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お見合いしたくなかったので、無理難題な条件をつけたら同級生が来た件について【第八巻 スニーカー文庫より3/1発売!】  作者: 桜木桜
第七章

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第10話

「千春ちゃんや天香ちゃんはともかく、ひじりんは残念だね」


 歩き始めてから亜夜香はあまり残念ではなさそうな表情でそう言った。

 千春と天香の実家は関西なので、当然、一緒に初詣には来れない――そもそも実家が神社である千春は、実家の手伝いで忙しい。


 一方で聖は由弦たちと比較的距離の近い場所に住んでいるので、初詣には誘った。


「……いろいろと忙しいみたいだからな」


 宗一郎は苦笑しながらそう言った。

 聖は聖で、実家で年末年始にやることがあり――普段から付き合いのある人たちが来訪するため、それを出迎える準備が必要なのだ――で忙しい。


 だから初詣には来れない。

 と、そういうことにはなっている。


「家、近いんだし、少し詣でるくらいならそんなに時間掛からないと思うけどなぁ……」


 亜夜香は不思議そうに首を傾げた。

 橘家でも当然、客人を出迎えるための準備などがあるが……その辺りについて、亜夜香は自分の手でやるという発想はあまりない。

 指示と最後の確認だけすれば、後は使用人にやらせれば良いと思っているからだ。


 そしてその発想はあながち間違っているとは言えない。

 良善寺家も、良善寺家の家人だけで切り盛りしているわけではないので、聖が少し抜け出たところで大きな支障が生じるはずがない。

 

 だから聖の「忙しい」というのは半分本当で、半分は言い訳だ。


(……ダブルデートに付き合いたくない、か)


 由弦は聖の言葉を思い出し、思わず苦笑した。

 

 要するに気を使ってくれたのだ。

 もっとも、気まずい気持ちもあったのだろうが。


「わぁ……屋台がたくさん! お祭りみたいです!!」


 神社の前まで来たところで、愛理沙は手を叩き、楽しそうに笑った。

 道の両脇には初詣に来た人をターゲットにした屋台が立ち並んでいる。


 キョロキョロと辺りを見渡し、どんな物が売っているのか、興味深そうにしている。


「……とりあえず、参拝してからにしようか?」


 屋台から漂う美味しそうな匂いに釣られそうになった愛理沙を、由弦は軽く引っ張りながら言った。

 すると愛理沙はハッとした表情を浮かべる。


「え、えぇ……そ、そうですね。当然です」


 そしてすましたような表情を浮かべる。

 

 四人は寄り道せず、真っ直ぐ神社まで行き、参拝を済ませた。


「……今年はどんなお願いにした?」


 由弦が尋ねると、愛理沙は悪戯っぽそうな表情を浮かべる。


「去年と同じです。由弦さんは?」

「俺も去年と同じ」


 由弦と愛理沙は顔を見合わせて笑う。

 そんな二人に亜夜香が興味津々という様子で首を突っ込んできた。


「何々? 去年と同じって?」

「内緒だ」

「内緒です」


 由弦と愛理沙が笑いながら答えると、亜夜香は不満そうな表情を浮かべた。

 由弦と愛理沙が“二人だけの秘密”を持っていることに、仲間外れにされたような気持ちになっているらしい。


「えー、内緒にされると気になるなぁ……」

「どうせ、来年もイチャイチャしたいみたいな内容だろうさ」


 宗一郎が亜夜香を宥めるようにいった。

 あまりの言い方に由弦も愛理沙も一言言ってやろうと思ったが、おおよそ当たっているので何も言えなかった。


「せっかくだし、絵馬でも描かないか?」


 亜夜香を窘めた宗一郎は、由弦たちに向き直るとそう言った。

 彼が指さす方向を見ると、確かに絵馬が売られている。


「いいんじゃないか?」

「そうですね」


 宗一郎の狙いには薄々気付きながらも、由弦と愛理沙は頷いた。

 絵馬を購入し、その場で借りたマジックで願い事を描く。


 ――来年も婚約者と一緒に過ごせますように。

 ――来年も婚約者と一緒にいられますように。


 由弦と愛理沙はそれぞれ願い事を描き、専用の場所に奉納した。

 亜夜香はそれを覗き込むと、宗一郎の方を向いて笑う。


「さすが、宗一郎君。大当たり」

「だろ?」

「「……」」


 亜夜香と宗一郎に笑われ、由弦と愛理沙は思わず眉を顰めた。

 仕返しにと、二人が奉納した絵馬を確認する。


 ――叔父さんに良い相手が見つかりますように。

 ――弟の恋が実りますように。


「「……」」


 書かれていた内容は、自分ではなく他者の幸福を祈るという……非常に優等生な内容だった。

 これでは粗を指摘するのが難しい。

 もっとも、ツッコミどころが全くないわけでもない。


「弟の恋って、それうちの妹……」

「いやはや、ご利益があるといいのだがな」


 宗一郎は由弦の肩を上機嫌に叩いた。

 

 その後、四人はおみくじを引く。

 修学旅行ではあまり良い結果ではなかった由弦と愛理沙だが、今回は大吉だった。


 幸先の良いスタートに二人はホッとする。

 ……もっとも、宗一郎も亜夜香も大吉だったことから、ここのおみくじは殆ど大吉しか出ない疑惑もあるが。


「あれ? 愛理沙……破魔矢なんて買うのか?」

「はい。部屋に置こうかなと……変ですかね?」

「いや、変ではないと思うけど……」


 数百円で買えるお守りとは異なり、破魔矢は数千円はする。

 女子高生が自分用に購入するにしては、少し高めの買い物だ。


「お金には少し余裕があるので。どうせなら、効果が高そうな物がいいかなと」

「なるほど……?」


 由弦はイマイチ納得できなかったが……

 愛理沙は嬉しそうに破魔矢を眺めたりしているので、ヨシとした。


 案外、修学旅行で木刀を購入するような感覚で買ったのかもしれない。

 

「とりあえず、用事は終わりましたし……」


 宗一郎と亜夜香がお守りを選び、買い終えたところで愛理沙はそわそわとした様子で遠慮がちに切り出した。

 由弦は笑みを浮かべながら頷く。


「屋台、見に行こうか」

「はい!」


 嬉しそうに愛理沙は頷いた。

 由弦は宗一郎と亜夜香に「行くよな?」と目配せをする。


 二人は苦笑しながら頷いた。 

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