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天に二日無し  作者: OWL
第一章 地に二王無し ~前編~
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第15話 アニマ・アニムス

 サリバン達が神器の習熟訓練をしている間、レナートは体を鍛え直していた。

獲物をろくに見ずに栗鼠の頭に命中させたり、短弓の扱いは上手いのだが、剣や槍はいまいちだった。しかし回避はなかなかでドムンとスリク達はなかなか当てる事が難しくなっていた。


「すばしっこいな!」


ドムンとスリクが二人がかりで襲っても先読みしているかのようにひょいひょいと躱していく。しかしレナートが反撃しようとすると簡単に防がれて、押し返されバランスが狂い一本を取られた。


「もうお前はひたすら躱すだけにしとけ」

「むー、そんなのつまんない」

「時間を稼いでくれれば敵は俺が倒すから。まあそういう状況にならないのが一番なんだが」


押し返されて倒れたレナートにドムンが手を貸し、その腕を掴んだレナートはぺしぺしと叩いた。硬い感触が返ってきて、レナートはその太さと硬さを自分の者と比較して脱力してしまう。


「それはそうなんだけどさ。ドムンは腕が太すぎ!」

「蛮族の方が腕力は上だろう。オルスさんのいう通り基本的には接近戦は避けるべきなんだろうな」

「じゃあ、もし接近戦になったらボクが囮になるからその間に弓で狙ってくれればいい」


ドムンはその状況を想像してみたが、絵面的に少し情けない。


「それよりレンはどうやって俺達の攻撃を躱してたんだ?」

「ボクは霊体の動きが分かるから。スリクはちょっと読みにくいけどドムンは読みやすいかな」

「どういうことだ?」

「実際に体が動く前に次にどう動こうとしているか心の中で考えちゃうでしょ?難しい言い方をすると現象界での動作に移る前に霊体は次の動作に入ってるから、それでわかる」


回避は先読みでなんとかなるが、攻撃はレナートの身体の能力の限界で押しきれない。


「そういうのって魔術が使える人はみんな出来るのか?」

「さあ、どうなの?ヴォーリャさん」


遠征にはヴォーリャもついていく事になったのでこの訓練には彼女も付き合っている。


「アタイにゃ無理だ。二つの世界を同時に見ながら戦うなんて器用な真似は出来ない」

「ヴォーリャさんは魔術も使えて戦士としても凄いよね。蛮族にもそういう戦いが出来る奴がいるんだよね?」

「ああ、そうだ」

「じゃあ、ちょっとドムン達に稽古つけてあげてくれない?」

「そうだな。アタイは滅多に使わないが搦め手を使ってくる奴もいるから慣れておいた方がいいだろう」


そういってヴォーリャは愛用のグレイブを手に取った。

彼女の持つ長柄武器には槍の穂先の代わりに広刃の剣先がついている。腕力においては蛮族に勝ち目がないので遠心力と重量で叩き切る戦術をヴォーリャは取っている。


ヴォーリャはドムンとスリクを同時に相手にし、最初の一撃で二人まとめて薙ぎ払った。

二戦目はスリクは弓を持って遠くから射かけて牽制してみたが、空中に薄い水の膜で出来た盾が出現して防がれた。ちなみに矢じりの先は潰してある模擬戦用のものだ。


「不意打ちでもなけりゃ遠隔武器は通じない。もっと威力があれば貫けるけどな」


ヴォーリャが話している間にドムンが反対側から剣を振るうが、腰に下げた竹筒から勢いよく噴出した水がドムンの視界を塞ぎ、グレイヴを肩に振り下ろされて一本取られた。

二人ともまったく相手にならず文字通り大人と子供の差があった。


「さすがヴォーリャさん」

「みんな分かったか。蛮族と戦うのは無謀だって」

「へーい・・・」


ドムン達は自信がついてきた矢先に完敗に終わってしまった事で打ちひしがれている。

昔蛮族たちに攫われていた事もあるヴォーリャに敵わないようではとても戦えない。


「だが訓練は続けろ。三年前の時のように守るだけならどうにかなる」


 ◇◆◇


「今日のヴォーリャさん、なんか厳しいね」

「遊びじゃないからな」


休憩中レナートはこそこそとドムンにヴォーリャの態度について話した。


「それにしてもよくヴァイスラさんが俺についていくの許してくれたな」

「場合によってはグランディお姉ちゃんにも会いに行くからボクがいかないと話しにならないし」

「ヴァイスラさんもついてくるかと思ったんだけどな」

「家族が任務に同行するのは禁止だからね。ヴォーリャさんもテネスさんとはいつも別行動してるし」


軍隊経験のあるオルスとマリアが仕切っているので辺境の村人が作ったにしては行動規則は厳しかった。しばらく休憩してから稽古を再開し、またふたりがかりでレナートを攻めたがさきほどよりも巧みに躱し、背後を取られても逆に先んじて牽制する余裕すらでてきた。


ドムンもスリクも段々熱が入り、ムキになりはじめた時に事故が起きた。

レナートが急にあらぬ方向に意識を取られて頭を向けた為、そこにドムンの木刀の一撃が入って昏倒してしまった。


「うわ、すまん。おい、レン。レン!?」


倒れたレナートを抱き起こしたドムンは揺すったがすぐには目覚めなかった。

見守っていたヴォーリャがドムンにあまり揺するなと声をかけた。


「スリク、エイラ先生を呼んでくれ。ドムンは木陰にそっと運ぶんだ」


しかし心配するほど重傷では無かったようで運ぶ途中にレナートは目が覚めた。

そして自分の状態を理解すると真っ赤になり、体も男の子から女の子に切り替わってしまった。


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2022/2/1
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