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お見合いしたくなかったので、無理難題な条件をつけたら同級生が来た件について【第八巻 スニーカー文庫より3/1発売!】  作者: 桜木桜
第五章 シン・いちゃいちゃ婚約生活編

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第27話 婚約者とBBQ

「……そう言えばそろそろ、お昼ですね」

「そうだな」


 愛理沙の言葉に由弦は時計――防水性――を確認した。

 時刻は十一時半。

 そろそろ亜夜香が指定した昼食の時間になる。


「確かお昼はBBQをやるという話でしたよね?」

「そうだな。確か……担当は亜夜香と千春と宗一郎か」


 今回の海水浴では、それぞれが担当の何かしら――例えば食材など――を持ち込むことになっている。

 例えば亜夜香は肉、千春は野菜、宗一郎は海鮮をそれぞれ持ち込むことになっていた。


「……ちゃんとした食べ物だといいんだが」


 三人の性格――特に亜夜香――を考えると、“ネタ”に走る可能性がある。

 

「さ、さすがに食べられる物ではあると思いますよ……?」


 どうやら愛理沙からも“変な物”を持ってくると思われているようだ。

 

 とはいえ、本当に食べられない物、人を選ぶような物を持ってきて誰も食べられない……ということになれば、確実に白ける。

 三人ともそのくらいのことは理解しているはずなので、最低限食べられる物を持ってきてくれるはずだ……と由弦と愛理沙は信じたかった。


「とにかく、そろそろ集合場所に行こうか。遅刻したらグチグチ言われそうだ」

「そうですね」


 二人は海から上がり――愛理沙はラッシュガード等を着込むと――、集合場所へと向かった。

 しばらく歩いていると……


「……噂をすれば二人ですね」

「せっかくだし、一緒に行こうか」


 亜夜香と千春の二人を見つけた。

 由弦と愛理沙は二人に声を掛けようとするが……


「……様子がおかしくありません?」

「……そうだな」


 思わず愛理沙と由弦の二人は岩陰に隠れた。

 そして影から覗きながら、そっと聞き耳を立てる。



「いいじゃないですか、亜夜香さん」

「い、いや、でも……さすがにこんなところで、それは……」

「大丈夫ですって、誰も見てませんよ」

「でも、わ、私には、宗一郎君が……」

「そんなこと、私には関係ありませんよ。……ね?」

「や、やめ……あっ……」




 由弦と愛理沙はそっと、後退り……

 それから逃げるようにその場から立ち去った。


「わ、私たちには早い世界でしたね……」

「……俺たちはまだまだ子供だったな」



 


 集合場所に到着すると、すでに聖と天香、そして宗一郎の三人が先に待っていた。

 宗一郎は由弦と愛理沙に問いかける。


「亜夜香と千春、見なかったか?」

「い、いや、別に……」

「何も見てません」


 二人がそう答えると、宗一郎は小さく肩を竦めた。


「そうか。……まあ、どうせどこかで乳繰り合ってるんだろ」


 遅刻するなと言うやつほど遅刻するんだよなぁ……

 などと、宗一郎はため息をついた。


 そして五分後。

 砂浜を駆けながら二人の少女がこちらに走ってきた。


「ごめんね!」

「いやー、少し遅れました」


 悪びれもなく、二人はそう言った。

 それからすでに設置されているBBQセットに視線を向けた。


「もうやってくれたんだ」

「男子三人がね」


 亜夜香に対し天香はそう答えた。

 待っているのも暇ということで、すでに由弦と宗一郎、そして聖の三人で設置してしまった。


 後は食材を並べ、炭に着火すれば始められる。


「さて、後は食材だが……二人が来たことだし、見せるか」


 宗一郎はそう言うと持ってきていたクーラーボックスを開いた。

 そしてビニール袋に入った食材を並べていく。


「とりあえず……海老、ホタテ、イカ、ハマグリ、サザエ、アジ。この辺りは定番だな。そしてイチオシは蟹と岩牡蠣だ」


 宗一郎が持ってきたのは想像よりも普通だった。

 由弦を含めた四人は胸を撫で下ろす。


 こういうのでいいんだよ、こういうので。

 そんなラインナップだ。


「意外と普通じゃないか」

「ああ。本当はシュールストレミングを持ってこようと思っていたんだが……自重した」

「偉いな、よしよし」


 聖は宗一郎の頭を撫でる。

 そして宗一郎は「男に撫でられてもうれしくない」とそれを振り払った。


「じゃあ、次は私ですかね」


 千春はそう言うと、自分が持ってきていたクーラーボックスを開く。

 そしてビニール袋に入れられた――事前にカットしておいたようだ――野菜を取り出す。


「旬の物については地元から送ってもらいました。とうもろこし、じゃがいも、たまねぎ、トマト、キャベツ、にんにく。この辺りは定番ですよね。キノコは椎茸とエリンギ。それと九条ネギ、賀茂なす、伏見唐辛子……この三つはおすすめです」


 ついでに〆用の焼きそば麺も用意しました。

 と、千春は言った。


 意外と普通だ。

 特に京野菜を持ってくることで、独自性をアピールしているところはポイントが高い。


「デザートでドリアンを持ってこようかと当日まで悩みましたが、断念しました」

「偉いわね、よしよし」

「もっと褒めてください!」

「ちょっと、抱き着かないで!!」


 天香の胸に顔を押し付ける千春を尻目に、亜夜香は自分の番だと言わんばかりにクーラーボックスを砂浜に置いた。

 

「とっておきのを持ってきたから」


 亜夜香の言葉に、由弦と愛理沙は顔を見合わせた。

 嫌な予感がしたからだ。


 一方で亜夜香は気にせず食材を並べていく。


「牛はカルビ、牛タン、ホルモン。豚はピートロ。鶏は焼き鳥の塩とタレ。それとラム肉」


 意外と普通じゃないか。

 と、由弦は安心するのと同時に、少しだけガッカリした気持ちになった。


 ……しかし亜夜香はさらに食材を取り出していく。


「で、これが鹿」

「……鹿?」

「それと、兎と雉ね」


 流れが変わったのを由弦は感じた。


「で、これがワニ!」

「ワニ!」


 愛理沙が驚きの声を上げた。

 ……少しだけ目が輝いている。


「そしてこれは凄いよ。クマの手!」

「すげぇな、おい」


 聖は呆れ半分、驚愕半分という声を上げる。


「そして最後はカエルね」

「か、カエルって……」


 天香は嫌そうな顔をした。

 彼女は食べたくないようだ。


 一方で愛理沙は興味津々な様子で、カエルを眺めている。

 一先ず愛理沙は食べる様子なので、残る心配はない。


(まあ、俺も食えるし……亜夜香も持ってきたからには食えるだろう)


 由弦は過去に中国に旅行に行った時、カエルを食べたことがある。

 海外旅行に行けば、この手の物は一度くらいは食べる機会がある。

 日本の飲食店でも、提供しているところは提供している。


 食わず嫌いな人でなければ、生涯に一度は口にする物だ。


「さすが、亜夜香だ……!」

「痺れる、憧れる!」

「ふふん、もっと褒めて!」


 宗一郎と千春の二人から頭を撫でられ、亜夜香はご機嫌そうに笑みを浮かべた。

 やはりこの三人は感性が似通っているようだ。


「しかし随分と食材が多いが……食べ切れるのか?」


 由弦はそんな懸念を口にした。 

 育ち盛りの男女が七人いることを含めても、食材の量はかなり多い様に感じた。


「ああ、大丈夫。余った分は夕飯のカレーと味噌汁に入れちゃうから」

「それは随分と豪華な夕食になりそうだ」


 クマの手は合いそうだが、カエルは合うのだろうか?

 由弦は内心で首を傾げた。


ちゃんと一週間でしょ?(どや顔)


ところで7月8日にコミックスの方が発売されます。

よろしくお願いします!

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