2話 いきなりクビ
「ニコル、お前には『双竜の牙』を辞めてもらう」
宿屋でパーティーのリーダーである戦士のダスティンが僕に言った。
「何故?」
僕は言った。思い当たる所がない。
「お前のその幼稚な魔術は、俺達のパーティーにはふさわしくないんだよ」
「何を言っているんだ。魔物は倒しているじゃないか」
「このパーティーが飛躍するにはお前ではダメなんだ」
「そうだ、ニコル。これからは、もっと強力な魔法使いが必要なんだ」
副リーダー格の戦士のイーサンもそう言う。
「はっきり言ってアンタのしょぼい魔法じゃこれからはやっていけないの!」
治癒師のメリッサからも言われた。
「わかった。みんながそう言うならパーティーを抜けよう。しかし、後悔するなよ」
僕がそう言うと、
「後悔なんかするわけないだろう」
一同は爆笑した。
「もう、お前の後釜も決まっているんだ。ラルフ、来いよ」
ダスティンがそう言うと、一人の魔法使いが奥からやって来た。
「初めましてニコル君。いや、挨拶する必要もないな。もう君とは会うことはないのだから」
爆笑する一同。
「ラルフはお前と違って上級魔法まで使えるんだ。もうお前なんて用済みってわけさ。そうとわかったら、さっさと荷物をまとめて出ていけよ」
僕は荷物をまとめると宿屋を出て行った。
出ていく僕に対して元パーティーメンバーは哄笑を浴びせた。
僕は失意のもと、自分の泊まる宿屋を探した。
思えばいくつかのパーティーに臨時で雇われるのを繰り返した後に、正式にパーティーの一員として誘ってくれたのがダスティンだった。
当時はダスティンは頼れる兄貴分で、パーティーは良くまとまっていた。
僕は初級魔法しか使わなかったが、ダンジョンのどんな敵も倒すことができた。
僕はパーティーをクビにされた後、悔しくて宿屋のベッドの中で泣いた。