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第11話

「他に……して欲しいことはないですか?」


 愛理沙は由弦にそう尋ねた。

 しかし他にと言われてもそんなにすぐ思い浮かぶものはない。


「う、うーん……」

「……何でもいいですよ? 今日はあなただけのメイドさんです」

 

 愛理沙は由弦に対して身を乗り出しながらそう言った。

 同時に大きな胸が由弦の方へと、グッと突き出される。

 これにはさすがの由弦も一瞬だけ、邪な考えが浮かぶが……


(い、いや……まだ、そういうのは早いだろう)


 何とか理性で抑え込む。


「どうですか? ……何もないですか?」


 由弦が黙っていると、愛理沙は少し寂しそうに由弦にそう問いかけた。

 そんな聞かれ方をされると、由弦も何もないとは言えない。


「……じゃあ、膝枕、とか?」

「いいですよ」


 由弦の言葉に愛理沙はすぐに正座をすると、ポンポンと誘導するように自分の太腿を叩いた。

 由弦はそんな愛理沙の白い太腿に自分の頭を乗せる。


「どうでしょうか?」

「……うん、いい感じ、かな」


 由弦は愛理沙の問いにそう答えた。 

 膝枕自体は何度かしてもらったことはあるが、当然メイド服でしてもらうのは初めてだ。

 否、そもそもミニスカートの時にして貰ったのが初めてだと言える。


 下から伝わってくる、生々しい肌の感触に由弦は少しだけドキドキした。


「……そう言えば最近、千春さんにお見合いの話をされました」

「お見合い?」

「千春さんの子供と、私の子供で……お見合いというか、婚約というか、その、結婚をしたらどうかと」


 愛理沙の言葉になるほどと由弦は頷いた。

 

「あー、その話か。千春ちゃん、愛理沙にも提案していたのか」

「ご存じでしたか?」

「上西と高瀬川の友好の架け橋としてどうかと……軽い感じで言われたかな」


 以前、千春と二人きりになった時にそんな話を提案されたことがあった。

 もちろん、分かったなどとは答えなかった。

 というよりは答えられない。 


「気が早いやつだよ。……そもそも子供は授かり物だ。できるかどうかも分からないし、性別だって……同じだったら結婚は難しいだろう」

「そうですよね。そもそも政略結婚なんて……」

「まあ、実現したら悪い話ではないかもしれないが」


 由弦はポツリと呟くように言った。

 高瀬川家と上西家は歴史的に見れば仲が悪い。

 だからこそ、両家で縁談が結ばれれば、それはそれなりに画期的な出来事になる。


「……え?」


 由弦の言葉に愛理沙は少し驚いた様子で目を見開いた。


「……由弦さんは乗り気なんですか?」

「いや、乗り気もなにも。そもそも産まれてない子供の話をしてもあまり意味はないと思うけど……」

「では……産まれた後の話なら?」

「それは子供の意思次第じゃないかな? 嫌というなら無理には進められないし。でも、乗り気ならそれはそれで……良いんじゃないか?」


 由弦もあまりに相性の悪そうな相手とは、絶対に結婚はしたくない。

 とはいえ……図らずとも、愛理沙という相性の良い、素晴らしい婚約者は得られた。

 愛理沙となら喜んで結婚するつもりでいる。

 というよりは、もしダメだと言われたら全力で反抗するだろう。


「子供の意思次第……ですか。それはまあ、そうですけれど……でも……政略結婚、ですよ? やっぱり、嫌だと思うんじゃないですか?」


 愛理沙の言葉に由弦は内心で首を傾げた。

 なぜなら……


「……俺たちもそうじゃないか?」


 由弦も愛理沙も政略結婚だ。

 だがそれを理由に嫌ということはない。

 由弦も愛理沙が相手なら結婚したいと思っている。

 愛理沙も自分と同じはず……と由弦は思っていた。


「……由弦さんは、政略結婚だから、私と婚約しているんですか? 違いますよね……?」


 念を押すように愛理沙は由弦にそう尋ねた。

 当たり前だと言わんばかりに由弦は大きく首を縦に振った。


「当たり前じゃないか。政略結婚云々を抜きにして、君のことが好きだから……あらためてプロポーズしたんだろう?」


 親の意志ではない。

 あれは、自分自身の意思だ。


 と、由弦のプロポーズにはそのような意味があった。


「そう、ですよね? なら……恋愛結婚、ですよね? 私たち」

「いや、でも切っ掛けはあくまでお見合いで……政略結婚じゃないか? 君とあの場で出会わなかったら……いやまあ、同級生だから出会ってはいたけど、こういう関係には、なれてないだろう?」


 お見合いをして。

 偽装婚約をして。

 捻挫して、助けてもらって。

 互いの保護者を誤魔化すためにデートをしたりして。


 それで今がある。

 少なくとも由弦はそう認識していた。


 そしてまた愛理沙もそれに異論はなかった。

 だが、しかし……


「それはまあ、そうかもしれませんけれど……」

「愛理沙……?」

「すみません。上手く言語化できません」


 愛理沙は少し困った様子で頬を掻いた。

 由弦も愛理沙が何に引っかかっているのか、イマイチ理解することができなかった。



親子丼は卵がメインか鶏肉がメインかみたいな……?

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― 新着の感想 ―
[一言] 卵が先か鶏が先かというなら、卵が先。それは遺伝子変異が起きるのは卵が出来る段階だから。 という事で、二人の卵がどこに当たるか、という事なんだろうけれど。今そこに鶏がいる、というだけでは満足で…
[一言] なんでも真実のみを告げればうまくいくわけではないのが難しいですよね…人生って…
[一言] Kindleですが新刊予約しました! 楽しみです!!
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