表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お見合いしたくなかったので、無理難題な条件をつけたら同級生が来た件について【第八巻 スニーカー文庫より3/1発売!】  作者: 桜木桜
第五章 シン・いちゃいちゃ婚約生活編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

169/252

第29話 出産

おぎゃーっ!(投稿する音)


「……今度は双子ですかぁ」

「愛理沙さん、産むわねぇー」

「いやぁ、子だくさんなのは良いことじゃない? これで高瀬川家は安泰だね」


 千春、天香、亜夜香の三人は“子供が生まれた”愛理沙に対し、口々にそう祝福した。

 一方の愛理沙は恥ずかしそうに顔を赤らめ、モジモジとする。


「や、やめてください! じ、人生ゲームですよ!? 由弦さんの子供とかじゃないですって……」


 映画を見え終えた七人は、聖が持ってきた――彼はいわゆるお楽しみグッズのような、みんなで遊べるゲームの担当だった――人生ゲームで遊んでいた。


 そして丁度、愛理沙は四人目の子供を出産したところだった。


「聞きましたか、亜夜香さん! 由弦さんとの子供じゃないそうですよ!?」

「やだ、ゆづるんの脳味噌が破壊されちゃう……」

「え、浮気……?」


 三人の言葉に愛理沙は怒った様子で眉を上げた。


「し、失礼な! 産まれるとしたら、由弦さんとの子供に決まってるじゃないですか!!」

「でも、ゆづるんは別の女の人と結婚して、子供作ってるけど?」


 亜夜香は由弦の駒を指さした。

 由弦の駒は“女性の駒”と二人の“子供の駒”と一緒だったのだ。


「あ、あれは……って、そもそもこれはゲームじゃないですか! 現実の話と混ぜこぜにしないでください!」

「ちなみに現実なら何人産みたいんですか?」

「え? まあ……数は多い方が賑やかかなぁーとは思ってますが……って、何を言わせるんですか!!」


 愛理沙は顔を真っ赤にし、声を荒げた。

 一方、宗一郎と聖はニヤニヤと笑みを浮かべながら由弦の肩を叩く。


「だってさ、頑張れよ。由弦」

「早くあと二人作って帳尻合わせろ」

「お前らなぁ……」


 由弦は苦笑しながらルーレットを回し、駒を進める。

 止まった先には「離婚! 一回休み。慰謝料と養育費でマイナス五百万」と書かれていた。


「え? どうして愛理沙ちゃん、離婚しちゃったの? ゆづるんのこと、嫌いになっちゃった?」

「離婚したのは私じゃないです。間女です。清々しました」

「愛理沙まで何を言い出すんだ……」


 と、何だかんだでゲームそのものは大いに盛り上がった。





 翌朝。


「ん……」


 由弦は差し込む朝日に思わず目を開けた。

 周囲を見渡すと、空になったペットボトル、お菓子のゴミ、そして毛布に包まって寝ている友人たちの姿があった。


 昨晩は散々に騒ぎ、遊び、そして全員ベッドに入らないうちに眠ってしまったのだ。


「寝直すか……いや……」


 二度寝をするにしても、海から太陽が登るところを見てからでも遅くはない。

 由弦は軽く顔を洗ってから、外に出た。


 砂浜に出ると……


「あ、由弦さん」


 寝間着を着込んだ愛理沙がいた。

 どうやら由弦よりも先に起きていたようだ。


「早起きですね」

「そういう君はもっと早起きだね」

「先ほど、起きたばかりですよ」


 そう言って愛理沙は微笑んだ。

 二人で砂浜に座り、海を眺める。


 今、まさに太陽が登ろうとしているところだった。


「……もう終わっちゃうんですね」


 愛理沙は微笑みながら、惜しむようにそう言った。

 全員が起きてから朝食を食べ、そして片づけをして、昼には帰る予定になっている。


「帰るまでが遠足だよ、愛理沙。あと半日以上もある」

「帰りは全員、寝ちゃうんじゃないですか?」

「確かにそれはそうだ」


 由弦は苦笑した。

 海で遊び、さらに夜更かしまでしたのだから、全員体力は底を尽きているはずだ。


 帰りの車内では全員が眠りこけることになるだろう。

 由弦も起きていられる自信はなかった。


「本当に楽しかったです。……ありがとうございます」

「それは誘ってくれた亜夜香に言ったらどうだ?」


 由弦は苦笑しながらそう言った。

 由弦も愛理沙と同様に誘われた側で、お礼を言う立場の人間だろう。


「もちろんです。でも……亜夜香さんと知り合えたのは、由弦さんのおかげです」


 あなたと知り合えていなかったら。

 あなたとこうした関係でなかったら。

 私はここにはいないだろう。

 海に誘ってくれるような友人はいなかっただろう。


 愛理沙は微笑みながらそう言った。


「だから……由弦さんのおかげです」

「買い被りすぎだよ。今があるのは君が変わったからだろう?」


 由弦は知っている。

 彼女が以前よりも、ずっと明るくなったことを。

 彼女が人の顔色を伺い、本心を隠すような真似をしなくなったことを。

 彼女が養父母に「由弦と結婚したい」と自分の意思をはっきり伝えたことを……勇気を身に着けたことを知っている。


「そのきっかけも由弦さんのおかげです」

「そうだとしても……変わったのは、変わろうとしたのは、君の意思と力だろう?」

「……そうでしょうか?」

「そうだとも。だから俺は君が好きになった」


 由弦はそう言って愛理沙の手を軽く握った。


「……ありがとうございます」


 由弦の言葉に愛理沙は少し恥ずかしそうにはにかみながら頷いた。


「でも……私、思うんです。私には由弦さんが必要だったとしても、由弦さんには私が必要だったのかなって……」

「何を急に……」

「由弦さんは今も昔も、ずっと素敵なままでしょう?」


 そう言われて由弦は首を傾げる。

 つまり愛理沙と出会う前と後で、いい意味で変わっていないと愛理沙は言っているのだ。


 由弦としては「変わった」と言いたいところだ。

 愛理沙に良いところを見せるために身嗜みにはより気を付けるようになったし、部屋はそれなりに片づけるようになった。


 しかし愛理沙が言いたいことはそういうことではない。


「私、由弦さんに何か返せてるかなって……」


 自分は由弦のおかげで変われた、幸せになれた。 

 しかし自分はその分、由弦を同じくらい幸せにしてあげられているだろうか……と愛理沙は言いたいのだ。


 もちろん、由弦は今、幸せだ。

 こんなに可愛らしい婚約者がいる男が幸せではないはずがない。

 とはいえ、愛理沙という婚約者ができる以前の由弦が不幸せだったかと言えばそういうわけではない。


 そう言う意味で……幸不幸の落差については、愛理沙と比較してしまえば小さいと言える。


「じゃあ、これからに期待しようかな」


 由弦は愛理沙の言葉にそう返した。


「……これから?」

「君が……愛理沙がいなかったら、婚約者じゃなかったら、ゾッとする。……俺がそう思えるくらい、俺を幸せにしてくれ」


 由弦はそう言いながら頬を掻いた。

 自分で言ってみて少し照れくさいなと感じたのだ。


「そうですね! これから……長いですもんね」


 愛理沙は嬉しそうに微笑んだ。

 それから距離を詰め……





 長い長い接吻を交わした。


次回で(五章の)最終話です。

と、本日、9/1発売の五巻の口絵の方を公開しました。本章にあった愛理沙の水着姿とかを確認できます。詳しくは活動報告の方をどうぞ。


あと、新作を始めました。

一応、30話くらいで終わるかな……と思ってます。


「キスなんてできないでしょ?」と挑発する生意気な幼馴染をわからせてやったら、予想以上にデレた~無自覚カップルがおしどり夫婦になるまで~


というタイトルです。

要するにツンデレ系幼馴染にキスして分からせてやるという、ちょっぴりエロい感じの幼馴染ラブコメです。

興味のある方は以下URL、および目次下のリンクからどうぞ。

https://ncode.syosetu.com/n0604hu/



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ