8話 召喚魔法
結局、4人一部屋に泊まることになってしまった。深呼吸をして心を落ち着ける。
そうだ、疲れたフリをしてすぐに寝てしまおう。
僕は荷物を片付けると、すぐに眠ることにして布団に潜り込んだ。
外から何か言い合いをしている声が聞こえるが、何を言っているのかはよく分からない。
そして部屋の灯りが消えた後、何者かが布団に潜り込んできた。僕は目を瞑って何事もなかったかのようにやり過ごす。
次は何者かが僕の布団の上に覆いかぶさって来た。だめだ気にするな気にするな。
すると、今度は逆方向から布団に潜り込んできた。落ち着け、落ち着け。
そうこうしているうちに僕は疲れのせいもあって眠りに落ちていた。
翌朝、起きてみると、僕の寝巻きは剥ぎ取られ、3人が僕に密着した状態で眠っていた。
僕はそっとそこから抜け出すと、服を着替えてそっと部屋を出た。
僕はロビーでコーヒーを飲みながらくつろいでいると、3人がやって来た。
「なんだニコル、起きていたのなら起こしてくれたらいいのに」
「あれだけの狼藉をしておいて、何か言う事はないの? 」
「ごめんなさい。ニコルを見ているとついね」
「とにかく、こんなことになるなら、今度からは僕は別の部屋にしてください」
「いや、それは困るわ!」
クレアは強く主張した。
「ニコル、それはだめだ!」
アイリスが言った。
「え〜、ニコルがいないと私眠れないよ」
シャルが言った。今までどうやって寝てたんだよ。
「わかったわ、ニコル。みんな、ちゃんと自分のベッドで眠る。でも部屋は一緒。それでどう? 」
「本当に? じゃあ、今回だけは目を瞑るよ」
「よかった〜! 」
シャルが飛び上がって喜んだ。
「まあ、それはそれとして、今日はどうするんだ? 」
誤魔化すようにアイリスが僕に言った。
「ああ、それなんだけどシャルの要望もある事だし、フェンリルを召喚しようと思う」
「それって、小さくして飼う訳? 」
「飼うと言うのは正確じゃない。常に召喚しておいて用心棒的な事をしてもらおうかと思っているんだ」
「でも、小さくしてもフェンリルはフェンリルよ」
「子犬ぐらいの大きさにすれば大丈夫なんじゃないかな」
「それなら大丈夫かもね」
そして、僕達は街の外れに移動して、広場を見つけた。
「じゃあ、召喚するよ」
僕はそう言うと、足元に魔法陣を作り、フェンリルを召喚する魔法を唱えた。
すると魔法陣が光り輝き、そこからフェンリルが現れた。
「あいかわらず物凄い魔法ね……」
クレアが呟いた。
「わが主よ、再びお会いできた事を光栄に思います」
フェンリルは言った。
すると、シャルがもうダッシュしてフェンリルに抱きついた。
「もふもふ、もふもふ、ふふふ」
「我が主よ、これは一体? 」
「……まあ、しばらくシャルの好きにさせてあげてよ」
「かしこまりました」
そしてかなりの時間、シャルのもふもふは続いた。時折フェンリルから助けを求める視線があったが、僕は目をそらした。
「ふ〜、もふもふ成分補給完了! 」
どうやらシャルは満足したようだ。よくみるとクレアとアイリスもフェンリルをもふもふしていた」
そして、ようやく3人のもふもふが終わると、フェンリルはぐったりとしていた。
「主よ、このような目的で我を召喚したのですか? 」
「いや、お前を旅に連れて行ってやろうと思ってな」
「ほう、それは素晴らしいお考え、しかし無理なのでは? 」
「前回よりもさらに小さくなれるか? 」
「もちろんできます」
すると、フェンリルは小さな子犬ぐらいの大きさになった。なんだか狐に似ている。
「きゃ〜可愛い」
シャルが飛び上がった。
「これぐらいの大きさなら誰もフェンリルとは思うまい」
アイリスが言った。
「しかし我を召喚したままにするとなれば、膨大な魔力がに必要になります。大丈夫ですか」
「ああ、それは問題ない。お前の1匹や2匹の魔力など問題にもならない」
「それは素晴らしい、さすが我が主」
フェンリルは感服しているようである。
ここは結構広いので、もう一つ召喚してみよう。