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天に二日無し  作者: OWL
序章 神亀雖寿 ~後編~
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番外編 三巨頭会談

 廃墟と化した帝都に獣人の長が揃っていた。

一体は複数の角に蝙蝠の羽が生えた巨人の女性。

もう一体は成人男性の倍くらいの背丈だがほっそりしていて皮膚がまるで木のようになっている山羊頭の獣人。そして最後の一体は象よりも巨大な白虎で彼だけはほぼ四足歩行の獣のようだった。

彼らの特徴で共通しているのは不気味な髑髏が首飾りのように素肌に埋め込まれている部分だった。それらはまるで怨嗟の声をあげるかのように音を立てて震えている。


「ようやく片付けが終わったか」


彼らはそれぞれ別の声帯を持っている為、意思の疎通は魔術で行っている。

かつては天柱五黄宮と言われた皇帝の居城、新年参賀に使われた大広間からは眼下の都市が見下ろせていた。延焼も収まり、積み上げられた人間の死体も焼け焦げて骨となっていた。


「いくらかはメシにしても良かったんじゃないか?」

「人間など南下すればいくらでも湧いて出てくる。秋の森に転がる木の実よりも、春の野原に咲く花々よりも尚多く」

「南の連中は俺の好きにして構わないんだな」

「構わぬ。だが、人口一万人以上の主要都市は全て破壊するがよい。人間の文字が読める半獣人共にこの都市台帳と地図を渡せ。人間共の統率力と兵器を作る知能は厄介じゃ。腹を満たすなら先に学者共から食うようにせい」

「シェンスクの連中は?」

「マズバーン大神殿の人間をサウカンペリオンまで送っていくそうじゃ」

「さすがに同胞が食い殺されるのを見るのはイヤか」

「それもあるじゃろうが、我々より疫病への耐性が低いからの。別行動を取る」


この帝都も多くの腐乱死体が積み重なっていた。

強靭な獣人たちでさえ、具合を悪くするほどに。


「それと内陸部はお主が監督して侵攻せい」

「めんどくせえなあ」

「やれ」


獣人の長達の中でも力関係には差があり、巨大な白虎が一番下だった。


「ヤク、あんたからもなんとかいってくれよ」

「・・・」

「寝てんのか?」

「・・・おんしは自力でこの都を落とせなかった。それくらいはやれ」


白虎は屈辱に大きく吠えたが、二体とも意に介さなかった。


「・・・・・・シェンスクの連中が戻ってきたらやらせりゃいいだろ。うちの連中はもう勝手きままに散り始めてる」

「仕方ないのう・・・だが監督はお主がやれ。嫌なら南の土地も返して北に帰れ」

「ちっ、ヤク、あんたはどうする?」

「・・・・・・神殿は貰ってよいかのう。儂はのんびり暮らしたい。食らうわけでもない人間を殺す趣味もない」

「ヘルミア、どうするんだ?」

「駄目じゃ。例の神殿はマヤにやる。友人の所縁の土地じゃというし。娘達も竜神の巫女が祀られた場所は汚して欲しくないと考えておる」

「・・・汚すつもりはない」

「参拝なら勝手にするがよい。大神殿と天の牧場への不介入は皆に徹底させよ」

「うむ」


ヤクと呼ばれた山羊の獣人はのんびりと返事した。


「まさかあんたがまだ現世に留まっていたとはな」

「・・・・・・精霊界に留まれるならともかく地獄か天界のどちらかにいくと思ったら、少々嫌気がさしてのう」

「そうなのか?誰がそんなことを?」

「昔シェンスクにいたシャフナザロフという魔術師がそう申しておった」

「なら俺も死にたくはないな。で、ヘルミアは西、俺は東と南、あんたはどうするんだ?」

「・・・ワシも仲間も別に人間を殺して楽しむ趣味は無いからのう。のんびりさせて貰えばいいがドルガスばかりに働かせるのも悪いかのう」

「爺さんは爺さんらしくして貰っていいが、縄張りは自然の成り行きに任せるぞ」

「・・・弱肉強食は自然の掟、虎が山羊を食うのも道理、仕方あるまい。じゃが、山羊を食いつくせば共倒れになることを忘れずにの」

「俺達は人間と違って腹が減った分しか食ったりはしない。それにとろくさい人間どもがいる間は他の連中も簡単な獲物の方を狙うだろう」

「うむうむ、ならばよし。ではゆくがよい」


人口五百万人を誇った人類最大の都市圏を攻略し終わった彼らは各地へ散り、各国、各都市の徹底的な破壊を進めた。


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2022/2/1
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