遠の眠りについた。
享年四十三歳。
彼を看取ったのはドムンとシュロスだけだった。
彼らは伏せていた生き残りの同胞を助け出し、ヴァイスラ達と合流して籠城戦を開始した。




