表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

その3

 少し落ち着いた僕は双葉に話を聞きだしたのだけど、どうも以前友人とふたりで街を歩いている最中に、読者モデルをやってみないかとスカウトされていたらしい。

 それは僕と付き合う前から進んでいた話のようで、こっそり撮影に出かけていたりもしたのだとか。


「驚いた?」


「うん、そりゃあもう」


「えへへ、なら良かった」


 そう、本当に驚いた。

 まさか双葉がモデルとして表紙を飾るなんて…いや、綺麗な子であることはわかっていたし、実際双葉なら何の不思議もないんだろうけど。


「…………」


 もう一度、手渡された表紙をまじまじと見る。

 銀色の髪。日本人離れした容姿。綺麗な笑顔。

 どこを取っても非のつけ所がない。本当に完璧と言える美貌の持ち主だ。

 これならきっとこの雑誌は飛ぶように売れることだろう。学校の話題だって、きっと双葉のことでもちきりになるに違いなかった。


「や、やだ。ハルくん。じっと見られると恥ずかしいよ…」


 そんな声が聞こえてくるけど、僕の耳には届かない。

 改めて双葉の容姿の良さを見せつけられ、呆然と表紙の中の双葉と見つめ合う。

 本当に、綺麗だ。素直そう思った。



 ―――こんな子と僕は、釣り合っているんだろうか



 同時に浮かんでくるひとつの疑問。

 それは確かに楔となって、僕の心へと打ち込まれる。



 この日から、僕は双葉の顔をまともに見れなくなっていた。






「ねぇハルくん。今日は一緒に帰らない?」


 僕の席の前に立った双葉が、そんなことを聞いてくる。

 長い髪が僅かに揺れて、彼女の腕をくすぐっていた。


「いや、今日はいいよ。用事があるんだ。ひとりで帰ろうと思う」


 目をそらしながら僕は言う。

 すぐに席を立ち上がると、双葉を避けるように教室の外へと向かっていく。


「あ、ハルく…」


「ねぇ式守さん。今日一緒に遊びにいかない?」


 声をかけてこようとしていたようだけど、それより先に同級生が双葉に声をかけたようだ。

 人当たりのいい彼女では、きっと振りほどくこともできないだろう。

 少なくとも時間稼ぎにはなる。僕は振り向くこともなくそのまま教室を抜け出して、生ぬるい風が吹く廊下へ飛び込んだ。




「あっつ…」


 校門までの道のりは、強い日差しに照らされていた。

 季節は7月。もうすぐ夏休みに入るとはいえ、夕方だというのにとんでもない暑さだ。

 肌にはじんわりと汗が浮かび始めており、これから先続く猛暑のことを考えると、辟易せざるを得ない。


 まぁそれを差し引いても、僕はうんざりしていたわけだが。

 本来自分に向けるべき怒りを責任転嫁するように、僕は上を見上げてこちらを照らすお天道さまを睨みつけた。


「なにしてるの?」


「え?」


 途端、聞こえてくる誰かの声。

 なんだろうと振り向くと、同時にピュウと風が吹く。

 蒸し暑さを感じて目を細めるも、突風になびく銀の髪が、僕の視界をくすぐっていた。


「双葉…?」


「残念、外れ」


 短い否定。女の子の声。

 その子はコツコツと足音を立てながら、こちらへと近づいてくる。

 双葉ではない銀色の髪の持ち主。そんな子の心当たりは、僕にはひとりしかいない。


「一葉、か」


「はい、そっちは正解」


 一葉は僕の前に立つと、小さな両手を僕の肩へと置いた。


「じゃあ、ご褒美あげちゃうね」


 そうしてつま先をあげると、僕の顔に自分の顔を近づけてくる。

 一瞬、顔は双葉と同じだななんて、当たり前のことを考えた。


「んっ…」


 そして唇が触れ合って、僕らは互いに瞳を閉じる。

 一葉とのキスは、少し塩っぽい味がした。


なんか面倒になったので、書いた先から投稿するスタイルに切り替えるなり

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 悪い娘。 [一言] 最高です。
[一言] 姉「今が好機ッ!!」 妹「……解せぬ…」 これからも頑張ってください!\(^o^)/
[良い点] やりおったなッッ 虎視眈々とチャンスを拾い、ものにできるのが勝ちヒロイン!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ